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世界の寵児  作者: もち
出会い、はじまり
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ウイヴイエルイ 2

 まずはマリカを都か、そうでなくてももっと近い場所に住まわせたい。そうなれば会う機会も増えるだろう。あの場所にいたままでは会うことすらままならない。

 寵児を披露する必要があるのは最初の一度だけ。そのときに都に住みたいといってくれれば一番いいのだが、社はあれだけ不便な場所にあるにもかかわらず、世話が行き届いていた。あまり活発な性格ではないようだし、あのままではマリカはあそこから出てこないかもしれない。

 従者も邪魔だ。特にあの男従者は、マリカをまるで自分のもののように扱っていた。腹立たしい。しかし従者はそう簡単に変えられるものではない。


「マリカの好みがわかればいいんですがね……」


 向こうでは手に入らないものであれば尚良い。そんなものがあればこちらに誘い出すエサにぴったりだ。

 都に来たときは私が接待しよう。接待役を無下にすることは、あの従者もしないだろう。



 キュジィギュジィクランからの報告書が届いた。彼は案外使える男だった。いつも少ないながらも添えられている写真がすばらしい。マリカの楽しそうな様子が伺える。今回の写真はゲオル族と楽しげに戯れている様子だった。他の種族も、これを見れば我々が寵児を大切にしていると認めるだろう。

 報告書には兵営を訪問したときの様子が書かれていた。マリカはゲオルの料理に興味があるようだ。ちょうどいい、社ではゲオルの料理を作るのは簡単ではないだろう。料理人もシュムクイエだったはずだ。

 都に来たときにはゲオルの料理を用意させることにした。服も色々と用意している。着せるのが楽しみだ。



「ウイブイエルイさま、お久しぶりです」


 都へ呼ぶために飛行艇を社へ飛ばす。マリカとは久しぶりに会うが、嬉しそうに近寄ってくる。5日間しかないので、今回は積極的に接触をもつことにした。


「呼んでくださらないので寂しい思いをいたしました。都にいる間は私と過ごしてくださいますね」


 飛行が安定したところで近くに呼び寄せて、嫌がられない程度に体を密着させる。早速ゲオルの料理を用意させると、非常に喜んで食べていた。驚いたのは口移しで食べるのに嫌がる様子がないことだ。小さな子どものように扱われることに不満はないのだろうか。非常に都合がいい。

 私のことを素敵といっていたし、印象は悪くない。


 勉強と称して、翻訳具をはずして喋り始めたときは、あまりに可愛らしくて心の中で懊悩した。早く私のものにしたい。


 しかし、私は少し失敗してしまったようだ。町で人に囲まれるかもしれないという話をしたときマリカは随分動揺していた。なるべく不安を取り除くように取材はすべて断っておいたことなども伝えたが、表情は晴れない。安全には十分注意を払っているので問題はないだろうが、よりわかりやすく護衛をおいたほうがいいかもしれない。



 都にいる間の宿泊場所には、私に与えられた官邸に部屋を用意した。元々賓客をもてなすために広い邸宅を用意されているのだ。実際に宿泊までとなるとマリカが初めてだが、問題はないだろう。

 部屋に通してすぐに、マリカが意外なことを言い出した。


「私、少し考えたんですけど……必要なら、お話ちゃんとします。た、たいした話はできないんですけど!

 で、でも、あの、知らないところで、写真取ったりとか、勝手に書かれたりとか、そういうのがないようにしてもらえれば、ですけど」


 マリカは真面目なようだ。広報の担当は喜ぶだろう。しかし、そうなると色々調整しなければならないため一緒にいられる時間が減ってしまう。……仕方がないか。できるだけわたしの優秀な部下に任せよう。

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