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完全装鋼士 : レベル0  作者: ノシ棒
第1章 ―学園編:ナナシ―
20/64

第1章  登場人物:用語まとめ

人物欄にある数値は本編には登場しません。

おまけ的なものとして読んでくださいませ。

◇用語


【冒険者】

 冒険者。

 名声を、名誉を、栄光を、金を、あるいは力を得るために、自らの命を掛け迷宮に潜る者達。

 平時はギルドに身を寄せ、様々な依頼(クエスト)をこなし、日々の糧を得る。


【国家冒険者】

 国家資格を有する冒険者。これ以外の冒険者は、公的には冒険者と認められていない。

 国家資格は、国々が指定する冒険者学園で6年間の研修を積んだ後に支給される。


【学園】

 広大な敷地を持ち、都市化された学園群を指す。

 様々な分野の教育機関が集約されており、学園を卒業したものは、専攻学科に則した国家資格を得る。


【貴族】

 貴族。

 国家運営を任された者達であり、権威に生きる者達である。大半が権力に取りつかれた金とコネの亡者であり、よく想像される悪徳貴族ばかりと化している。

 我らこそは神に選ばれし者である、という自負があり、またそれに見合った加護も与えられているため、尊卑感情は消えることがない。

 冒険者とは迷宮の利害を巡り、古くから対立関係にある。


【迷宮】

 製作者不明。太古より、世界の始まりからそこに在った、とも言われている。神の揺りかご、神を祀るための祭壇であるという説が最も有力である。

 構造変化や魔物の産出、武具や道具の生成といった自律性を備えているため、資源の宝庫と見なされ、国家間での奪い合いが幾度も起き、戦争の火種となっている。

 その内部には生物的に圧倒的上位の存在である魔物が徘徊しているため、レベルを上げた者しか足を踏み入れてなお生き残ることは出来ない。

 数ある迷宮はそれぞれ脱出装置が置かれていたり、天然地形を利用して野外に存在していたりと個性化しており、同じものは一つとして無い。


【レベル】

 神から受けている加護の度合いのこと。

 大きければ大きい程、基本的能力に補正が掛かる。

 冒険者達は皆、戦神の間接加護を受けているため、魔物を倒せば“経験値”が入る仕組みとなっている。


【神】

 実在する神。世界を司る存在。管理システム。

 まずこの世界においては、神が実在しているということが前提である。

 全ての存在は神に依存しており、精神や魂はもちろん、分子原子といった物理的法則にまで須らくその影響下にある。

 数多くの神が存在し、それぞれ互いに影響を及ぼし合いつつ、高次元から世界を支えている。

 人が捧げる信仰を喰う存在と言い換えてもいいかもしれない。だとすると、より信仰を捧げさせるため、加護を与えていることになる。マッチポンプ、循環の権化である。

 存在が強大過ぎるため、世界上に顕現する際には依代を必要とする。依代の性質をペルソナとして被り行動するため、神自身に自我が存在しているかは不明。明確な意識は無いと考えられる。

 世界を構成する一つのシステムそのものとも言えるだろう。

 そのため世界に大きな影響を与えた者、英雄や勇者といった世界レベルで認知された者は、死後に世界のシステムの一部であったと認識され、下位神となる。

 世界を動かすほどの影響力=神の御技=神でしかありえない、という式が成り立ってしまい、逆説的に世界システムに取り込まれてしまうため。

 意識とよべる程の揺らぎがみられないため、存在そのものが焼き付き、力のみとなった鏡像ではないかとされる。

 自然発生した上級神よりも当然階級は低いが、この世界に多数の神が存在する理由はこのような理由からである。

 上級神の加護は、一握りの貴族や王族のみが受けており、これも貴族制度に拍車をかけている一要因となっている。


【神威】

 魔法や武具の特殊効果といった、魔力を媒介にして現れる効果を指す。

 威力として現れる、物理的に作用する力場を持ったものである。

 魔術は同義の意味として使われており、区別はされていない。強いて言えば、公的な場で用いられる語として神威と呼ぶ場合が多いという違いくらいのもの。

 竜が空を飛ぶ、炎で身体が構成されている魔物、など明らかに物理法則を無視している現象は、全て神威のためである。

 魔術的要素によってスライムはゼリー状の身体を凝固しているのであり、猫耳や犬耳の少女が街を出歩いているのである。全ては神威に依るものなのだ。

 解りやすく言い換えるなら、炎や氷といった、魔術的効果が物理に変換されたものを言う。


【神意】

 神の力の直接介入のこと。立ち入り禁止の封印や、人払いの結界といった、精神に作用する魔術はこちらに含まれる。

 物理的な魔力要素ではなく、概念的な魔力要素を指す。

 電撃結界といった物理的魔力効果が現れるのは、神威、魔術の方に分類される。

 世界の成り立ちから神の存在が前提として在るために、この世界の全てには神意が宿っている。

 そのため、『ここから先に立ち入ってはならない』といった、神の強制には逆らえないのだ。人が奉じて神に為させる術のため、結界や封印の強制力は強力であり、また解くことは出来ない。


