表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の寵児  作者: もち
過ぎた日の約束
17/63

「何泣いてるんだ。ああ、目玉が取れちまいそうじゃないか。

 あたしがなにか気に触ることを言ったかい? ごめんよ、口が悪いってよく言われるんだ……泣くことないだろ、ごめんよ、ごめんったら……」


 違う、ぐいぐいんさんが謝ることなんて何もない。ヘルさんがいなくなっちゃったのが悪いんだ。私の精神安定剤はどこへいった。

 自分が着ている服の袖を目元に押し付ける。泣いてる顔を見られるのは恥ずかしい。


「ち、ちが……寂しくて、ヘルさんがいないの」

「あたしがいるだろ。ほら、顔を見せて」


 ぐいと上を向かされ、残った涙の跡を舐め取られられた。それ、ここの人たちの作法なんですかね。私も泣いてる人をみかけたらやらなきゃ駄目ですか。


「マリカは味がついてるんだな。美味しい……」


 ほっぺたかじられた。牙が顔に当たっている。何この怪しい感じ。涙も胸苦さもふきとんだ。


「あの、ぐいぐいんさん……?」

「塩気があって、ちょうどいいね」

「ひいい!」


 くびを かじるのは きんし



 助かった! 助かったよ! 私のナイトがきてくれたよ!


「死んで詫びろいますぐに」

「悪かった。いや、寵児ってすごいわ。こういうことかー」


 私にかじりついてたぐいぐいんさんを、ヘルさんが引き離してくれた。助かったけど、そのときのヘルさんの表情はそりゃあもう……。一難去ってまた一難ってこういうことを言うんだ。


「あとあたしの名前はクイグインネだから。覚えてくれ」

「クイでいいだろう。マリカの小さな頭に負担を強いるな」


 ヘルさん何気に私のこと馬鹿にしてませんか。傷つきました。ぐいぐ……間違えた、クイグイン……? クイさんでもういいや。クイさんも悪いことをしたとは思ってなさそうな感じだ。


「生まれたばかりだから、まだ不安定なんだ。少しならと思ったが駄目だな。

 話はもう良いだろう。とっとと出て行け」

「やだよ。独り占めしようったってそうは行かない。あたしだって従者なんだ」

「生まれたときに側にいたものになついて、引き離されると不安を覚える。あの時あの場にいたのは私だけなんだから、私だけがいればいい」

「なんだそれ。そんなの知らないよ! 知ってて黙ってたなヘルベルクランの阿呆!」

「今までさして興味もなかったくせに」

「過去は過去だ。マリカ、今すぐあたしに慣れろ」


 まさにカオス。……なんでこんなことになってるの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