一話:ぼんやりと理解する異世界
初投稿です、暖かく見守ってください。
窓から爽やかな風が頬を撫で、暖かな光が重い目蓋を軽く持ち上げ、柔らかなベッドから身体を起こす気力を与えてくれる。
気がつけば見知らぬ、中世的な内装の一室でベッドに寝かされていた。
もちろん見知らぬ訳だから何故ここで寝てるのか?と聞かれても答えられないし、聞いても答えてくれる人間は居ない。
だがこのままいつまでもベッドの上に座っているのも抵抗があるので、近くにあった椅子に腰掛ける。
そしてその傍にあるテーブルの上に置いてあった一枚の紙に目が留まり手に取ると、そこに書かれている内容を確認する。
『お目覚めになられましたらお呼び下さい。』
どこか気品溢れる独特な文字で簡潔に内容だけが書かれているそれを一瞥しテーブルに戻す。
…だが誰かを呼ぼうにも呼び鈴も何も置いていない。
ーー頓知でも試しているのかな?
などと冗談半分で考えていると誰かが歩いてくる音が聞こえてくる。
そして特にノックもなく静かにドアが開けられ、一人の少女が入ってくる。
見るからに高級そうなドレスに身を包み、髪の色は白く、そよ風に靡くほどのサラサラのロングヘヤー、そして髪と見事に調和した、強く主張し過ぎない見事な細工の木製の髪飾り。
そして何より目を引くのは人形のような、いやそういう表現も失礼な程のその美貌だろうか。
「あっ…」
じっと見つめたまま固まっていると少女は戸惑った様子でこちらに語りかけてくる。
「あの…私…ノーブル王国…第二王女…ラル・ノーブルで…す。」
たどたどしいものではあったが間違いなくその言葉は日本語だった。
「あなたは…ユウシャ様ですか?」
その質問でようやくこの場所がどこか、そしてここにいる理由が、何となく分かった。
そしてこの状況に笑みを浮かべながらその言葉への答えとして
「俺の名前は鉄信だ。ユウシャって名前じゃないぞ。」
そう、この世界の言語を口にする。
「…えっ?何で言葉が…?」
困惑する王女様を余所に鉄信は一人この状況に笑っていた。
『異世界に来た』という状況に…