【加護】

 レベル、または特殊効果を指す。加護も広義には神意に含まれる。

 神意が宿ったために、ただの鉄の剣は竜殺しと化すのである。レベルもまた、概念上のシステムであることは言うまでもない。

 加護を得られない存在がいるとすれば、その者は世界に受け入れられず、ほとんど誰からも認識されることはない幽霊のようになってしまうだろう。

 神そのものではなく、人に認められるという関節的な加護を受けられたらその限りではないだろうが。


【魔力】

 世界中に充満しているエネルギー。

 魔力を媒介に神意は伝達され、魔術として顕現する。

 神の残滓とも言われ、世界が誕生したその瞬間から世界内に充満している、世界を構成する要素の一つ。例えば酸素のような、そんな扱いである。

 あらゆるベクトルに染まりやすい性質を持っており、また世界のカケラであるために、自然界に存在する魔力そのものには神意の介入はない。

 ただし神意の影響を受けていない、ということではない。“まだ”受けていないだけの状態にあるということ。魔力とは、非常にニュートラルなエネルギーである。

 魔力を集めた瞬間、人間の身の内に収集した瞬間に、その用途や使い手の加護神によって染められる。

 人は器としての機能さえ果たせばよく、祈りという形で集めた魔力は神に上納され、そして魔術の顕現として返される。

 魔力収集の才さえあれば、処理と行使は神が行ってくれるため、誰もが利用可能なエネルギーである。

 ただし、科学技術によって集められた魔力は別となる。

 例えば魔力駆動の列車であったなら、炉心に魔力を取り入れた瞬間に大地神か風神といった様々な神々の神意が入り乱れ、オーバーフローを起こし、魔力が何色にも染まらぬ無色となってしまう。

 そういった無色の魔力が、汎用エネルギーとしてこの世界では使われている。

 酸素と同じ扱い、というのも間違いではない。電気よりも効率がよく、またエネルギー量を稼ぐのも容易なため、この世界での主用エネルギーとなっている。

 電気のように魔力バッテリに充填・保管され、機械技術に幅広く応用されている理由である。


【文明レベル】

 この世界の文化レベルは高いが、機械技術と魔術が融合してもはやSFのような世界観。ファンタジーと近代が融合しているという、想像し難いことに。

 イメージとしては、電力の代わりに魔力が使用されていると考えるのが最も想像しやすいだろうか。



◇種族



【魔物】

 魔物。

 主に迷宮内を徘徊するモンスターだが、特徴的なのが、魔物達は皆邪神の加護を受けているということ。

 混血化が進む昨今、魔物とヒトとの違いはあるのか、とヒューマニズム論者間で叫ばれ続けているが、彼らが邪神の加護を受けているため、その問答は無意味である。

 世界の成り立ちから、邪神の加護を受けている者は、相殺の運命を背負っている。放っておけば“共食い”を始めるような魔物達と、手を取り合うことなど不可能なのだ。


【魔獣】

 魔物との違いは知能が劣っていること、そして身体組織が“核”を中心に編まれていることである。心臓が無い、ということ。

 かつてはこの核が通貨としての価値を持っていたが、現在は魔獣の養殖化技術が確立したため、核の価値は下がった。

 食用やペット用として養殖され、迷宮の外で繁殖を促された魔獣達。しかし、その本能までは飼い馴らすことはできなかった。

 近年問題となっているのは野良魔獣の被害であり、ヒトの欲の自業自得と言える。


【人間】

 広義の意味で使われている、知能ある種族全てを表す言葉。 

 混血化が進んだ現在、額から角を生やした者や背中から翼を広げる者、エラ呼吸をする者など、人間の体構造は多様化している。

 千年程前では、犬狼族、魚鱗族、人間(純人)といったように明確に種族分けがされていたが、現在になるにつれ『人間』で統一された。

 もはや人間という言葉は、純人族のみを指す言葉ではなくなった。むしろ、純人族の方が数を減らしている。

 祖先の血が顕現した部分を指し、なにがし族と言うのが、その名残である。

 なお体構造がそれぞれ大きく異なっていても、治癒魔法や薬は効き目の差こそあれ、同じものを処方しても問題はない。


【純人種】

 本来の意味での人間。

 現在では希少種。


【―――族】

 始まりは放神を行い邪神を捨てた魔物だとも、魔獣だとも言われる。所謂亜人種。現在は、彼らこそが人間である。

 身体的特徴を指して、―――族と表す。

 社会的には、人間に近い容姿である亜人種族と獣頭人身の獣頭症を発症した者、ベタリアンとに分けられる。


【ベタリアン】

 祖先の血が濃く顕現した者。

 古代では神代の血の顕現だと崇められていたが、生物学が発達するにつれ、それは劣等遺伝子の顕現であると認識が変わっていくようになった。

 つまり、魔物の血の顕現である。

 結果、ベタリアンに対する排斥と差別を生むことになる。彼等は社会的被害者であると言える。

 貴族の旧家といった古くから続く家系では、家訓や伝説としてベタリアン優位の“しきたり”が幾つも残っているため、そのような家に生まれついたベタリアンは社会的認知としきたりとの板挟みになる。

