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世界の寵児  作者: もち
犬はどこでもついてくる
57/63

 お店を作る宣言をしてから何日かたった。エルテくんに乗っかって遊んでいたところ、クイさんとヘルさんが真面目な顔で話しかけてきた。


「マリカ、店を作る話なんだけど」

「うん」


 エルテくんから降りて、でっかいクッションに座る。目の前に3人も座った。


「やっぱり不特定多数の人間がくる店は危険が多すぎる。予約制の食堂にしたらどうだろう」

「えー……うーん、食堂? そんなに立派な料理は作れないよ。それに、予約するほど人が来るかなあ」

「山ほど来るよ! それに、料理人を雇えばいいだろ。マリカは挨拶に出てくるくらいで十分だよ。ほら、この前都に行って会食があったときも、皆喜んでただろう。マリカに会いたいやつらは多いんだよ」

「えー……。挨拶するだけじゃあんまり仕事って感じがしないし……」

「立派な仕事だよ」


 立派じゃないと思う。私の挨拶なんておもしろくもありがたくもない。


「喫茶店はどうしても駄目?」


 危ないって言うけど、会ったことのある人は皆優しかった。都でも騒ぎになるとか言われたけど、市場の人ごみでも何も起こらなかったのに。考えすぎじゃないかなあ。


「……どうしてもやりたい?」

「うーん……うん」


 クイさんがちょっと険しい顔で念を押してくる。どうしても、って訳じゃない。自分で色々考えてすっかりやる気で夢見てたから、捨てがたいだけなのかも。ちょっと意地になってたところもあったけど、私は頷いた。


「それだったら、翻訳具は返さないといけないけど……それでもできるかい? 話す方はだいぶ上手くなったけど、読み書きは不十分だ。店を切り盛りできるほどじゃないだろ」


 まさか翻訳カチューシャがなくなるとは思っても見なかった。確かにかなりの貴重品だって事は聞いてたけど……。


「世界にひとつしかないんだ。ろくな守りもない場所に置いて置けない」


 ショックだ。今までの警備の人が私じゃなくて翻訳カチューシャを守ってたってことなんじゃないだろうか。そりゃあたしかに、不相応なほどよくしてもらってるとは思ってたけど、私を大事にしてくれてるのかと思ってた。涙が浮かんできた。


「な、泣くほど嫌なら、さっき言ったような店にすればいいだろ。そうすれば別に返す必要もないんだし……ああ、もう、嫌な役目は全部あたしにおしつけやがって!」


 どげし、と結構な音を立ててヘルさんが殴られて、蹴り返して、二人のケンカが始まった。暴力反対。


「うるさい私はマリカが他のやつらに見られるようなことはすべて反対だ写真だって嫌で嫌で嫌で嫌で仕方がないがマリカがやりたいというから仕方なく我慢したんだ」

「マリカの願いをかなえるのなんてあたりまえだろ! 喫茶店だってマリカがやりたいって言うならやらせてやりたいんだ! でもそれがどれだけ危険かお前にだって分かるだろ、だからあたしだってできるだけ希望に沿う形で考えてるのにお前ときたら反対しかしないで本当に従者か従者失格にしてやろうか!」

「マリカを泣かせておいてよく言うな」

「泣かせてるのはヘルベルクランの方が多いね、絶対」

「私のは喜びの涙だ」

「お前の頭のおめでたさには笑っちまうよ。いくらマリカが望んだからってあんな小さな体なのになにいれてんだ」

「女で残念だったな」

「あたしだったらお前より喜ばせられるよアホがっ」


 聞くに堪えなくなってきたのでそろそろやめてほしい。


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