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世界の寵児  作者: もち
出会い、はじまり
36/63

10

 もう都に来て4日目の朝だ。軽く朝食を取ったあと、朝市に連れて行ってもらえることになった。


「騒ぎにならない?」

「ああ、大丈夫ですよ。でも離れたら危ないので、私が抱きかかえて差し上げますね」

「お前は馬鹿か。それは私の役目に決まっている」

「従者殿には聞いておりません。ね、マリカ。かまいませんね」


 可愛らしく小首をかしげたおじ様の、あつーい視線が突き刺さる。お断りしづらいことこの上ない。さすがたらしなおじ様だ。自分の見せ方をよくわかっていらっしゃる。おじ様にだっこされるのは遠慮したいところだけど……都に出てくるのを楽しみにしてくれてたみたいだし、応えたほうがいいのかなあ。



 朝市はずいぶん賑わっているようだった。広場にたくさんのテントが並んでいて、呼び込みの声が飛び交う。

 結局おじ様にだっこされて市場へやってきた。喜んでるみたいだし、おじ様に会えるのはこっちにいる間だけだし……。仕方がない。

 でもおじ様は体が硬くて、座りが悪い。もぞもぞしてしまうけど、しっかり抱えられているから、落とされるようなことはないと思うんだけど。


「なにか気になるところはありますか?」

「あ、あの、あの……よくみえないんです……」


 言おうか言うまいか迷ったけど、せっかく来たのに見えないのはもったいない。水色の布を頭からかぶされてからだにもぐるぐる巻きつけられて、それだけでも視界が悪いのに、周りを護衛の人に囲まれているのだ。皆さんでかいので壁以外の何者でもない。なにがあるのかよくわからない。しかもこれ、すっごい目立ってるんじゃないだろうか。騒ぎになったらどうしよう。


「それでは肩車にいたしましょう」


 一度下ろされて、脇をつかまれるとぐわっと持ち上げられて、右肩に乗せられた。ちょっと高すぎて怖いのですが。しかも少々不安定。頭に両手でしがみつく。必死だ。周りを見る余裕なんてない。


「マリカ、両目をふさがれては前が見えません」

「やだ、おちちゃう! こわい!」

「支えておりますから問題ありませんよ」

「やだぁ! たかいもん!」

「仕様がないですねえ」


 体をかがめて、降ろしてくれた。おじ様ってば笑ってるけど怖かったんだからね!


「ベール、とってもいい?」

「そうですね。見えないのでは楽しくないでしょう。

 ……ふふふっ。高いところが怖いなんて可愛らしいことをおっしゃるのですね」

「おじ様イジワルです」

「おやおや。それではご期待に沿わせていただきましょうか」

「えっ……あ、やだあ」


 あっという間に肩の上に乗せられていた。からかわれているのはわかっているけど、怖いものは怖い。きゃーきゃー騒ぎながらもしがみつくしかない。


「マリカ、おいで」


 ヘルさんが腕を伸ばしてきて、その手にすがろうとしたところ、ようやくおじ様は私を降ろしてくれた。また捕まらないようにヘルさんにしがみつくと、いつものようにだっこしてくれた。なんだか安心する。


 そのまま市場を見て回った。護衛の人は最低限の人数だけ側で、あとは少し離れてもらったので、なんとかお店が見えるようになった。

 食料品が主で、どすーんと大きな塊肉が置かれて売られていたのには驚いた。ここ、テントがあるとはいえ屋外なんですが。干した果物とチーズっぽいものがあったのでそれを買ってもらった。お土産にしよう。



 市場を見たあとは、エーリエー族の使節団の人たちと会って来た。

 なんていうか……若干……失礼な人たちだった。


「あらあらちょうどいい大きさだわね」

「いいね、ぺったんこで」

「もうちょっと足が細ければいいのに」

「色は好きだな。綺麗な黒だ」

「あらー、私はもうちょっといろんな色が混じってる方がいいわあ。青や緑が混じってたら素敵だと思わない?」

「赤もいいじゃないか。黒に映えるよ」


 これで褒められてたらしいのが不思議でならない。

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