 市民権が購買制であるため、職に就けないベタリアンは人間とは認められず、更なる排斥を受けることとなる。

 この世界での人の命は、金で買える程度には、軽い。



◇地名



【カスキアヴァンダリア大陸】

 大陸の名前


【ヴァンダリア学園】

 公的教育機関『学園』に数えられる一校。迷宮と学園はセットであり、比較的重要度の低い迷宮を中心として都市が形成されている。学生達の学び舎。

 探索者科だけでなく、冶金術科、錬金術科、商業科、魔術科といった様々な分野の学問を学ぶことが出来る、集合学術都市でもある。

 このような『学園』は各国に相当数存在している。

 元来反目し合っている冒険者と貴族とが同時に在籍するという珍しい機関であるが、やはりと言うべきか、裏があるらしい。

 探索中に死亡した冒険者の遺体は回収された後、どこへ消えるのか。魔物に繁殖用として囚われていた女性達は救助された後、何処へ行くのか。

 自分が生きることに精一杯の生徒達は、気付かない。



◇PTメンバー


【クリブス・ハンフリィ】


 クラス:冒険者

 ジョブ:付与魔術師

 LV:26

 特性:善性

 加護神:不死鳥フェニクス

 

・探索者科最後尾組クリブス班リーダー。

 ハンフリィ家のしきたりにより、ヴァンダリア学園へと入学した。

 獣頭人身の“ベタリアン”であり、そのため幼少の頃から苦労してきたのだが、実力によって自身を認めさせてきた努力家である。

 珍しい付与魔術の使い手だが、近接戦闘もそれなりにこなす万能系魔術士。優れた刀使いではあるのだが、しかし体力に難あり。

 入学当初、単体で迷宮に挑んでいた所にナナシ達と遭遇。なしくずし的に巻き込まれ、パーティーリーダーの座に収まった。 

 社会的問題であるところのベタリアンへの差別、それをクリブスも受け続けてきた。名門貴族であるために表立っての排斥行動はなかったものの、むしろ差別は陰鬱なものであった。

 ベタリアンへの隔意を家族からも感じており、人嫌いがもはや諦めへとなっていた。しきたりにより冒険者とされたというよりも、それを体の良い厄介払いの口実にしたのだと思っていた。

 しかし、ナナシと出会ってクリブスは変わった。クリブスは冒険者として活動することへの意義を見出し、救われたのだ。

 口を開けば小言ばかりだが、しがらみ抜きで付き合えるナナシのことを得難い友人だと大切に思っている。

 貴族であることの負い目を感じており、学園卒業後の進路について、政治の道を目指しているため冒険者を続けられないことも気に病んでいる。 

 ナナシの特異性にも優れた洞察力で直ぐに気付いていたのだが、ナナシの身の安全を計るため、本人に対しても口を閉ざしている。

 自分の動きを把握しているだろうハンフリィ家は、間違いなくナナシの情報を掴んでいるはずだと予想はしている。少なからず探索でナナシの特異性に頼る場面もあるクリブス班は、貴族や学園に目を付けられて然りのはずだからである。

 しかし不気味な沈黙を保っている貴族サイド。

 貴族へのキナ臭さを感じながら、クリブスは今は冒険者として、いつか自分の存在が裏切りの刃になるのではないかと苦悩する。

・生い立ち故にか、コンプレックスの塊であり、努力を重ねるのもそのため。

・鳥頭。見た目的な意味で。

・単体行動していた当時の自分を馬鹿だと断じているが、苦労の度合いはナナシと出会ってからの方が上である。主にナナシの女性関係についての被害で。

・隠れツンデレ。


『クラス一覧:クラスチェンジ条件』


冒険者

高位付与魔術師……修練により、魔道の理解を深めた付与魔術師。昇華された魔力は新たな加護すらも付与させるという:クラスチェンジ条件――――――レベル50以上、MAG300以上

