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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第三章 囚われの姫君
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百二十四話:二日目・その5

 


「で、具体的にって言ったら…まずルートとか救出作戦とか?」



(ルート?空路じゃ…?)


 あぁ、行きは空路で確定してるけど…

 確かにこないだ移動に余裕を持って五日と聞いたけど、どこ通って行くとかそういう事があるだろ?


(ふむふむ…)


 ってか宿をどうするかって問題もあるな。

 迂闊に道中の村や町に近づくのは問題があるかもしれない。

 けどさ、流石に五日間もぶっ続けで野宿ってのもそれはそれで厳しい物がある。

 ってか帰りは間違い無く、何処にも寄れないと思うしなぁ…

 そうなったら丸々10日も、だ。

 それに帰りも空路で大丈夫か、って問題もあるとかさ。


(あ、そういう事)


 他には、何だろうな?



「それもそうですが、まず最初に人員ですかね」


「えっと、人員ですか?」


「えぇ、私は行けませんので」


「あぁ…」



 そう言われて納得せざるおえない。

 ここに来てもパラスケヴィが足を引っ張るのか。

 拘束しておく手段だったり、万が一逃げ出されたりされた時に対処できる奴が必要だもんな。



「代わりにサヴァトが尽くしてくれますよ?そりゃあもう色々…」


 ガンっ!



 …っとテーブルの下でいい音が鳴ったな。

 サヴァトが力を込めて足を踏んだみたいだ。


(感知…)


 つか顔色変えずによく平然と…

 いや違う、徐々に血の気が引いてるな。

 ついでに冷や汗もかいてないか?


(無駄遣い)


 …仕方ないだろ、気になったんだ。

 まぁ、とばっちりで俺には飛んでこなくて良かった。

 と、そう思いましたとさ。



「力を貸すだけですよ、キリアキさん。」


「そうですね、サヴァト…」


「それで、俺とサヴァトと二人だけって事か?」


「他に行く人が居るなら構いませんが…」



 キリアキはそう言いながらジーニャさんをチラリと見やる。

 しかし行くかと言われたら…微妙な表情だ。

 因みに、爺さんの方は見ない…と言うか既に居ない。

 この話し合いの前に、いつの間にか雲散霧消していたしな。

 ちょっと感知を使ってみたが、近くで聞いてるって訳でもないし…逃げたか?



「戦闘を行う事を考えるのであれば、お勧めは出来ませんね…」


「そうですよね…」



 オブラートに包んだ言い方だけど、戦力不足って事だ。

 そもそも自分の身を守る戦いじゃなくて、誰かを助けに行く戦いだからな。

 自衛で手一杯って人を連れて行っても、ってのは…ある。

 親方レベルだったらは良いのかもしれないけど、まさか連れて行くわけにはいかないし。

 それに無理して付いて来て貰って、危険に晒したくもないしなぁ…



「むしろジーニャさんには、こっちで出来る事を頼みたいんだけど…」



 具体的にはラルに関してだな。

 連れてきても居場所が無い、じゃあ駄目だし。



「うん~…分かったよ」


「と、なると…?」



(結局…?)


 …まぁ、そういう事だな。



「結局二人だけだね」


「まぁ、間違いだけは無いように…」


 ズガン!



 一体何の間違いだろうな?

 …っとテーブルの下で凄い音が鳴ったな。

 サヴァトが力を込めて足を踏み抜いたみたいだ。

 俺も追撃で脛に一発当てたけどさ…

 しかし、懲りないと言うか何と言うか…



「つ…で、救出計画の続き…ですが…」



 少し崩れた表情のキリアキだが、何事も無かったかの様に続ける。


(突っ込んだら、負け?)


 かも知れないな…

 なんて考えている最中に、キリアキは持ってきていたのか、地図を広げる。

 …ノーブル王国の地図か?

 幾つか見た事ある地名もあるし、間違いない。



「一日目は山の麓で野宿ですね」


「まぁ、妥当な所ね」


「で、二日目か…三日目には、ここへ」


「…トーワの町か」



 なんか懐かしく感じるな。

 まだそんなに時間が経った訳じゃないはずなんだけど…

 それに、こんなに近かったんだな…王都から。

 道が少し周り込む様になっているから一日掛かるだけで、空路で一直線なら3~4時間くらい…か?



「テッシン、知ってる所?」


「ここで冒険者登録をしたんだよ」


「へぇ~…」



 聞いてきた割には特に何かリアクションも無いのな…

 まぁこれ以上聞かれても、二日目にDランクになった事しか語れる程の事は無いか。



「それで、ここでなら宿を取っても問題ない?」


「えぇ、誰かに出くわす事は無いでしょう」


「つまり待ち人は来ず、出会いはないでしょうって事ね?」


「そんな占いみたいな…」


「まぁそんな感じですね」


「いいんですか、それで…」


「はぁ…」



 なんか、今日はノリが軽いと言うか…何と言うか…

 適当って感じでは無いけど…何か…


(ユルい?)


