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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第三章 囚われの姫君
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百二十三話:二日目・その4

 


「そういえばテッシン、訓練だけでいいんですか?」



 昼食を食べている最中、突然思い出したかのようにジーニャさんがそう切り出した。



「ん?どういう事?」


「ほら、ここに来る前は色々と作ってたじゃない?」


「あぁ、成る程ね」



 色々っても…ここに来てからだとヒールジェルくらいしか心当たりは無いんだけど…

 まぁでも確かにここに来る前だと炸裂する涼甘草の種子入り袋とか、ジェルの原液とかも作ってたしな。


摂穢甦(ドエス)草…)


 …知らない草だな、それは。

 取り敢えず、こうして色々とやりたい事を探せばあるのに剣の訓練ばっかしてるのは…って事か。



「確かに傷の治りを早くするアレ、作ってないのう」


「単純に、材料がもう無くてさ」


「…そういう事じゃったんか」



 先程からちゃっかり一緒に飯を食ってる爺さんが、納得した様な、困った様な、安堵した様な…表情をする。


(薬草類に、ジェルとポーションに、摂穢甦(ドエス)草)


 それはじいさんの表情の理由か?それは?

 でも最後だけちょっと何言ってるかわかんないな。



「ここら辺では無いんですか?」


「残念だけど…」



 人の居る所は林なんかが手入れされているけど、ちょっと離れたら荒野って感じの土地だからな。

 どこも森って言うほど木が密集してる所も無いし、植物が群生している所も多くない。



「近郊で食用野草は群生してるけど、薬効のある野草は無いかなぁ」


(摂穢甦草…)


「そうですか…」


「近郊、のぅ…」



 爺さんがそう呟いて少し考える仕草をする。

 まぁ、確かに俺も言葉も含みのある言い方だし。

 ここの近くでしか探索なんてしてないからな。

 ちょっと遠くに、良さげな場所の心当たりでもあるなら教えて欲しいんだけど…



「西端の山は麓にまで森が広がっておるはずじゃが…」


「西?こっから?」



 ここもメタリオル的に考えれば大分西端に近い土地のはずだ。

 そこから更に西かぁ…行ってないな。

 完全に盲点だったな。



「そうじゃな」


「そういえば国の四方全て、山に囲まれているんだっけ?」


「そうそう、おまけにどこも…」


「山頂付近は凶暴な魔物の住処じゃのう」


「へぇ~…」



 だからあの山、ノーブル王国とこメタリオルを繋ぐ道はトンネルだったのか?

 確かに山の上に凶暴な魔物がいれば態々通る必要も無いか。

 山をくり抜くのと魔物を追い払ったりするコストをみて、前者に軍杯が上がったんだろう。

 しかし、山の上に魔物…?



「そういえばサヴァト?」


「………何?」



 爺さんには慣れてないのか警戒心剥き出しで自分からは一言も喋ってないが、サヴァトはしっかりと居る。

 加えて『出来れば今ここで話して欲しくない』と言わんばかりの顔つきだ…


(でも、話す)


 そうだな、コミュ障克服…になるかは分からないけど。

 で、本題。



「ノーブル王国への道って空路だよね?」


「うん、空、運ぶ、私」


「お、おう…」



 話してくれないよりままだマシだけど…単語だけ言われてもなぁ…

 さっさと爺さんとも打ち解けて欲しいもんだ。



「山…は一気に抜ける」


「そうか」



 あのボーンニクス、ボンちゃんなら割と余裕か?

 そもそも空を飛ぶ魔物がいなければ襲われる事さえ無いわけだし。

 速度的にも申し分無いだろう。



「さて話を戻すがの…西の山の麓なら歩いて、往復で丁度二日掛りじゃったかのう」


「爺さん、行ったことあるの?」


「勿論!儂が若い頃に何度かの…」


「やんちゃしてた親方に引きづられて行ったんですよね?」


「う、うむ…」



 自分で行った訳ではないのはアレだけど、それでもよく行って帰って来れてるな。

 つか、親方は何をしに行ってるんだ?

 腕試し…?いや、素材か?いや、それよりも…



「二日かかる、か…」



 流石に今からじゃ、ってか昨日言われても遅いか。


(多分、ギリギリ)


 流石に何も無いとは思わないけど…今からやる事でもないよな。

 それに移動中の5日間で採取も可能だし。

 何よりノーブル王国の方が緑があるし、そっちの方が野草に関しては知ってる。



「今からじゃと時間もなさそうじゃし勧めはせんが、今度行ってみてはどうじゃ?」


「そうだね、そうしようかな」


「何にしても、そのラルちゃんを助けないとね!」


「あぁ!」



 こうして色々と予定とか計画を立てていると、やはり頑張ろうって気持ちが心に湧いてくる。

 いつかこうしたいって未来の為に、今を頑張れる…って言うの?

 まぁとにかく、なんか気力が湧いてきたって事だ。


(じゃあそれを少し分けて貰う…)


 良いけど…程々にしてくれよ、ノーム。

 実はちょくちょくステータスを確認してるんだけど、朝から霊力は殆ど回復していないんだよな。


(うん、私)


 あっさり自白すれば良い訳じゃないからな?



「皆さん、どうもこんにちは」


「お、キリアキさん」



 なんて感じで飯を平らげていると、キリアキがギルドにやって来たな。

 ってあれ?一人…か?



「アイツは?大丈夫なの?」


「然るべき処置をしてきたので大丈夫ですよ」


「然るべき処置?」


「…まぁ、そこはご想像にお任せしますよ」



 そこに関してはあまり答える気はないみたいだな。

 ちょっと隠されるのは気になるけど、あまり言いふらしたくない手段なのだろう。

 そっと、触れないでおこうか。



「取り敢えず今日は、今後のあれこれに関して改めて話を、いえ…詳しく話しておきたいと思いましてね」


「え、キリアキ…訓練…」


「それは後からでも、それに今後も時間を取れば可能でしょうに」


「う…うん」


「あまり訓練訓練と、テッシンを縛るのもいけませんよ?」


「はい…」


「で、詳しくって…日程とか?」



 とかまぁサヴァトが窘められた所で切り出した。

 確かに訓練は有難いけど、ちょっと今日は強引に誘われたしな。

 キリアキが言ってくれるのは有難かったりする。



「えぇ、それも含めてですね」



 と言う訳で、食後のお茶を飲みながら俺たちは話し始めた。

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