偽星不死鳥:■■■



【ナナシ・ナナシノ】


 クラス:冒険者

 ジョブ:完全装鋼士

 LV:0

 特性:中庸

 加護神:なし 間接加護神:命名神ネイマ


・探索者科最後尾組クリブス班副リーダー。

 地球生まれの日本人。コンビニでおでんを買った帰り、唐突に異世界に召喚された。

 わけもわからずうろついていたところ、遭遇した最下級魔物――――――スライムとゴブリンにボコられ、死にかける。

 後にとある老人に助けられるが、レベル0じゃあスライムにも勝てないのかと絶望。戻れる見込みもないならば、と諦観によりこの世界に骨を埋める決心をし、手に職を付けるため積極的に老人の手伝いをこなす様になった。

 だが、老人は倒れた。ナナシは独り道を行かねばならなくなった。

 老人の遺言により、冒険者を目指すことに。レベル0で高位迷宮に挑まなくてはならない無謀をする羽目になる。

 本心では、一度決心をしてしまったこともあってか、そこまで強く帰りたいとは思っていないため、迷宮探索に対する積極性は薄い。

 冒険者を目指した根幹は恩人への義理であり、罪悪感であり、元の世界への帰還を願うのはその延長でしかない。

 自分の心情も表向きは帰還することを目的としているため、仲間は大切にするが“深い”仲にはなりたがらない。とぼけた態度は全て演技。鈍感ではない。

 また、異世界出身であるという理由からか、神威の影響は受けるものの神意を受け付けないという特性を持つ。ナナシのレベル0は、戦闘レベルのない一般人であるという意味ではなく、その身に全く加護を宿していない現れなのである。

 他者を通した神意は誤認するのか、間接的に加護を得ることは可能ではある。本人も把握し切れてはいない、未だ謎の多い特性である。

 ……そのため、お嬢様と交われば、その力を身に宿すことは出来るのだが。

 老人によって名付けられるまでは幽霊のように存在感が無かったというのに、何かと他者を惹きつける。機関鎧がなければ村人Aでしかないというのに。

 理由は、ナナシが“スタンドアローン”であるからだ。ナナシ自身が魅力的な人間だから、というわけではない。

 あらゆる神意を受け付けず、また操作されることもないということは、一部の人間にとっては非常に魅力的に見えてしまうらしい。

 本人も自分の特性を自覚しつつあり、対人距離を測りかねている所が有る。それがナナシの他者と距離を取りたがる思惑に拍車を掛けている。

 人に対して親身になったり、かと思えば相手の言葉を誠意を持って受け止めず流したり。良くも悪くも日本人的である。

・ナナシに惹かれる者とは、自身の境遇に不満を持っていたり、加護神に対しての信仰心が薄い者達である。彼等にとっては、自力で立っているナナシが魅力的に見えるのだろう。

・半端にいい人であることもあってか、良く言えば自身に向けられる好意に対して鈍感を“装っている”似非モラリスト。悪く言えばヘタレ。

・“装う”ことであらゆる場面に対処する、根っからの中の人体質。

・PTでは、ナナシが戦闘時のみ指揮を執り、それ以外での全体統括はクリブスが行うといった役割分担がされている。パーティのまとめ役がクリブスであり、ナナシは戦闘指揮官の役を負う。

・本名などない、中の人。


『クラスチェンジ一覧:クラスチェンジ条件』


冒険者

纏鎧皇……禁忌、完全装鋼士:クラスチェンジ条件――――――神墜し

■■■:■■■



【鈍色・ナナシノ】


 クラス:冒険者

 ジョブ:重装戦士

 LV:23

 特性:悪性

 加護神:狼王フェンリス


・探索者科最後尾組クリブス班所属。

 過去、ジョゼットが死亡し半ば自棄となっていたナナシは、単身で迷宮に突入した。その迷宮は邪教により改造されており、邪神への供物として、人々が攫われ集められていたのである。

 そこで行われていたことは、集められた人々と邪神との交配であった。神を降ろし、人の身と交わらせていたのだが、神意が強すぎて母体は皆命を落としてしまっていた。

 男は皆死んだ。女は半分は死んで、半分は“人でなし”を孕んだ。

 産まれた子は、邪神の“成り損ない”ばかり。邪教徒にとって、それは満足のいかない結果であったらしい。

 鈍色もそうして産まれた子供達の一人であり、邪神崇拝者により迷宮内で処分されかけていたところを、ナナシに救出された。

 そして学園入学前で冒険者のイロハも知らなかったナナシと協力し、迷宮を脱出。後にジョゼットの遺産を用いて、ナナシと共に学園へと入学する。

 姓名共にナナシの命名であり、刷り込みに近い形で、無条件な信頼をナナシに寄せている。

 ナナシが受けた命名神の間接加護を更に分譲された形となった。本来は新たに加護を授かるはずが、命名した当人が神意へのアクセス権限を持たなかったため、元から持っていた間接加護を分譲する形に収まったのだろう。自然の自浄作用、世界の修正である。

