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世界の寵児  作者: もち
甘えられると愛したい
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キスをするより甘えたいのヘルベルクラン視点です。

 頬に柔らかい唇が当たる。すこしして、今度は控えめに舌でぺろりと舐められた。

 これは。私のことを愛しているというマリカからの返事か。思わず腕に力が入りそうになり、必死に抑える。こんな細い体では、折ってしまいそうだ。

 もう少し大きくなったらと思っているが、双方合意の上であれば問題ないのではないか。しかしあまりに体が小さすぎるか。ああ、でも、こんなに可愛らしく甘えられると優しくする自信がなくなってきた。


「ぶふっ」


 クイグインネが体を折り曲げて本格的に笑い出した。マリカが不審がっている。いい雰囲気だったというのに、この女本当に私の邪魔しかしない。睨みつけていたら、ようやく部屋を出て行った。


「私、おかしいことしちゃった?」


 おかしいのはあの女だ。マリカが気にする必要はまったくない。しかし少し元気がなくなってしまったので、気分転換に社の中を案内した。

 浮遊艇にのってきゃっきゃと喜んでいるところなど、あんまり愛くるしいので回りに誰もいないか思わず辺りを探ってしまうくらいだ。誰もマリカを見なくていい。その上どこに行くにも一緒に来て欲しいと。もちろん。当たり前だ。一生私と二人きりでもかまわないむしろ私とひとつになってくれ。いけない、おもわずよだれが。

 雑念が多すぎてこのまま運転を続けるのは危険だ。浮遊艇を降り、これからどうするべきか寝室へ二人でこもりきりたいああ駄目だ自分がなにをするかわからないすこしおちつけ


「ヘルさん……おなかが減りました……」


 つないでいた指をちょいちょいと引っ張られ、遠慮がちに言った。なんてことだ。食事の回数や時間を聞いていなかった。姿が似ているからといって私たちと同じとは限らない。うかつな自分を殴ってやりたい。

 ついでに、さりげなく食べたいものを聞いてみると、ごはんやパンといったものの名前をあげてくれた。なにやら料理のことだとはわかるが、どんなものだろう。一生懸命説明してくれるのが可愛い。

 しかし、あまり食べたことのない食べ物だ。ごはんというのは、病気の時にたまに食べたものが似ているように思うが、それほど美味しいものではないが……。

 用意はしたものの、やはり少し違うようだ。他の国の料理なども調べておこう。


 食べた後はのんびりと過ごし、夕方になり、そろそろ食事の準備をというところで、これまたすこし言いにくそうに、お風呂に入りたいと口にした。そのように遠慮などしなくていい。できる限り望みはかなえよう。一日三食、毎日風呂にもはいるとは、ずいぶんせわしない暮らしをしていたようだ。

 しかし風呂は楽しみだ。昨日は恥ずかしがっていたのであまり体を見られなかった。今はもう愛し合っているもの同士なのだから問題はないはず。


「あ、あの、一人ではいりたいなぁー……」


 なぜだ!

 反対していたらなぜかクイグインネと入ることになっていた。一人じゃ危ないのなら誰かとはいる、そこでなぜその女が出てくる。

 本当に本当に本当に邪魔なやつだ。


 食事を整え、部屋で待っていると、ようやく戻ってきた。湯上りで赤い顔をしている。どこかぼんやりとして、疲れた様子だ。なぜこの状態で歩かせる。しかも寝巻きの着付けがゆるい。クイグインネには任せていられない。すぐにマリカを抱き上げた。

 膝に乗せて食事を口に運ぶが、あまり食べない。


「もうすこし食べたほうがいい。早く大きくなってくれ」


 体つきはそこそこ育っているようだったが、まさかこれ以上大きくならないなんてことは……。16年はあちらで育っているわけだからありうる。しかししぐさは幼いし……ああ、悩ましい。

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