そこの学校.現共学高.元男子高
「いってきまーすっ」
白いカッターシャツの上に白い長袖のニットを着て
マフラーをくるくるっと巻いて
手袋をつけて
赤と黒のしましまネクタイを適当に下げて
膝丈より少し上の黒いスカートを着て
黒いニーソックスをはいて
茶色いローファーをはいて
白色のドアを開けて外にでる。
「きゃぁ・・・さむぅ・・・」
白い息をハァ・・・っと一息。
今は冬。12月。
そして、あたしは篠田美奈。
高校3年生のマイライフを(一応)心地よくすごしています。
このとてつもない寒さを抜けばと言うはなし。
高校までは約10分。歩きでいける距離。もちろん公立。
ここまで聞けば、まぁメリットだよねぇ。
実はものすんごく最悪なデメリットがあったりする・・・のね。
学校。校門から建物まで結構な距離だ、クソ長い。入学してから毎日思う。
「おはよ~」
適当に挨拶を交わしながら、ゆっくりと歩く。
(えぇっと・・・今日は一限目が数学だったけなぁ・・・
んで、次に・・・)
頭の中で時間割を思い出しているところだった。
「美ー奈ーっっっっ!!!!」
無駄にでかい声。ちっさい幼稚園児が呼んでる、と思えば可愛い。
が・・・しかし。
バフッ
その声とともに背中から抱きつかれる。小さくない、でかい。
「享峰!いきなり抱きつかないでって何回もいってんでしょっ?!」
「いいじゃーん。寒いだろ~?」
「寒いけど、それを心配してくれてるならなおさら離れろ。」
「良いじゃんー」
そう。あの無駄にでかい声の主はちっこい幼稚園児でも
ちっこいおっさんでもなく、あたしより約20cmは高い
高校3年生の若造だ。
あたしよりでかい癖して後ろから抱きついてくる。
結構邪魔だ。まぁ・・・これに慣れてしまったあたしが一番邪魔だ。
教室まで抱きついてきたクソ野郎に肩を組まれ渋々行った。
教室の前まで来て、あたしは「いい加減話しなさいよ。馬鹿」といってみた。
まぁ、案の定即否定で「やだー」と言ってきた。
(ま・・・可愛いんだけどさぁ。)
これが本性なのは一応秘密。
ドアを開け、中に入る。
「おはぁー♪」
「おはよー」
この男女が肩を組まれた状態で入ってくるなんて、
外からみれば「こいつらなに?恋人?」的な感じだ。
が、しかし。このクラス中1の頃から一緒だから
誰もそんな事は思わない。逆に怖いと、これも外から見れば思うだろうね。
「今日も朝から仲いいね~」
席に着いたと同時に赤みがかってる髪のアホみたいな奴に
声をかけられる。
藤原卓馬だ。
「享峰が勝手に抱きついてくるだけよ、あたし関係なーし」
「うっそだぁ。」
「ま。あんたは転入生だから知らないんだろうねー。
自称。だけどね、バーカ」
「馬鹿とは、己!無礼者!表へでぇっ!」
おぉ、見事な武士言葉。って
「馬鹿に馬鹿っつって何が悪いのよ。馬鹿馬鹿カバ。」
「コレでも成績3位だぜ!」
「あたしは1位よ。はん、弱いわね。」
「まけたっ」
この前まではやっていたはん○ゃのギャグをいまだに使うこいつは遅れてる。
「美奈~?英語のこれ、訳してー」
「ん?えーっとね、これは_____」
ニコニコと質問してくるのはさっきあたしに抱きついてきた奴。
あぁ・・・。名前は三重享峰。身長175cmの生意気な身長だ。
「ほぉ。そういうことか!美奈、ありがとっ」
教えてもらった身なのに、あたしの髪をわしゃわしゃとかき回す。
生意気な小僧だ。あたしより身長は高いけど・・・。
「ははっ美奈髪、ぼっさりんだ(笑)」
真後ろでケラケラ笑いだした、黒髪の銀の細フレームめがねをかけている
一見真面目そうなやからは、野田陽平。真面目そうだが、全然真面目じゃない。
まぁ。頭いいけどね。多分。
「享峰にやられたのよ。てか、ぼっさりんて何よ、なんか妙に古くない?」
「んー。さぁ?多分この前の昭和のお笑い芸人集まれぇ的なので
やってたんだろ」
「あぁ。ってどうでもいいわ、まぁ、あたしがいったんだけど。」
陽平と話ながら、ポニーテイルに髪を結ぶ。
あたしの髪は生まれた頃から茶色毛。ていうか、体の全体的に色素が薄い。
「読書の邪魔だけど。」
聞こえてきた声の方向に顔を向けると
茶色と金髪の間みたいな髪の色のチャラそうだけど全然チャラくない
簡単に言うとハーフだ。目も青い。
「皇季はカタイなー、もうちょっとやわらかくなりなよ・・・グハッ」
瞬時に陽平にバチッと皇季の鉄槌。
ちなみに、これの名前は益田皇季。
さて、これでこの学校のデメリットがわかったかな。
・・・・・。
そう、ここは、現共学高。そして、元男子高。
元・・・てか2年?3年?前まで、だ。
ついこの前まで男子高だったこの高校は
この会話の感じからすれば分かると思うが
女子がほぼいない。いや、単純に言えばあたししかいない。
一応中高一貫だけど、中学は共学、高校は男子高女子高なのだ。
そして、女子校の生徒が減ってきたということで共学になった。
なら女子はもっといるのでは?そう思うだろう。
しかし、驚くべき事に共学と知ってしまった、この試験なしで高校に入学できる
中学に通っていた女子は次々に他の高校の試験を受けてしまった。
んで、結局あたしだけとね。正直、悲しい。
まぁ・・・ケドさ。
これでも結構楽しかったりするからさ
意外といいんだけどね?
一応、好きな人も居る事・・・だし?
「え?だれだれ~?」
享峰に聞かれたこと、あったなぁ。そういえば。
ま、いえないけど。
「なんで?」
コレも聞かれた。
そりゃそうよ。
・・・あんただし。
ま、そういうことだから、あたしが通うメリットもあるけど
大きいデメリットがあるこの現共学高.元男子高は
意外と楽しいってことです。
「だれなんだよーっ!」
享峰・・・・。あんたしつこすぎ。
まぁいいよ。もうお話も終るからね、言ってあげる。
「あたしの好きな人は享峰。何か悪い?」
享峰の頬はミルミルうちに赤く....。
「くっ・・・・面白いね」
「な、なにがぁぁっ」
「別に?なんでもないわよ」
-END-