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世界の寵児  作者: もち
恋に恋する
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 おはようございます。寝るときに首輪は辛い、これじゃ眠れないと訴えた結果、足首につながれました。紐はベッドの柱にしっかりと縛り付けられています。

 私の体はヘルさんの腕ですっぽり囲まれている。重くはないけどぴったりくっついていて寝返りすら打てず、大変寝苦しい。もぞもぞしていたらどうやら目を覚まさせてしまったらしい。少し眠そうな声で名前を呼ばれた。


「マリカ……? もう起きるのか?」

「う、うん。寝てていいよ」


 この状態じゃどうせよく眠れない。私を放してくれれば寝ていてくれてかまわないのに、ヘルさんも起きるようだ。毎朝恒例のおはようのちゅーをすませて……すま……す、ま……今日は長い。舐めたりすったり朝から元気だ。寝不足と酸欠でいつもより余計にふらふらする。

 ぐったりしていると、もう少し寝ているといいとか言われて、そしたら本当に寝てしまった。次に起きたら昼近かった。寝すぎた。またおはようのちゅー……いけない、無限ループ。


 朝ごはんだか昼ごはんだか分からないものを食べさせてもらいながら、ぼんやりとエルテくんのことを考えていた。クイさんが連れて行ってから、二人とも見かけていないけどどうなったんだろうか。まさか勝手に捨てられてるなんてことは……。


「エルテくんは?」


 不安になって聞いてみると、ヘルさんの目つきが少し剣呑になった。本当に犬嫌いで困る。仲良くして欲しい。


「あれがそんなに気になる?」

「私が、ちゃんとお世話するって、それで置いてもらってるから」

「クイグインネがやってるから問題ない」

「でもね、でも、エルテくんは……私の……」


 なんだろう。ペット? まあそうかもしれないけど、もうちょっと違う感じ。そういえばプロポーズもされたんだっけなあ。恋人とは思えないし、でも大切にしたい感じ。……そうだ。

 これだ、と思って顔を上げると、ヘルさんのお顔が怖かった。ちょっとびくついてしまった。


「あれは、マリカの、なんだ?」

「ともだち! おともだちです!」


 仲良くしたい、大事なお友達ではないかと。ああ、よかった、お顔がちょっと柔らかくなった。ここではあまり人と関わらないできたせいか、あまりお友達といえる存在ができなかった。エルテくんは、多分若いんだと思うけど口調も気軽で親しみやすいのだ。

 これからお店を始めたら、友達もたくさんできるのかな。


「町で暮らすようになったら、皆と仲良くしたいな。楽しみ」

「まだ店をやるつもりだったのか」

「え……うん。だめになっちゃったの?」


 すぐ逃げ出すような子は危なくて町には連れて行けないということだろうか。まあ足輪に紐つけられている状態じゃ町へいくのは難しいだろうけど。この足輪、いつになったらはずしてくれるのかな。


「……私と二人きりが言いといっていたのに」


 すねていらっしゃる。ここはひとつ気合を入れて説得しなければ。


「ヘルさんは旦那様でしょ。友達とは違うんだよ」


 何が心に響いたのかは分からないけど、その日はベッドから出られなかった。

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