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今回のシリーズ全般において下ネタ多めです。
私は悩んでいた。
都から社に帰ってきて、お別れにおじ様にキスされたのを怒られてしまったのだ。
こっちでも好き、とかそういう特別な気持ちがないとキスしないのかな。こっちでは挨拶代わりなのだろうかと思って今まで何も言わなかっただけなんだけど、怒られるってことは違う……んだよね。
最初のころはいちいち騒いだものだけど、今では抱きついたりキスしたりがすでに当たり前になってしまっている。感覚が麻痺しているというやつだ。駄目じゃないか。
誰とでもキスするふしだらな子と思われてたら嫌だ。
私を好きだからキスするのかな。まあ、嫌いならしないだろうけど、でもクイさんもちゅーしてくるし、おじ様にしても舌まで入れてきたし。恋人じゃないとキスしないなら、告白もなくしてくることはないだろう。好き、とかも、言われてない……。
……言われてないよね? あれ? 言われたかも? 僕っていうのはどういうこと? うーん、でもでも恋人的な好きではない、気がする。付き合ってくれとかはなかったはずだ。私の倍くらい大きい人とお付き合いするなんて考えられないし、向こうだってこんなちびっこじゃあそういう気にならないんじゃないだろうか。でもでもでも。
どうしよう。
「ヘルさん」
腿に腰を落ち着け、太い腕にもたれかかりながら遥か上にある顔を見上げる。穏やかな表情で私を見つめている。最近はあまり恐ろしい顔も見ていない。落ち着いたものだ。
「私のこと、好き?」
こんな甘えた恋人同士みたいな言葉を吐いてどうした私。頑張れ彼の本意を知るためだ。
「もちろん。好きだよ」
間髪いれずに返って来る。口元が緩んで笑顔になっている。この恐ろしい笑顔にもだいぶなれた。コレからが本題だ。落ち着いて行動せよ。
「私たちお付き合いしてるの?」
聞いちゃった。聞いちゃったよ。胸がどきどきする。なぜかこういうときに限って返事が遅い。いつもの電光石火の早業はどうした。あまり焦らされると逃げ出したくなるんですが。
なんか微妙に困った感じで、もしかして見誤ったかな。今までの行動を考えてみたところ好きって恋人的な好きなのかもって思ったんだけど、自意識過剰だった?
「私はすでに番と思っていたが」
「つがい? ……え、え、あ、結婚してたの私たち!?」
「求婚を受けてくれただろう。ずっと一緒にいようと約束した」
「あ、ああああ、あえっ!?」
言ったかな? 言ったかも! それだけで結婚が成立しちゃうの? うそっ!
「わわ、わたしのいたとこじゃ、まずはお付き合いして、それから結婚をですね、するんですよ? 式とかもあげたりして、ね」
「私たちが付き合いというと、ひとときの関係がほとんどだ。私はマリカとその程度の関係でいるつもりはない」
きりりとした顔で言い切られた。
つがい、って……。子どもとか、どうするんだろう。む、むむむむりじゃない? おっ、おっきいし! ぎゃーかんがえるのやめようそうしよう!
「マリカのいたところでは何か儀式が必要だったのか? それはどんなものだろう。こちらでもできるならばやりたいが」
「イエっ! 結構です!」
まずは確認を取り、誤解があるようならそれをとこうと思っていたんですけどね。いきなりとんでもないことが判明してパニックです。
どうしよう。私の悩みがまた増えた。