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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第三章 囚われの姫君
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百十九話:一日目・その8

生存報告も兼ねて投稿。


 それから時間は進んで、食後。

 俺たちは三人とも、親方の家に来ていた。

 ま、夕食の光景で何か特筆すべき所は無かったかな?

 精々サヴァトがアブラ鳥のガラのスープを好きだって事が分かった位。



「こんばんは~」


「おう、来たな」


「お待ちしていましたよ」



 取り敢えず前に案内された応接間っぽい所に二人共居た。

 まだ話し合ってたんだろうか?

 それなら悪いことしたような…?



「お話は終わりましたか?」


「あぁ、ついさっきな」



 とか思ったけど、そうでもないようだ。




「そちらは少し急かしてしまいましたか?」


「いえ、こちらも特に…ね!テッシン!」


「あぁ、そうだね」


「それで、お話というのは?」


「あぁ、そうだったな」



 親方はそう言って俺の方をチラリと見る。



「喜べ!出発前に色々と言ってた物が出来てるぞ!」



 その言葉には少し嬉しそうというか、やり遂げた感じの雰囲気を感じた。



「…え!本当!」



(…覚えて、ない?)

 うん、ぶっちゃけ忘れてたな。

 そして今、前に言ってた事をすっかり自分で忘れてた事に驚いた。



「嘘は言わんさ!ガハハ!」



 ま、でも親方にバレてないみたいだしいいか。

 ってか何のアイデア出してったっけ?

 道具に雑貨は覚えてるけど…武器は何かあったっけ?

 でも出発までまだ日数もあるし、今から頼んでも十分に間に合うだろうし。

 つかちょっとしたやり方一つで短剣一本を翌日には拵えた親方だ。

 ちょっとどころじゃなく気になる。



「で、今から見に行くの?」


「あぁ、そのつもりだが…」



 で、見回すようにサヴァト、キリアキ並びにさっきから地面に転がされているパラスケヴィを見る。



「あんたらは来るか?」


「私、行きたい…です」


「じゃあ今回は遠慮させて貰いますかね。」



 まぁパラスケヴィの管理が出来るのがサヴァトかキリアキしか居ないもんな。

 コイツを連れて行く理由は無いだろうし、どちらかが見張りの為にって事か。



「分かった、じゃあ行くぞ」


「は~い」



 と言う訳でキリアキ達とはここで別れて、親方に先導されるように部屋からそのまま工房へと向かった。






 で、その道中…



「そういえば親方」


「何だ、テッシン?」


「結局どういう事をキリアキと話し合ったの?」


「私も気になります」


「あぁ、その事だが…」



 と、そこまで言って親方は言い淀むってか…何か悪巧みを思いついた様な強面を浮かべて…



「内緒だ」


「え~…!」


「もしかして、私にもですか…?」


「あぁ、今はまだ…な」



(気になる…)

 ちょっと話してくれそうな態度を出しておきながらこれだもんな。




「ま、お前さんには今度帰ってきたら教えてやるよ」


「帰ってくるまでお預けかぁ…」



 何だよ、滅茶苦茶気になるじゃないか!



「そういう訳だ、だから…」


「だからちゃんと帰って来い、とか?」


「…分かってるなら良いんだ」



 ぶっきらぼうだけどしっかり心配してくれるもんな、親方。

 なんやかんや言って気を遣ってくれる。

 ま、今は見るからに機嫌が悪くなったって顔だけど。



「もしかして…怒った?」


「怒りましたね?」


「うるせぇ、さっさと向かうぞ!」


「「は~い」」



 照れ隠しなのかちょっとだけ不機嫌になったからなのか…

 まぁ…とにかく、それから急ぎ足で先に行ってしまいそうになる親方に付いていく形になり、思ったより早く着いた。



「お、おっきい…ですね」



 で、外観を見るなりサヴァトが俺と同じような反応をする。



「でしょう?中もかなり広いよ!」


「自慢だが、これでも弟子なんかも多くとってるからな」



 そこは謙遜とかしないのか。



「弟子か…」


「大丈夫だって、そこまで気にしなくていいでしょ」


「だって…」



 なんて雑談しながら、工房の中へ。



「お疲れ様です!親方!」


「お前ら!例のブツは!」


「向こうにあります!」


「面倒だ!こっちに持って来い!」


「了解っす!」



 下っ端に指示をだして持ってこさせる例のブツ…

 これだけ聞くと何かヤバイ物みたいに聞こえるな…


(うんうん)


 …実際持ってくる物はこの世界では十分ヤバイ物なんだけどさ。

 主に普及してないって意味で。



「こちらになります!」


「お…おぉ~!」



 続々と持ってくるのはちょっと凝ったデザインのアクセサリーやら鍬やら鎌やら…思ったとおり雑貨や農具みたいな日用品だな。

 うっすらとこんな事言ったな~って記憶が蘇ってきてる。

 なんて思っている内に広々と使える作業台も置き場が無くなる程に運ばれてくる。



「ってか前も思ってたけど、相変わらず凄まじい進歩だよね…」


「え、そう…なの?」


「ほんの数日とか前だからね?あの短剣とか作ってるの」


「なに、前まで燻ってた分だ!ガッハッハ!」



 真面目に答えてるのかどうか…そこは良く分からないが、仕事が早いからいいか。


(いいの…?)



