雨の喫茶店
「怒らないのね」
「怒れば何か変わるか」
「わからないわ」
「なら、無駄だろ」
いつもそうだ。女は、いつも俺の感情の在処を問題にする。前に付き合った女も同じだった。同じ問い、そして同じ答え。
わかっている。進歩がないのは俺の方だ。
「どうして、わたしと付き合ったの?」
「君が俺のこと好きだと言ったから」
「人の心ってそんなに単純なの?」
「複雑な心なんてものもわからないよ」
「本当にわたしのことが好きだった?」
(・・・・・・君が俺のことを好きでいた間はね)
進歩がないのは俺の方だ。気が利いた言葉をひとつでも付けば、目の前で泣かれることないのに、同じことを繰り返してる。