 そのため、ナナシとの間に不完全な精神回路が繋がっている。ナナシは言葉は解らないものの、鈍色の感情をどことなく感じることが出来る。また、その逆も。

 犬狼族の神の血が不完全に顕現したがベタリアンとはならなかった。神意が強すぎたために、拒絶反応が発生し人間体となったのである。ただし、声帯のみが犬狼族のそれとなっている。「わん」としか話せないのはそのため。

 あばらが浮く程に痩せ型で小柄なのだが、とてつもない怪力の持ち主である。

 しかし、小柄な体格のせいで、重装戦士の特性が生かし切れない。鎧を着ればサイズが合わず、だぼだぼに。

 小さいことは武器だと思っている節がある。何に対しての武器かは、ナナシは知らず。

 果たしてその天真爛漫さは、天然のものであるか、否か。

・犬耳っ娘らしく撫でられることを好む。銀髪の手触りはもふもふである。

・肉球はないが、手のひらはぷにぷに。唾液の分泌が多く、あまがみをされるとべちょべちょに。

・セリアージュの支援はナナシの機関鎧関連のみであるため、鈍色は日夜バイトにクエストに励む苦学生である。しかし幼少期を劣悪な環境ですごしたため、特に不満に思うことはない。ナナシの側にいられたら、後はどうでもいいと思っている。

・セリアージュとの相性は悪い……と思いきや、鈍色自体は特に悪感情を抱いていない。向こうが突っ掛かってくるので挑発しているだけなのだ。

・実はナナシと同い年。実は知能指数高。実はようやく成長期。実はだんだん張ってきた胸が痛くて悩んでいる。

・忠犬。


『クラスチェンジ一覧:クラスチェンジ条件』


冒険者

灰金の子狼……重装備を扱うための膂力を速力に回した変則型重装戦士。腕を振るえば空が裂け、あらゆる物体を粉砕する:クラスチェンジ条件――――――レベル50以上、AT・DF250以上

白銀の孤狼:■■■



【アルマ・F・ハール】


 クラス:冒険者→見習いメイド

 ジョブ:兵士→従者

 LV:35→20

 特性:悪性

 加護神:神兵アルタナ→メイド・オブ・オール・ワーク


・探索者科最後尾組クリブス班所属。

 天魔族の血を色濃く引いており、膨大な魔力を身体に秘めている。全身に魔力を張らせることで、短時間の天魔化を可能とし、戦力が倍増する。

 天魔化時の容姿は銀髪、青肌、真紅の双角、細長い尾を持つ。 

 その姿は、過去に大陸で破壊の限りを尽くした邪神に酷似しており、そのせいで幼少期から酷い排斥を受けてきた。特に貴族から受けた謂れのない責めは、信教が絡んでくるため重く、そのため貴族に対する悪感情は言葉には言い表せない程。

 クリブスに対し距離を置いているのはそのためである。

 兵士となったのは、社会的に認められる立場にいないと、自身の身が危なかったため。

 過去の体験からか、普段は他者との接触を断ち、ほとんど部屋から出てこようとはしない。クリブス班の中でも影が薄く、目立たない人物。自分のことをほとんど語ろうとしないため、謎が多い。

 なぜかナナシの言葉には、命を掛けるほどまで従順に従おうとする。理由は一切不明。何らかの組織に属していたらしく、ナナシに罪悪感を抱いているだが。

 その組織との関係はどうなったのか、不明である。

 また、五年次生に進級して直ぐにジョブチェンジを果たし、兵士から侍従となる。あまりに稀有な経歴を持つに至った理由には、やはりナナシの存在があった。

 レベルを捨て去って1からやり直すというのは、生半可な覚悟ではいられない。その覚悟は、PTメンバーに負担を掛けぬよう、数週間でレベル20まで上げきったことに現れている。

 本来ならば数年を掛けてレベルを上げていくというのに、彼女の積んだ戦闘経験と努力たるや、筆舌に尽くし難いものであっただろう。

 天魔化を戸惑わぬようになったのは、レベル上げの効率化を図った影響であるかもしれない。

 あるいは、彼女のメイドとしての素質の高さ故に、加護神がおまけをしてくれたのか。

 メイド道の行く先に何があるのか。メイド道とは何なのか。

 決して主役にはなれない、支える側の人間。その苦悩を未だアルマは知らずにいる。

・天魔化することによって、魔力噴射で身体強化と速力上昇を行うハイスペック能力を持つ。

・思い悩んでとうとうジョブチェンジ。何がどうなってか、メイドさんに。

・ナナシに祝福を頼まなければ、それ以外の職もあったかもしれない。ナナシは命名神以外の加護を分譲出来ないため、捧げた祈りと誓いに対して自動的に加護神が決まってしまっていた。だが、ナナシに尽くす、という意思を体現したかの職に本人は大満足。

