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世界の寵児  作者: もち
私の卵が孵る時
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 近づいて逃げ出されでもしたらと不安に思ったが、おとなしく着替えを受け入れてくれた。体が小さく震えている。やはり寒いのだろう。抱き寄せるとすんなりと腕の中に囲われた。


「こんなに震えて……。暖かいところで暮らしていたのですね。すぐに暖めますからお待ちください」


 一族の女とは比べ物にならないほどか弱い娘だ。先ほども裸を隠すばかりで蹴りのひとつも飛んでこなかった。この子は私が守るべき存在だ。強く抱きしめたくなるのをこらえる。

 服につけた通信具を摘み取り、こめかみに押し付ける。社に仕える召使に、風呂の準備を頼んだ。そうだ、風呂上りには飲み物だって必要だろう。空腹な様子はないが、何事にも控えめな子だから言い出せないだけかもしれない。その用意も言いつけた。何を食べられるのかわからないのだから、まずは種類を多くして好みを探っていこう。


 風呂場に連れて行くのに抱えあげると、しがみついてきた。頼りにされているようでたまらなく嬉しい。ずっとこのままでいたいが、そうも行かない。風呂場に行く途中、召使とすれ違った。すると彼女は腕の中から顔を出し、召使を見ようとした。腕を動かし、服の袖で彼女を隠す。そうしてから召使の後姿をにらみつけた。私とこの子の時間を邪魔するんじゃない。


 風呂場で私は下着だけになると、彼女に服は着せたまま、湯をかけ、風呂に入った。普通は裸ではいるものだが、先ほど恥らっていたのを私は忘れてはいない。しかし、白い服を着せていたためすっかり透けている。まあ、何も着ていないよりいいだろう。

 左の腿の上に乗せ、薄い腹に腕を回し、私の腹に背を押し付けさせる。そうしていても、湯は彼女の肩まであって、しっかり支えていないと溺れてしまいそうだ。

 そうしている間もこの子は一言も喋らず、体をピクリとも動かさないままだが、大丈夫なのだろうか。うつむきがちで、顔が見えない。そんなふうに湯に顔を近づけていてはあぶない。体を触ると暖かくなっているようだったので、もう上がることにした。

 乳白色だった皮膚はうっすら赤く染まっていた。湯に浸かったせいだろうか。以前の寵児の中にも皮膚の色がころころ変わるものがいたと聞いたことがある。もしかしたら同じところから来たのかもしれない。

 手早く濡れた服を脱がせ水をふき取り、服を着せた。今度は赤い服にした。白は透けるから駄目だ。ベールも用意しなければ。彼女を私以外の目に触れさせるのは嫌だった。


 そういえば、名はなんと言うのだろう。できることなら私がつけたいが……。多分、名前を持っているだろうとは思いながらも、名前の候補をいくつも考えていた。

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