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世界の寵児  作者: もち
これが夢では終わらぬように
20/63

「好きかも」


 聞き逃せない言葉が聞こえた気がする。思わず聞き返してしまう。

 手のひらに、鼻や唇があたっている。マリカの温かい息がかかってこそばゆい。落ち着いたのか、柔らかい声だった。


「優しいから……」


 私のことを好きだという。

 心を押し殺して慰めたかいがあったというもの。マリカの特別になれるのなら、これからも望むだけ優しさを贈ろう。


「私も好きだよ、マリカ」


 マリカは甘えるように擦り寄ってきて、眠るまで側にいて欲しいなどと可愛い事を言う。朝まで一緒にいるに決まっている。これから毎晩一緒だ。体は小さいがなんとでもやりようはある。色々教えてあげよう。優しく。そう優しく。マリカは優しいのが好きといっていた。

 幸せな未来に浸っていたというのに、クイグインネから通信が入ってきた。


(様子はどうなってるんだい)

(今添い寝をしている。もう寝そうだ)


 マリカを見た。目を閉じて、うっすらと開けたままの口から小さな寝息がもれている。幸せそうな寝顔だ。


(どんな子なんだ?)

(名はマリカ。女だ。体は小さいが姿は私たちに似ている。おとなしくて、かわいらしい)

(あんたは寵児だったらどんなでもそういうんだろうさ。あー、通信で話すのも面倒だ。寝たらちょっとこっちにきてくれよ)

(駄目だ。側にいるように言われている)

(ずいぶん仲良くなったねえ)

(私を好きだといっている。もう少し大きくなったら番にする)

(……まあ……二人が良いならいいんだが……。明日は会えるんだろうね)


 クイグインネは二の従者だ。いつまでも会わせない訳にはいかない。


(明日食事が終わったら連れて行く。それでいいだろう。もう通信は終わらせる。いいか)

(え、あー……まあ、いいか。じゃあ明日な)


 煩い女だが、あまり寵児には興味がないので、私には都合がいい。従者は男女がそれぞれ一人はつくように決められている。私の邪魔をしなければ誰でもよかった。あの関心の薄さがずっと続けばいい。


 薄暗い部屋の中で、二人きり。私は誰にも邪魔されることなく、眠るマリカを眺めて楽しんだ。

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