・スカートは長短両用。黒ストッキングに包まれた足は、キャストオフすることで生足に。

・男なのか女なのか、それが問題だ……と言うのも束の間、あっさりとついてない娘だと判明。

・職が変わったり口調が変わったり、キャラが定まらない。

・料理の腕は壊滅的、ということでメイ度を高くしてはみたものの、所詮付け焼刃。キャラが薄い。

・だが構わない。メイドとは結果ではなく在り方である。そこに在るだけで至高であり正義なのだ。


『クラスチェンジ一覧:クラスチェンジ条件』


冒険者

迷宮専属兵士:条件満たさず

ジョブチェンジ


見習いメイド

万能メイド……主人への愛が極限を超えた時、メイドが行うGOHOUSHIは世界の法則すらも捻じ曲げるだろう:クラスチェンジ条件――――――レベル50以上、家事スキル全習得、TEC600以上

冥土惨:■■■



◇協力者


【ジョゼット・ワッフェン】


 クラス:隠者

 ジョブ:なし

 LV:0――――――放神状態

 特性:善性

 加護神:隠者ヘルメスト


・物語開始時点で故人。

 元神聖騎士、所謂武僧であり、有力な冒険者だった。

 ナナシと出会う十数年前に、街の地中深くに埋没していた迷宮『地下街』が出現。モンスターハザードが発令され、息子夫婦とその娘が死亡。ジョゼットは家族を、最愛の孫娘を失った。

 ただ一人生き残ったジョゼットは、神の加護で街は守られていたのではなかったのか、と絶望。元が敬謙な神職者であったため、その絶望はより深いものとなる。

 その後神を恨むようになり、放神。神への復讐のため、加護なき者が神を打ち破るための武具『機関鎧』の作成に着手する。

 初期構想では、機関鎧は自分で装着するつもりだった。加護なき者=放神を行ったもの、であったから。

 鎧に神意に対するアンチテーゼとして呪いを込めることになったのは、当然の流れである。しかし人を呪わば穴二つ、神という絶大な存在への呪いを掛けた代償は、自らの命だった。

 呪いの反動をごまかしつつ作成していくも、呪いが強力すぎたため、鎧は誰にも装着することが不可能な代物に。

 どうしようかと途方に暮れていたところ、ナナシを拾う。

 そしてナナシに進むべき道を示し、全ての怒りを、憎しみを呑み込んで、逝った。

・女性名なのは、生まれた時より神聖騎士となるよう名付けられたため。

・放神を行ってなお、神から逃れられない事――――――放神を行うことがある種崇高であると神意のシステムに認識されるのか、自動的に隠者ヘルメストが加護神となってしまう事に更なる絶望を感じていた。

 そのため、ナナシの完全なスタンドアローン性に全てを掛けた。それは即ち、ナナシのために鎧を完成させ、死ぬことである。

・なお、ジョゼットのレベル0は放神を行った者であることを指す。ナナシのレベル0とは根本的に含まれる意味が違う。

・最後の瞬間も、孫娘と会うことはなかった。ジョゼットは孫娘を“作った”のだから、会ってしまうわけにはいかなかったのだ。

・ツンデレ爺



【ヒナコ・マウラ】


 クラス:学園専任技師長

 ジョブ:メカニック

 LV:78――――――技術レベル

 特性:中庸

 加護神:鍛冶士アマツラ


・現在、学園内施設及び交通機関等、あらゆる分野の機械装置の整備を担う、学園技師長の座に就いている。

 若き日は、ジョゼットと同パーティを組み、迷宮探索に暮れていた。目的は機関鎧の新概念構想と武装としての証明のため。

 ジョゼットはヒナコの伝手を頼り機関鎧の技術を習得したため、ヒナコの直弟子であるとも言える。

 自動販売機や魔力列車等、全く違う分野の技術を網羅しているオールマイティな技師である。

 この世界の機械技術は魔力的な要素も含むため、本人の魔術的素養も高く、若き日は魔術師としても高い成果を上げていた。

 引退した後は後進の教育に力を注いでおり、その技術の全ては孫娘であるナワジに受け継がれている。

・高い魔術的素養は、犬狐族の血を引いているため。

・学園に入学したナナシに初めて接触したのが彼女であり、ある程度の事情をジョゼットから知らされていたため、機関鎧関連の整備を一手に引き受けた。

・しかし金は取る。



【ナワジ・マウラ】


 クラス:ナナシ専属技師

 ジョブ:メカニック

 LV:58――――――技術レベル

 特性:中庸

 加護神:鍛冶士アマツラ


・ヒナコの技術の全てを受け継ぎ、独自に発展させた才女。所謂天才である。

 しかしサボタージュや服装違反、貴族への反抗的態度や男性口調といった素行に問題がある。目上だと自分で納得した者に対しては敬意を見せる、らしいが彼女が下手に出たことはない。

