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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第三章 囚われの姫君
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百十三話:一日目・その2

 

 さて、心機一転!今日からの目標に頑張るための明るい飯だ!

 …とか何とか思って、それを口に出せる奴はここには居ない。

 どうにも今日の食事はピリピリとした雰囲気が無くなりそうに無いからだ。


 …と言うのも現在食卓を囲んでいるのは六人…俺、ダダンさん、ジーニャさん、キリアキさんにサヴァト。

 そして、パラスケヴィだ。

 そういえばサヴァトを見ないなぁ~と思っていたら、どうやらコイツと一緒にいたようだ。

 パラスケヴィの頬にある平手の跡がそれを物語っている。


 ジーニャさんはまだバリバリ警戒心をむき出しにしているし、それを分かっているのか向こうもパラスケヴィを気にしつつ色々と話を切り出せてないっていうか…

 それに一番の原因(パラスケヴィ)は気に入らなさそうに食器をカチャカチャと鳴らしながら食事中だ。

 見ている限りで特に反省の様子もない。

 それが尚更、警戒の要因になっているんだろう。

 まぁ俺もそれを見ながら空腹感に促されるままに、お構いなしに食ってるけど。


(能天気…)


 いや、だって腹ペコだし。

 昨日も殆ど何も食ってないからな。

 それに最近は携帯食が中心だったからか、きちんとした料理を食べるとどうにも手が止まらない。

 普段より一際美味しく感じられるからだろう。

 それに殴られ蹴られで臓器とか弱ってるかと思ったがそれも全く心配は無さそうだ。

 大盛りの皿も美味しく頂けている。


 それにアイツの魔法の弱点も分かってるんだ。

 今の俺達二人の力なら一方的にボコられる事も無いだろ。

 それにキリアキ達もいるし。


(…あと、忘れてない?)


 …?あぁ、そう言う事か。

 そういえば二人に言うのを忘れてたな。



「突然だけどさジーニャさん、サヴァト」


「…なんですか?」


「何?」


「昨日はその、ごめん」



 昨日は心配かけたもんな…多分。

 なんか二人共すげー普段通りだから確信が持てないけどさ。



「…本当に突然ですね」


「でもま、しょうがないんじゃない?」



 ここで言われるのが意外だったのか?

 返答は普段通りって感じだが、二人共なんか様子が違う様な…?



「昨日はあんな様子だった人の言葉とは思えないですね」



 え~っと…俺、そんな言われる位取り乱していたっけ?

 確かに宥められていたけど…

 とか思っていたら、キリアキさんはこっちを見てすらいなかった。

 専らサヴァトの方を見ながら、どこか面白そうに反応を伺っている。



「余計な事言わないでくださいよ」


「おや?何故サヴァトが?

 私はテッシンの事を言っていたのですが…」


「…何でも無いですぅ~」



 してやった感に溢れるキリアキと、してやられた感溢れるサヴァト。

 ってか昨日何かあったん…だろうな。

 まぁ表には出さないけど、心配だけはしてたって事ね。


(ツンデレ?)


 的な奴だろう、うん。



「…何よ?」


「いや、どんな様子だったのかなぁ~…と」


「…別に!」



 でも本人が答えてくれないからこれ以上はやめておこう。

 藪をつついて蛇を出す真似はすまい。

 何となく近くでニッコニコしてるジーニャさんを見て、そう思った。



「…ケッ!」



 そんな感じで大分柔らかくなってきた雰囲気だったが、不満げな一声で台無しだ。

 そりゃあ目の前で殺そうとしていた奴と仲間が楽しそうに雑談してれば気に入らないか。

 …いやそんな感じでも無さそうだな。

 唯々つまらないって風の態度だ。






 とまぁ、こんな感じで重々しい朝食は終わった。

 食器は下げられ、さっきの食卓はそのまま会議卓に早変わりだ。



「さて、一息付いた所で今後の予定でも少し話し合いましょうか」


「昨日は途中で終わっちゃいましたからね」



 主にノームと自分のせいでもあるけど、そこは気にしない。


(ワタシ、ワルクナイヨ)


 知るか、道連れだ。


(酷い…)



「取り敢えず…報酬の件、いいかな?」


「勿論、いいですよ」



 この件については向こうも何を要求するつもりかなんて分かりきってるだろうけど…


(…いや、だったら)


 ここは予想の斜め上を行ってみるってか?

 別にそのままでいいだろ。



「じゃあ報酬だけど…


「えぇ」


「俺達が勇者とその召喚者として世界を巡れる様に、力を貸して欲しい」


「「「…へ?」」」


「成る程、そうきましたか」



 思っていたのと違うっていう表情の三人と、これは面白いと笑みを深めたキリアキ。



「てっきり私達は…」


「その中には、ノーブル王国第二王女、ラル・ノーブルの救出もあるんだけどさ」



 例え協力して貰ってラルを助けたとして、だ。

 わざわざ処刑しようって奴を連れ去ればどうなるか位は簡単に予想がつく。


(手配される?)


 まぁ、そこら辺だろう。

 もし仮にそうなったとしたら、何とかするのは俺達だけだと難しいだろうし。

 その為の後ろ盾?権力?それが欲しいんだ。



「それでどうかな?」


「…彼女の処刑が行われるのは確実でもですか?」



 恐らく敢えてキリアキは聞いてるんだろうな。

 目が試してると言うか、確認してると言うか…そんな感じだし。



「それは昨日聞いたけど…処刑が行われるだけでしょ?

 それでラルが()()()()とは言ってない。」


「…ふむ」


「助けられるなら助けたい、その為に力を貸してくれ」



 どうやらそれで良いらしい。

 満足した回答だったって感じの表情のキリアキと…嬉しそうな表情のサヴァト。

 なんでサヴァトが嬉しそうなんだ…?

 ま、それはさておこう。



「もちろん!協力するわ!」


「言った手前、こちらからの協力は惜しむつもりはありませんよ」



 取り敢えずはこれで、この二人の協力は取り付けられたか。

 後はこれからの事について話し合うだけか。



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