 まぁ、そんな感じだな。

 ジーニャさんが呆れたって態度なのも分かる。



「それから後は、王都ノブレアに向かって下さい。」


「となると、ルート的にはこんな感じ…か?」



 地図の上、やや西側を一直線に南下してから東へと…緩めにUの字を半分描いた様なルートを指でなぞる。

 国の国境、トーワの町、そしてノーブル王国の王都…

 丁度それらを通るルートだ。



「えぇ、そして帰りを合わせるとですね…」



 追加でキリアキが王都からやや東南東に位置する町を通り、北へ抜けていく様になぞる。


(ユーの字)


 やや歪だけど、出来たな。

 だからと言って何かある訳じゃないけどさ。



「恐らくこうするのが一番でしょう」


「それは、予言?」


「えぇ、ここに貴方の助けになる人が居るでしょう」


「ふむふむ…」



 道のりを考えて…陸路で二日、空路で一日か?

 トーワの町に比べて少し遠いな。

 それに助けになる人…か。


(…誰?)


 まぁそうなるよな。

 これからやる事と比べて、そこまで頼りになる人物なんて思いつかない。



「まぁ結果的に、と言う言葉が付くとは思いますけど」


「あぁ、そういう…」



 って全く知らない奴って可能性もあるのか?

 まぁ、ひと悶着はありそうって事か。



「ここさえ行ければ後はどこを通って来ても多分大丈夫でしょう」


「え…?」


「そんなに重要な事件が起こるのね?」


「だから、しっかり守ってあげて下さいね」



 真剣な眼差しでそう言って、サヴァトの方を見る。

 …いや、俺は?違うの?

 サヴァトやラルをしっかり守れとか…そう言う意味だと思ったんだけど…



「なんで私を見ているんですか…?」


「まだまだ守られるのは早いって事ですよ」


「ちょっと怒っても良いですかね?」


「守るのは自分よりか弱い乙女(ラル王女)を、と言う意味で間違えてなければどうぞ」


「・・・」



 …目が思いっきり泳いだな。

 まぁ(異性)が一緒に居る機会よりもサヴァト(同性)が一緒に居る機会の方が多いか。

 そこら辺を忘れてないか、しっかり釘を刺したって事か?

 ってかそういう所、しっかり分かってるんだな。



「ほら、怒ってもいいんですよ?どうしたんですか?」


「分かりました、次に行きましょう」


「いえいえ、答えはしっかりいただかないと…ねぇ?」



 いや、単に意地悪なだけか。

 と言うかなんか今日のキリアキに何だか違和感が…

 ちょっと聞いてみるか?



「キリアキ、そんな感じだったっけ?」


「緊張の糸が切れたのですよ」


「この人、元はこんな感じよ」



 飄々と答えるキリアキに、サヴァトの訂正が入る。

 こう、おちょくったりするのは日常なのか…



「シリアスな物事にも一段落着きましたからねぇ」


「だから素が出てきたと?」


「まぁ、そういう事です」


「これでいて国のお偉いさん方には一切バレない様にしているのがタチが悪いのよね」


「仕事とプライベートは分ける様に心がけてるだけですよ?」


「結構混ざってますけどね」



 とか言って軽口を叩き合う程度の仲なんだから良いのだろう。

 元々話すのが苦手なサヴァトがこうして気軽に話せているのだから。

 しかし、良かった…


(…何が?)


 ああして蹴られたりされても懲りないもんだから、てっきりそういう人なのかと…


(M?)


 せめて被虐嗜好と言ってあげよう。



「どうしました?テッシン?」


「なんか少しぼうっとしてたけど?」


「ん?あぁ…ごめん」



 どうにもこっちでの会話をしていると周囲が疎かになるな。

 まぁ会話である以上仕方ない事なんだろうけど。



「キリアキが被虐嗜好の人じゃなくて良かったなぁ…と」


「次に行きましょう」


「えぇ、そうしましょう」


「食料に関しては…」


「えっ、あ!はい!」



 何か…地雷を踏み抜いたんだろうか?

 半ば無かった事にされつつ、さっさと次の話…打ち合わせへと戻る。

 ってか顔が…真剣そのものだ。

 それに釣られてか、ジーニャさんもテキパキと話しを進める。

 と言うかさっきまでの話し合いの何倍もの速度で打ち合わせが進んでいく。



「それで、肝心の王都(ノブレア)でのラル王女救出作戦ですが…」


「あぁ、それに関してちょっといいかな?」



 さて、置いていかれない様に俺も参加しますか。


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