 ヒナコから受け継いだのは技術だけでなく、昔堅気の職人気質も共に宿している。ヒナコはこんなところまで似なくていいのに、と頭を抱える日々を送ることに。

 あらゆる技術を身に付けたオールマイティな技師であり、技量も抜きん出ていたが、その性格が災いしてか大きな仕事は与えられずにいた。

 本人もやる気はないのだが、その頭脳と腕から、彼女が技術の発展に情熱を向けられたなら技術革命が起きるのではと言われていた。

 しかしナナシと出会ってから、機関鎧に並々ならぬ力を注ぐようになる。また破天荒な性格も、なりが収まった模様。

 現在では専らナナシを諌める役に回るという、以前の彼女を知っている者が見たならば目を疑うような光景が見られるだろう。

 また、犬狐族では神秘の象徴として扱われる金毛である。

 高い魔術の素養を秘めていることは間違いはないが、その顕現は未だ見られない。

・狐耳っ娘。たまに尻尾の根元がシクシク痛み、いつか割れるんじゃないかと心配に。

・姉御肌で豪放な性格をしているが、ここぞという所で踏み込めない繊細さも持つ。

・ヒナコからナナシの事情について伝え聞いているが、それをナナシには知らせないでいる。

・自分のナナシに対する感情の正体を理解しているが、それでも構わないと受け止めている。そして彼女達もそうなればいいと願っている。

・つなぎが彼女のトレードマーク。

・Gの衝撃。我侭ボディ。



【セリアージュ・G・メディシス】


 クラス:貴族令嬢

 ジョブ:錬金術師

 LV:23

 特性:善性

 加護神:古龍ルーツ


・メディシス家令嬢。

 辺境の街にて半幽閉生活を余儀なくされていた彼女は、しかし父の制止を振り切り学園へと入学した。

 名目上では素養を身につけるためとし、錬金科へ。流石に探索者科に入ることは出来なかった。錬金術師としての腕は残念と言わざるを得ない。

 血のためか魔術の資質は超一級であり、彼女が冒険者として活動したならば、必ずや大成したことだろう。

 古龍の血を引いていて、膨大な魔力を身に宿している。魔術使用時は、魔力により形成された翠色の角が頭部に発生。龍の血を顕現させる。

 単語―ワンブレスによる複数効果発生魔術、龍言語魔術―ドラゴンブレスを可能とする。通常魔術では再現不可能である魔術の同時展開は、ガトリングマジックと呼ばれるほど華麗である。

 だが古龍による加護は、『龍眼』にこそ本質があった。龍眼とは、未来予知を可能とする加護である。

 龍退治の神話から、古龍の血を引く女性は自らを屈服させた者に対し、加護を譲渡することが出来た。セリアージュは女児として生まれた瞬間から、政略結婚の道具として扱われることが決定していたのである。

 自らの運命をその龍眼でもって悟っていたセリアージュは、無為に日々を過ごしていた。しかしそこに、まるで未来の読めない、理解不能な存在と出会った。ナナシである。

 初めは興味や憤りから声を掛けただけだった。しかしそれは今では、恋慕へと成る。

 ナナシ転移初期からの付き合いで、それからずっとナナシを追いかけている。

・ナナシに興味を持ったのは、ある種の一目惚れ。それは、ナナシが神意を受け付けないが故の。

・“切っ掛け”と“結果”は違うのだと言い切れる強さを持つ。

・わたくしとはひらがなで書くべき。真剣なシチュエーションでは私と漢字にしよう。

・金髪縦ロール。

・つるん、ぺたん、すとん。

・ツンデレデレお嬢様。


『クラスチェンジ一覧:クラスチェンジ条件』


貴族令嬢

カスキア合衆国東部統括魔術軍主席幕僚長……クラスチェンジ条件不明

龍桜貴人……クラスチェンジ条件不明

ジョブチェンジ



◇正体不明勢力


【ジョン・スミス】


 クラス:冒険者専門ジャーナリスト

 ジョブ:司教

 LV:不明

 特性:悪性

 加護神:不明


・名無し。特徴的な笑いを漏らす男。

 ナナシに試練を課し、成長を促している。邪悪な手段で、だが。そういった視点から見れば、協力者ではある。

 何らかの組織に属しているらしいが、組織の全容、目的他一切不明。学園迷宮に出没した姿が見られたため、学園内部を支配する貴族達と関わりがあるらしい、ということだけが推察される。

