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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第二章 勇者と金属と大地と
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百一話:迷い悩んで


 で…火の番は眠気がなかったから殆どを担当しつつ、明け方頃に寝て…起きた。

 さて、そのあくる日な訳だが…

 食事諸々は既に済ませて、再び移動中だ。


(昨夜はお楽しみでしたね…?)


 取り敢えず覚えたての言葉を言うのはどうかと思うぜ?

 しかも疑問形で。


(むぅ…)


 つか夜中にやってたことなんて火の番をしながら、折れた元木剣の柄を使って適当に松明を作った程度だろ?

 火をつけたら刀身が燃えるようにした奴。

 ネックは燃焼時間だ。


(それ、もう松明じゃない)


 だよなぁ…

 で、あとは少しだけノームから力を貰って操作に挑戦したくらいだろ。

 それも結局上手くいかなかったし。

 ってか結局何なんだろうな、あれ。

 こう…明らかなパワーアップって訳じゃないし。

 なんかヒントでもないものか…


(あの人形に使ってた)


 となると、命を吹き込むって事か?

 それだと回復力とかありそうだけどな。


(いや、形作るのにだけ)


 なるほど…

 それだとますます分からんな。



「う~ん…」


「どうしました?また百面相してますけど…」


「え?」



 とか何とか、考え事をしていたら再び心配された。

 俺、そんな顔に出るのか?


(そのうち、虚空に向かって話し出す)


 それは只の頭のおかしい奴だろ。

 でも、本当にやりそうでちょっと心配だな。


(練習、ポーカーフェイスの)


 そうだな、気が向いたらやるか。



「ほら、また…」


「え、あぁ大丈夫だって!」



 いかんいかん、ちょっと気を逸らすとこれだ。

 これ以上心配されない内に何か話題でも出しておくか。



「そういえば今日の昼頃には最寄りの村に着くよね?」


「そうだね、取り敢えず注意喚起は忘れないようにしないと…」


「そうだな…」



 で、何処か浮かない様子のダダンさん。



「どうしたの?」


「まさかの話だが…既に襲われてなければいいのだが…」


「「まさかぁ…」」



 ぼそっとダダンさんが呟いたのに、俺とジーニャさんの否定が重なる。

 それは本当にまさかの話だ。

 まさか俺達が馬まで使って一日程度、時間を掛けて通った道を先回りしてるなんて…そりゃあなぁ…

 なにせ洞窟の奥深くに落ちていったんだし、加えて昨日の夜から今まで月も出ない様な曇り空だ。

 魔法で明かりを出すったって限度もあるだろうし…夜通し歩いても俺達と移動距離なんてさして変わらないだろ。


(旗が…旗が立ってます)


 …フラグと言え、フラグと。

 分かりにくいじゃないか。


(それ程でも…)


 あるからな?



「テッシン、また百面相してますね」


「…どうにも嫌な奴を思い出すとなるのかな」



 そろそろ誤魔化しが効かなくなってきたと思う。

 つーかネタが無い。

 …ので、適当にそれっぽいことを言っておこうか。



「で、そこまで奴の事を考えていて、何かあいつに勝ついい策は出てきたのか?」



 とそこにダダンさんからの質問が入る。

 かなり危険なやり方なら…あるにはあるんだけどな。

 それでも…



「どう頑張っても一人じゃちょっとねぇ…」



 特に何も考えずそう返してしまった。

 現状アイツと真正面からやり合って勝てる気がしない。

 金剛体の防御力には手も足も出ないのが一番の理由な訳だな。

 つかあれのせいで、何人がかりで相手にしても変わらないだろ。

 だから、どうにかして不意をつきたいのだが…

 少なくともそこで金剛体の魔法をある程度無力化出来なきゃいけない。

 それがまともに戦えるようになる為の最低条件だし。


 で、一対一で相手と交戦中に罠を仕掛けて嵌めて、それで魔法が無力化出来る…

 そんな奇策を使いこなせる策士じみた事が出来れば最初に相対した時、そもそも負けてないだろう。



「テッシン…」


「それは…俺達や他にも人がいればどうにかなる作戦があるって事か?」


「へ…?」



 で、俺自身は特に意図した事は無かったのだが…

 二人が何処か悔しそうと言うか、悲しそうというかそんな表情でこちらを見ていた。


(この、鈍感…!)


 そんな…乙女の気持ちを察しろってビンタされるみたいに言われてもなぁ…

 ってかノームは分かる訳?


(もち)


 マジかよ、おい…



「もしかして、最初から一人で戦おうとしてました…?」


「え~っと…」


「図星か?」


「…うん」



 どうにか濁そうとも思ったが、無理だった。

 確かに、この二人と戦う事は一切考えてなかったな。

 ってか二人共戦えるって考えてなかった。

 …ダダンさんなんか一発でのされたって話じゃなかったか?

 大丈夫じゃ…多分ないよな?



「確かに俺たちじゃ正面切って戦うのなら力不足だが…」


「テッシンに作戦があるなら、それの手伝いくらいなら出来ますよ!」


「でも…危険だよ?」



 ぶっちゃけ獣みたいな奴だが…それでも獣相手とは訳が違う。

 裏で何かこそこそやってるなら容赦無く潰しにかかってくるだろう。

 俺がどう頑張っても、常に周りに意識が行かないように…なんて事は無理なわけだし。



「それでも、ここまで頑張ってきたテッシン程じゃないでしょ?」


「それは、そうかもだけど…」


「お前が危険を承知で立ち向かっている間、俺達が尻尾巻いて逃げるわけにもいかないだろ?」


「う、うん…」



 なんだろう…

 この光景に何か、引っかかりがある…



「という訳で、だ」


「私たちを頼って、いい方法を考えましょ!」


「…」



 と、ここでふと…先日の出来事が脳裏で蘇った。

 先走って来た奴と戦った時の事だ。

 根に持ってる訳じゃないけど、あの時は全て終わるまで遠巻きに見てただけなんだよな…

 それを思い出すと二人が乗り気な今の様子にはどこか不安が拭えない。

 これは…素直に頷いていいものか…


(精々悩む間も無くこき使って、使い潰してやればいい)


 …もう少し言い方はどうにかならないのか?

 まるで極悪非道じゃないか、それだと。


(じゃあ頼らない?)


 それだと、八方塞がりだろ。

 俺が言いたいのは、肝心な時に足踏みしないかって事!


(そうなったら囮にして、逃げよう?)


 おいおい、物騒だな。

 …確かにそうなったら逃げるのは賛成だけど、態々囮にするのか?


(甘い、こっちだって命をかけてる。

 向こうにもそれ相応の覚悟が要る。)


 …それも、そうか。

 俺もノームも生死がかかってるんだよな…

 そう言われて何となく答えは決まったよ。


(そう、よかった)


 おう、サンキューなノーム。


(どういたしまして…)



「どうしても…駄目ですか?」



 と、脳内会議で結論が出た所で返答を急かすようにジーニャさんが聞いてくる。



「いや俺からもお願いしたい、けど…」


「「けど…」」



 二人で声を重ねるようにして続きを促す。

 さて、これから少し言い争いになるかな?

 なんてったって、俺は思いっきり信用してませんって言わなきゃいけないんだから…



 

 あ、twitter始めました。

 これからはツイッターで更新報告とかやると思います。

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