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世界の寵児  作者: もち
キスをするより甘えたい
24/63

 疲れてぼんやりのろのろと濡れた体を拭いていると、着替えを終えたクイさんにタオルを取られた。何か言ってるけど、言葉がわからない。髪を洗うのに翻訳カチューシャを取ったからだ。そういえばこれを取ったのは初めてだ。寝るときもつけている。少しは言葉を覚えないといけないのかなあとちらりと思ったけど、こっちの人の名前すら覚えられない私には無理だ。

 服はすこしゆるめに着付けられた。この服も一人で着られるようにならないといけないだろう。いつまでもしてもらってばかりじゃいられない。クイさんが着てるような服なら、一人で大丈夫だと思うけど、ちょっと恥ずかしい……。どっちの服が一般的なのかな。

 翻訳カチューシャは手放せないけど、それ以外はこちらにあわせるように頑張ろう。まあ、そのうちできるようになるだろう。


「ううーん……こんなもんかねえ」


 クイさんは着替え終わった私を上から下まで眺めると、私の手を取って脱衣所を出た。



 部屋に入ると、すでに食事の用意がされていた。入ってすぐヘルさんに抱きかかえられて、ふかふかクッションの上に座った。ヘルさんが。

 私はヘルさんの膝の上です。そうですよね、当然ですよね。なんでこんなべたべたしてるのかよくわからないけど多分こういうものなんだろう多分。

 イオン飲料風の飲み物を飲んで、何が食べたい、と聞かれたらあれがいいこれがいいと指差すだけで、一切私の手は使っていない。私どんだけお姫様。

 肉っぽいものが多いけど、スープや野菜、果物もある。あまり料理に手をかけないところなのかな。塩味がほとんどで、素材の味をいかしてますって感じ。

 ヘルさんとクイさんの二人がかりで口に食べ物を突っ込まれて、喋る暇もない。っていうかもうおなかいっぱい。もうやめてくださいおねがいだから。


「それしか食べないでよく動けるねえ」

「もうすこし食べたほうがいい。早く大きくなってくれ」


 私の成長期はもう終わってると思う。



 もうあとは寝るだけ、という状態で、大きなベッドの上に横になる。私は今一人きりだ。ベッドに明かりを持ち込んで、寝転がって本を読んでいる。クイさんおすすめの恋愛小説だ。

 青い人、シュムクイエ族が、人魚のシェシェシェ族に恋をして、人魚を閉じ込めて水槽で飼う監禁物。最後は人魚に他の人魚の卵?を産ませて、青い人が泣いて喜ぶという……。なんだこれ。恋愛小説じゃないだろう。やっぱり感覚が少し違うんだなあ。

 実際話すときは違和感を感じないけど、書かれた文字の翻訳になるとちょっと意味がわからないところもあった。読むのに疲れてうとうとしていたら、誰かが近くにやってきた気配がする。


「あうぇ!」


 飛び起きた。足をつかんで開かれた。ヘルさんが恐ろしい顔でふくらはぎの辺りをつかんでいる。裾がめくれてぎゃー!


「な、なに……?」

「これは?」

「え、と……なにが……?」


 さりげなく足を閉じようとしたけど、びくともしない。つかまれたところがいたいのですが。


「この赤いのは?」

「お、ふろで、クイさんが……」

「また噛まれた?」

「うん……で、でも血がよってるだけで」

「噛まれただけじゃこうならないよね」

「す、すわれたのかな……?」


 ヘルさんのあまりの迫力に思わず疑問系で返してしまう。すると、するとですね、私の腿の内側の赤くなったところをべろっと……。つめたっ。


「あの、ちょ、ダメ、かも……」

「クイグインネに許して、私を拒否するなんて言いませんよね?」


 敬語怖いです。



 朝目が覚めて、ぼーっとしていると、ヘルさんにべろべろちゅーちゅーされた。まさかこれ、朝の日課になったりしないよね。

 唇が離れると、ため息をついて、指で体を撫でさすられた。昨夜のことはあまり思い出してはいけない気がする。体の表面がじんじんしてあつい。


「綺麗な肌なのに、跡が残ったらどうするんだ。もうあんなことさせるんじゃない」


 あなたも残したように思いますがその点についてはいかが思われますか。


「わかった?」


 はいごめんなさいもうしませんさせません。

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