「お、斧!これ手斧ですよね!?」



 その運ばれてくる品物の中で、ジーニャさんが目敏く手斧を見つけた。

 肉厚で少し鈍い光を放つそれを手に取り、輝く様な瞳で確かめている。

 まさか…?


(…それは無い、と思うけど…)


 念を入れて一応、言っておこう。



「流石にそれで爺さん殴ったら死ぬと思うよ?」


「え?…え!?」



 ジーニャさんが何かいうよりも先に、サヴァトが困惑した様子で俺とジーニャさんを交互に見る。

 一見してそんな風に見えないもんな。

 でも時には喜々として…では無いけど笑顔で斧を持ったまま爺さんを追い掛け回してるんだぜ?



「タ、叩キマセンヨ?」


「あ~…ジーニャ?」


「やりませんよ!?ホント!ホントですって!」


「ならいいんだが…」


「親方、これで最後です!」


「あぁ、ご苦労」



 とか何とかやってる内に全部持ってきたようだ。

 作業台の上にはほぼ隙間なく、金属製品が並ぶ。



「お?これは?」



 で、その中でも最後の一つだけ布に包まれていた。

 丁寧に包んでいるのか、中は見えない。

 一体何だろうな?

 ちょっとだけ警戒しながら、恐る恐る手に取る。


(…?これって…)



「お、丁度いい。開けて見な」


「…うん。」



 言われた通りに包みを解いていく。

 布越しの感触からして多分ノームの想像通りだろうな。

 解けた包みから顔を出したのは、そこの作業台に置かれている物達と同じ様な鈍い灰色。

 全体的にすらっと細長い印象を与える剣が入っていた。



「おぉ…」


「どうだ?驚いただろ?」



 見た感じ、前に持っていた木剣に特徴はかなり似ている。

 鍔の部分は少し出っ張ってる程度しか無いし、柄だって片手用だし剣の幅なんて測った様に変わらない。

 まぁでも、一つだけ大きく違う所と言えば…刀身はかなり短くなったって所だな。

 具体的に肘から手の甲位までの長さ、木剣と比べて半分より少し短いな。

 分類としてはショートソードか?



「ちょっと振ってみても?」


「あぁ、いいぜ」



 と言う訳で少し素振りをしてみる。

 …使い勝手としては柄はしっかりと握り込めるし、短くなったから扱いやすく軽くなってるな。

 そして、真理理解の結果は…っと。



「ん?プニール鋼?」



 前のプニル鋼だかと何が違うんだ?



「あぁ、ここいらじゃああまり採れない良い鉱石を組み合わせて作ったんだ」


「へぇ~…」



 俺が材料の違いに気づいた事に気付き、親方が補足していく。

 なんでもここいらで採れる鉱石からだと、これ以上の強度を出すのは難しいと考えて云々…

 そんな説明を聞きながら霊力鑑定も使っていくが…



「なんだか今までと違うってのは分かるよ」



 霊力は妙にスムーズに伝わってはいくんだけど…馴染みが悪い?って言うのだろうか…

 既に別の何か…とにかく強い一念が込められてる感じ。


(ふむ…)


 何か分かるのか?ノーム?


(いや、全く)


 …そうか。

 ちょっと期待してみたけど、分からないか。




「本当、疲れましたよ!火力が出ないからって急に炉の改良をしたり!」


「それから二日ぐらい掛けて良さげな配合比率を探したり!」


「おめぇらもノリノリだったろうが!」




 言い合ってるのをまとめると、弟子達も負けじとやる気を出した結果がこれ(作業台の上)だと言う訳らしい。

 鑑定の結果だけど、色々と混じってる合金のプニル鋼に炭素を混ぜた後、更に鉄を比率多めに混ぜた合金のようだ。

 とにかく色々と試して、その中でも選りすぐった物である事は間違い無いな。



「まぁとにかく!お前さんの為に拵えた一品だ、受け取ってくれ」


「…ありがとう親方、大事に使うよ」



 別に雑に扱ってる訳ってじゃないけど、なるべく大事に使っていきたいな。

 毎度ぶっ壊してばかりってのも申し訳ないし。



「いや…こっちもまだまだ半端なんだ、遠慮なく使って盛大にぶっ壊してくれ」


「ぶっ壊してくれって、そんな…」



 気軽に壊すなとか言われると思ってたけど…全く違ったな。

 逆にぶっ壊してくれとは…

 でも作った本人が盛大にって付けてまで言うのはどうなんだろうか?



「実際、壊れるだけの激しい戦いがあったって事だろ?」


「そりゃあそうだけどさ」


「お前さんが生き残る為に役に立ったって言うならそれで満足だからな!」


「…分かったよ」



 これもきっと気遣いなんだろうな。

 何があっても生きて帰って来いとかそう言う感じの…

 勿論、言われなくてもそのつもりだ。


随分と時間が開いてしまい大変申し訳ありません。

久々に書いたので色々とおかしな所があるかも…

次は…7月になると思いますがなるべく早く投稿します。

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