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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第二章 勇者と金属と大地と
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九十七話:メリット&デメリット

 

 とまぁそんな感じで命名式は終わった。

 ひと段落着いた所で先程残していた食物の入った袋を拾い、食事を再開する。

 …俺一人の焼き菓子パーティだ。

 一つ頬張り、咀嚼する。

 うん、めちゃくちゃ美味い。


(私も居る)


 うん、知ってる。

 食べてるのは俺だけって意味だ。

 ノームの姿が無くなって、一人パーティになったって意味だ。

 ただ一人でもっさもっさと美味い物を食うだけになったって意味だ。


(寂しい?)


 そういう訳でもないんだけどさ…


 ってこんな茶番は置いておいて、だ。

 焼き菓子を口に突っ込みながらで悪いんだが今後の予定の事を考えようか。


(とりあえず、脱出)


 最優先はそれだよなぁ。

 いつまでもこんな薄暗い洞窟に籠ってるんじゃこっちを探してるパラスケヴィと鉢合わせするのも時間の問題だし。


(それに向こうは落ちたから…)


 地上直通のルートでもない限り、これから探索し始める俺たちでも十分に先に地上に出られる公算は高い。

 つか向こうはこっちを探してるんだから、この広場を目指している可能性が高い。

 なにせこれだけの怪我を負った訳だし、普通なら動けない重症か力尽きるかだろう。


(出るのはそれを確認してからで、十分)


 で、脱出した後はパラスケヴィに出くわさないように逃げつつ、サヴァト辺りと合流して迎え撃つってのが良い…のか?

 出来ればその時に親方と共同戦線なんかも出来ればいいな。

 そのほうが色々と信用してもらえるだろうし、話もしやすいだろうし。


(サヴァト?オヤカタ?)


 あぁ、知らないのか。

 その辺は後で説明するとして…

 とにかく何が言いたいかと言うと、アイツの独断専行だって分かって貰えたらこれからの関係も少しは良くなるんじゃないか?って事だ。


(…関係改善にこだわるのは何故?)


 ノームの安全の為だろ?

 このまま両陣営の仲が悪いとどう考えても引き渡す引き渡さないで揉めるだろうに。

 それにまだ向こうがノームをどうしたいかって…その意図は読めていないんだ。

 こうなりゃさっさと和解させて、その意図を聞き出せる環境を作ったほうが良いだろ?

 これが止められなさそうな理由ならノームの宿主の俺だって狙われる事になるしさ…


(結局それ…)


 …って巡り巡って自分に戻ってきたな。


 あれだよ、もう異心同体なんだし…

 運命共同体みたいな感じでいいじゃん?

 つか、お互い生き延びられるってのが目的なんだから、ね?


(一応、納得)


 とまぁ目下やることの大まかな流れは決まったわけだが…

 さて、まだここに一つ大きな疑問がある。

 ズバリ、契約前と後の変化についてだ。


(…変化?)


 なんて言ったって契約、お互いに力を貸し借り出来るんだ。

 今までと出来る事と出来ない事に多少なりとも変化があるはずだろ?


(確かに、言われてみたら)


 例えばノームは多分俺のSP…霊力を吸収してるんだろ?

 だとしたら確実に回復速度は落ちるはずだ。

 更に言うと霊力の出力操作が覚束なくなる可能性もある。


(そういう事なら私にも…ある)


 というのはやっぱり…実体化やら土人形の操作とかか?


(うん)


 具体的にはどんなもんなんだ?


(どっちも暫くは出来なさそう。

 恐らく力が減りすぎて…)


 となると回復すれば将来的には出来るようになる可能性はあるのか。


(分からない…)


 まぁ実体化に関しては出来るようにある程度方法は模索していくか。

 ある程度自由行動が出来る様になれる方がいいだろうからな。


(そう?)


 そう。

 一人より二人の方がいい場合だってあるだろ?


 …と、あまりデメリットばかり上げるのも楽しくない。

 当然メリットもあるはずだし、そっちの方も考えるか。


(とは言っても…)


 おい、おい…

 こうして意思疎通が出来る事だって重要な事だぞ?

 俺が切羽詰まってる時に指示を出すことだって出来る訳だし。

 身体的に出来る事は一つと変わり無いけど、内面的に出来る事は単純に二倍だ。


(そういう事?)


 あと、力の受け渡しっていうのも気になるな。


(片方の力を、もう片方が使う)


 まぁ…そういう事だ。

 俺の力をノームが使ってる訳だが…俺がノームの力を使うとどうなるんだ?

 更に言えばそれって自然と言うか…ここだと殆ど大地の力な訳だろ?

 出来れば今、試してみたい所だが…


(ごめんなさい…)


 あ…俺もごめんな、考えが回らなくて。

 そら力が回復するまでは殆ど何も出来ないよな。


(違う、やり方が…)


 もっと根本的な問題かよ!

 ってか別に自分の力を俺に渡せばいいんじゃないか?

 こう、俺から力を貰う感じで俺に送ればいいと思うんだけど…


(…こう、かな…?)


 お…おぉ…?これは…?

 何か…自分には無い何かが僅かに、体の奥底からじんわりと染み渡るようにして全身に伝わっていく感覚がある。

 で…それは体中に行き渡ると、今度はその速さのまま血液の様に巡り始めた。

 …これが精霊の力って奴なんだろうか?

 別段疲れが癒えたり、体から力が湧いてくるような感覚ではないな。

 もっと、別の何かだ。

 …少し動いて試してみるか?


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