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時代は2050年代。
2030年代後半に行われた外惑星系の開発は、多くの犠牲を払いながらも、成功をおさめた。
早くも、2040年代前半から外惑星系の資源開発は、商業ベースで採算が取れるようになった。
木星からはヘリウム3を、その衛星エウロパから水を、土星の衛星タイタンからは有機物を、月や小惑星からは金属を採取した
豊富な資源を元に、人類は宇宙開発を進めた。
月には100万人もの人々が住み、木星・土星の軌道上には、各国の大型ステーションが建設され、衛星や小惑星では資源採掘がおこなわれていた。
しかしながら、相変わらず、外惑星開発には、大きな問題があった。
人工冬眠が出来るのは、技術上の制約から、未成年とイレギュラーと呼ばれる一部の大人だけであった。
そのため、外惑星開発の中心は、特殊な訓練を受けた未成年が中心となった。
土星軌道上になる日本の有人巨大宇宙ステーション「キボウ」。
宇宙ステーション「キボウ」は、乗員の98%が未成年であることから通称、土星学園と呼ばれていた。乗員たちは生徒と呼ばれ、学業の代わりに労働していた。
◇ ◇ ◇ ◇
2058年、結城隼人が土星学園に向けて出発してから、三か月後、地球圏で大きな政変があった。
月住民による独立宣言と地球との戦争だ。
突発的に起こったものではない。
月住民による独立運動は前からあった。
宇宙においては、国・民族・人種による違いよりも、地球人と宇宙出身者との考え方の違いの方が大きくなって行った。
さらに、月住民は、体力不足から、地球での活動が困難であった。それはコンプレックスを生み、現実問題として、地球で活動できない者も多く、地球に愛着が持てない者も多かった。
経済的には、企業の幹部は、地球出身者ばかりで、月は地球の支店だった。地球で活動できないために、出世の道を断たれたルナリアンも多く、不満が燻っていた。
月出身者を中心に、自治を求める声は日に日に大きくなって行き、数年前から急進的独立派と治安部隊の衝突が、たびたび起きるようになった。
宇宙植民地からの資源や資材に国力の基礎を依存する国々の弾圧は熾烈を極めた。
弾圧は、さらに多くの反発と確執を生み、ついに独立戦争にまで発展してしまった。
地球圏から遠く離れた木星や土星のステーションは、どちらにつくのか、選択を迫られた。
多くのステーションは、中立を宣言したが、月政府はそれを認めなかった。
現在、木星学園は制圧され、自分が到着した後、難民が流れて来るらしい。
さらに、土星学園への討伐隊が向かっているという。
木星学園や土星学園の先生方や生徒の7割以上が地球出身者であった。
民主的な自治を行った場合、ルナリアンの過激な主張が通る可能性は低い。
そのため、木星学園では、進攻以降、ルナリアンを中心としたスペースノイドによる独裁体制が引かれていた。
そのため、徹底抗戦と行かないまでも、土星学園では、自治を維持するために、武装化を進めることとなった。
先輩たちは、生産活動をしないといけない。
悲しいかな。生産者として未熟な1年生を兵士にするのが一番。
俺の学園生活は、いったい、どうなるんだろう。