 独自の思惑により行動しているようだが、その行いは不鮮明であり不明瞭である。

 ナナシに試練を課す一方で、死んでしまっても構わないとでも言うような態度は矛盾しており、掴み所がない。

 自身に戦闘力があるかも不明。

・影を渡る能力を持つ。しかし影渡りは本来の用途ではなく、通信や移動用に無理矢理加工したスキルであるらしい。

・ナナシのように、過去にも“喚ばれた”者がいたらしい。喚ばれた者は交替制なのか、複数人存在しているのかも不明。

・カラスのような声で笑う。

・目的不明、詳細不明。



◇装備


【機関鎧】

 機関鎧とは、機械駆動で身体能力を補正するための補助具である。

 冒険者が溢れるこの世界では、身体の欠損を含む負傷者に事欠くことがない。しかし、身体が欠け老いてもなお冒険者を続けると言い張る者がほとんどであった。

 そのため魔術による義肢技術が発展することとなり、亜流としてそれを模倣した機械技術である、機関鎧が発生した。

 機械技術は無色の魔力を用いるという性質上、強力な加護が宿らず、また機関鎧は多くの部品から組み上げるという構造上、整備があまりに困難であったため、ほぼ開発中止状態となっている。

 機関鎧が用いられる用途としては、身体能力の低下した老冒険者に向けた補助器具としてか、戦闘レベルが0である一般人が使う高価な防衛グッズ程度。

 鎧を装着しているということは、自らが劣っていると公言しているようなものであり、面子を重んじる冒険者にとり忌避されている。使ったとしても、手足具くらい。

 機関鎧を纏う冒険者は、弱者や身体に欠陥があるとレッテルを張られる。迫害を受ける程ではないが、戦闘力に難有りと自ら喧伝するに等しい容貌は、周囲に歓迎されることはない。

 全身に機関鎧を纏った冒険者は、史上を見ても極めて珍しい存在である。



【機関鎧:ツェリスカ】

 ジョゼットにより作成された、全身装備型の機関鎧。

 手足部のみの装着であっても、通常機関鎧の用途である補助具として運用可能だが、十全の性能を発揮するには全身装備する必要が有る。

 全部位を連結されたツェリスカは、もはや補助具の範疇に収まらず、一個の兵器となる。機関鎧は武装としての運用を想定されておらず、兵器として制作された機関鎧はツェリスカが史上初。

 それだけならば、加護の観点から見て武器として扱うにはあまりにも非効率な高価なガラクタという話で終わりなのだが、ツェリスカには常軌を逸したものが込められていた。即ち、呪いである。

 ジョゼットは絶望の矛先を神に向けていたため、加護を求めず、呪いを込めたのだ。鉄を打つ毎に、神意を打ち払っていたのである。

 呪いとは、神意を強引に拒絶することによって発生する神意への逆流現象である。怒りや憎しみの精神力でもって神意を跳ね除け、その反発力を利用するという技術。

 しかし世界の法則を捻じ曲げ力を得る方法は、使用者への負担が大き過ぎた。力の代償に、生命を対価に支払わねばならない場合がほとんどなのだ。

 ツェリスカも例外ではなく、呪いの反作用の強さは、物理的威力を持って装着者を一瞬で圧殺せしめる程。実際ツェリスカは、前途有望な若手整備士の腕を喰い潰している。

 現状、神意の影響を全く受け付けないナナシを除いて、ツェリスカを装着出来る者はいない。

 ジョゼットは力を与えるために呪いを込めたのだが、しかしその呪いは別方向に発揮されている模様。

 呪いとは神意の逆流現象である。ツェリスカに込められた呪いとは、神に対する呪いである。神意を無理矢理に別方向に流すのが通常の呪いであるが、ツェリスカのように神意をそのまま返した場合、反作用はどのようなものとなるか。

 神意の反存在とも言えるツェリスカは、どのような存在であるのだろうか。

 この世界では神意が込められなければ存在を維持できないというのならば、神意を打ち返したことによる空白に、新たなる『意』が宿る可能性はないだろうか。

 ツェリスカが持つ自律性と自己進化性は、呪いの副次効果であるが……。

 装着者は時折、モニタの向こう側に、少女の幻影を見るという。

・スラブシステム搭載。本来は水中行動用に試験的に搭載されていたシステム。スラブ、面発生雪崩のように装甲を展開することから名付けられた。

 全身の装甲を“ずらす”ことで、内部を循環する魔力を一定方向に噴射、高速移動を可能とする。仕組みはアルマの天魔化と同じである。

 魔力噴射の際、同時に加圧された魔力が高熱を発し、全身が紅色に染まる。

・ツェリスカの構造は腹部を中心に配置されており、ここを基点に高速・自動脱着は発動される。登録ワードは「装着変身」。

・自律性、構造システム変化――――――これら特異性は、冒険者が最も親しむべきソレと似ているが、果たして……。

・パイルバンカ―は浪漫武装。

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