エルテ 1
どうも。マリカさまの奴隷、エルテっす。
奴隷って制度は今ではないはずなんですけどね、まあ、相手はマリカさまなんで。特別です。
いやー、以前お会いしたときとは比べ物にならないほどいい匂いがして我慢できなかったっす。他の男の匂いがしなければもっと良かったんですけど。これからはお側にいられるんで、俺の匂いをいっぱいつけるつもりっす。
しかし種族が違うと発情もしないはずなんですけどね。マリカさまはゲオルに近いんですかね。でもシュムクイエも発情してるみたいだし、どっちなんですかねー。
まあいいっす。
荷物をとりに兵営まで一度戻ったとき、同じゲオルのユオーさんとマリベナさんにも忠告しておきましたよ。あれはやばいって。
「いやー、まじっす。まじやばいっすー。マリカさまの匂いがもーすっごいいいんですよ。これからずっとかいでいられるなんて嬉しいっす。
あ、でもお二人も気をつけてくださいね。マリベナさんは女だから平気かもしれないっすけど、ユオーさん襲っちゃ駄目ですからね。俺は次からはちゃんと合意を取ってからやるんで大丈夫」
「大丈夫じゃないだろう」
「マリカ様に発情したのか? 確かに以前お会いしたときいい匂いだとは思ったが、そこまでではなかったぞ」
「んー、なんかすっごくなってたっすよ。いつからなんですかね。都へ行ったときはなんともなかったんですよね」
都へ着いていったユオーさんに聞いてみる。
「まあ、そうだな……いや、でも……」
「なんだ」
「ちょっとこう……変な気持ちにはなったな。いや、いや、少しだけだ。種族も違うし気のせいだろうと思って」
「駄目ですからね。あれは……」
俺のです、と言いたかったけど、ヘルベルクランさんの顔が思い浮かんだんでやめときました。あの人すっごい顔で睨んでくるし、苦手っす。
「エルテと違っていきなり襲い掛かるようなまねはしない。しかも相手はマリカ様なんだぞ」
正直お説教は聞き飽きたんですけど、普通なら許されないっすよね、たしかに。マリカさまがあんまり無防備なんで、気を抜くとやばいんですよね。気をつけるっす。
まあ、ちゃんとしつけてくれるってマリカさまが言ってたんで、楽しみです。
後日、警護の当番で社に来たユオーさんの様子がおかしかったのを、俺は見逃さなかったっす。やばいっすよねー。これ。