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「ダイエットします」
私は宣言した。
「それ以上やせるつもりなのか?」
「駄目だ、折れてしまう」
「でも今度お披露目するんでしょ? そのとき太ってたら恥ずかしいし。運動して、体力つけるのは、悪くないよね」
本当は、あのたくさん食べさせられるのもやめたい。んだけど、そっちは反対されそうなので、せめて運動したい。ここに来てから食べては寝るの繰り返しで、だらだらすごしてるわけで……ちょっとぷよっと、してきたと思う。私のこのぷよっと具合が大好きな人達の意見は受け付けない。
「運動、ねえ……それならまあ、いいかもね」
「危ないだろう。怪我でもしたらどうするんだ」
「部屋にこもってるのも退屈なんだろう。ちゃんと食べて動くなら、あたしは賛成だよ。
動きやすい服に着替えようか」
「うん」
ものすごく心配そうなヘルさんは、とりあえず放っておく。心配するなっていっても心配するだろうし。かといって引きこもってるわけにもいかないんだから、仕方がない。
Tシャツと短パンに似た服に着替える。すこし大きい。本当はクイさんみたいに、ピタっとした着方をするものなんだろうけど、サイズがないんだと思う。ぶかぶかだ。いくつか服を見せてもらったんだけど、どれも子供用でさえ幅が大きくい。あのぐるぐる巻く服だと、そこら辺は調節できるので便利だ。一人で着られないけど。
庭を駆け回り、ボール遊びをした。二人が付き合ってくれたけど、運動能力に違いがありすぎて遊びにもならない。いや、遊んでるんじゃないんだから良いのか。
「警備のひと、見られるの恥ずかしいなぁ」
「あまり離すと何かあったときに役に立たないからねえ。社にいる間はそう悪いことは起こらないと思うんだけど、一応ね。都に行くときはずっと誰かがついてることになるから、少し慣れて欲しい」
外に出るときは、少しはなれたところに警備の人が何人かついてきている。ぷらぷら何遊んでるんだって感じですよね。こんなのにお付き合いさせてごめんなさい。楽しく暮らすのが私の仕事、といわれている。そうするとたくさんマナが作られるとか。でも、好きにしていいといわれると結構困るものだ。
「今度、あいさつに行っていい?」
近くに住んでるって聞いたし、ぶっちゃけ毎日暇なのだ。ダイエットと称して運動ばかりするのもつらい。一日中走りまわるほどの体力もない。
警備してくれてるのがどんな人たちか知りたいというのもある。
「マリカが行くのか?」
「うん。……でかけてみたいな」
ヘルさんが不満そうだったので、ちょっと甘えてみた。擦り寄って腕に抱きつき、おねだり。……小悪魔? いや、恥ずかしいよ。恥ずかしいけど、そんなの気にしてたらここでは生き延びれないのだよ。
「あたしにも」
クイさんが両手を広げて待ち構えている。首にぎゅうとしがみつき、耳元に顔を摺り寄せる。
しかし、私今すごい汗かいてるな……こんなんで抱きつくってどうなの。いやでもそんなの今更だった。二人とも気にしてなさそうだし、まあいい。
「最初の出かけ先としてはちょうどいいんじゃないか? 町に行くより把握しやすいだろう」
「…………そうだな」
クイさんとすりすりし合っていると、脇をつかまれ引き出された。手が大きすぎて、こういうことされると胸に当たってるんだけど、まったく気にされることはない。年若い乙女だと意識されていないというのはどうしたものかなあと思ったりもするけど、気楽ではある。それもどうかと思わないでもない。