第八話 街を目指して。はい、ケルコプター!
異世界に来て四日目。
今日はついに人のいる場所を目指してみようと思う。取り合ずイースが言っていた東の大きな街を目指すつもりだ。
「それじゃあ皆。今日はよろしく頼むね」
一緒に行くのはウィンドホーク四姉妹のみんなだ。
イースは道案内があるから当然として、他の三匹は道中の私の護衛をしてもらう。
空の上を行くとはいえ、この世界にはモンスターがいるらしいからね。
ウィンドホークはそこそこの強さらしいから、東側に出る空のモンスターぐらいなら問題無く撃退できるらしい。
という訳で出発だ!
頭にケルコプターを付けて上昇する。ウィンドホークたちに合わせてかなりの高度まで上がったけど、さすがに怖い。あと寒い。今度は温度調節とかも付与して改造しなきゃと思ったぐらい。
そうして私はダンジョンを飛び出した。
ちなみにダンジョンの入り口はしっかりと閉じてある。
羊には悪いけど、変なのが入って来られても困るからね。
土魔法を使って入り口を覆うように土壁を設置してきた。
食料は牧草がちゃんとあるし数日ぐらいなら大丈夫だろう。
今回はどっちかというと下見が目的で、あまり長居するつもりはないのだ。遅くとも三日ぐらいで帰って来ようと思ってる。
『それにしても。この速度で飛行できるなんて、ご主人様の道具は凄いですね。一朝一夕で作ったとはとても思えません』
空を飛びながらイースが感心した様子で話しかけてくる。
「私がっていうより、これを考えた漫画家先生がだと思うけど。それに君達だって全然本気じゃないでしょ?」
昨日測定した限りだと、このケルコプターの速度は最大およそ時速百キロメートル。この点だけなら本物以上の性能がある。
だけど、このケルコプターはバッテリー式ではない。
使用者である私から常時魔力を受け取って稼働している。
どっちがいいかと聞かれれば、私だったらバッテリー式の方が良い。だって魔力を消費すると疲れるから。ここら辺も次回への改善点だと思っている。
まあつまり、ウィンドホークの速度に比べれば月とすっぽんぐらいの差があるのだ。
『いえいえ。確かに私達のような翼を持つ種族ならともかく。ご主人様がそれを出来るから凄いのです』
「そう? まあじゃあ素直に受け取っておくよ。ありがとう」
『はい! まさかご主人様と共に飛べるとは思ってもみませんでしたからね。私の身体がもう少し大きければ乗せて飛ぶことも出来たのですが……』
「そうなるともはや小型飛行機だね。まあ君達はそれでいいよ」
『そうですか……いえ、私達四匹でかかればあるいわ――』
四匹の鷹に紐を付けたゴンドラを想像する……うん。どこか既視感があるわ。やっぱりやめとこう。
そんな感じで雑談をしながら森の上空を飛んでいたときだった。
『――来たよ』
ウエスが警戒した声でそう告げながら、私の横に来た。
すると他の二匹も、反対隣と後ろについて囲まれた状態になる。
状況が分からず混乱していると、正面に黒い影が見えた。
徐々に近づいて行くとその正体が、大きな鳥だということが分かる。うちのウィンドホークよりも大きい。少なくとも普通の鳥ではなさそう。
「あれって」
『トロル鳥。図体がデカいだけの木偶の棒よ。そのくせ好戦的なアホなつなの。マスター。ちょっと片付けてくるわ』
「あ、うん」
私が返事をするが早いか、ウエスは単身でトロル鳥とやらに向かって飛んでいく。
比べてみると分かり易いけど、軽くウエスの倍はあるんじゃないか?
あれ本当に大丈夫なのか……そう不安に思ったけど、他の三匹は動く様子が無い。
ということはウエス一匹で問題無い、てこと?
そういえば森で狩りもしてるし。あれぐらいなら大丈夫ってことなんだろうか。
考えているうちに、ウエスが急上昇して一気に天高くまで昇っていく。
そこからは一瞬だった。
ウエスがもの凄い勢いで天から降りてくる。
だけど見えたのは最初ぐらい。
次の瞬間には血を流しながら落下を始めるトロル鳥の姿と、いつの間にか同じ高さに戻ってきていたウエスの姿があった。
少ししてズシーンっという音が森から聞えてくる。
「……え? もう終わり?」
『そうですね。トロル鳥程度ならあんなものでしょう』
「そ、そうなんだ。へ~……」
口の端がひくひく動くのを感じながら、そう返事を返す。
さすがは鷹がモデルのモンスターだ……あんなのが空からいきなり襲い掛かってきたら何も出来ずに死ぬ自信がある。
というかウィンドホークってこの世界に普通にいるんだよね?
わあー、絶対生息地域には近寄らないでおこう。
ちょっとだけウィンドホークの強さに引いていると、ささっとウエスが戻って来た。
『マスター、あれどうする』
「え? どうするって――ああ確かに。じゃあ悪いんだけど、ここまで持ってきてもらえる?」
『分かったわ。ちょっと待ってて』
すると森に降りて行ったウエスがトロル鳥の死体を加えて戻って来た。
「ちょうど作っておいてよかったぁ。それじゃあ回収するね」
背負っていたバックパックから小さなポーチを取り出す。
それをトロル鳥に近づけると、ポーチの口があり得ないぐらい大きく開きトロル鳥の身体を飲み込んだ。
これぞ昨日、ケルコプターのスペアと一緒に作っておいたニューアイテム……!
これから人間の街に行くわけだから、もしかしたら何か買いたいものが出てくるかもしれない。だけど手荷物が増えるのは嫌だ。荷物が多いと帰りが面倒になるし。
そこで考えたのが、何でもないってしまう例のポケットだ。
でも、それは失敗に終わった。
私のイメージが足りないのか、それとも付与魔術のレベルが足りないのか。ただ感覚的に何をしても成功しそうにない気がしたから、取り合ず今回は見送った。
それで代案としたのが、どんな場所からでも自由にものを取り寄せる事が出来るとりよ◯バッグだったのだ!
仕組みは非常にシンプル。
あのポーチの中はダンジョンの二階。新しく作った保管庫に繋がっている。あのトロル鳥はポーチを通してダンジョンに送られたという訳だ。
ケルコプターよりも簡単に作ることが出来た。
イメージとしては何とかの七つ道具的な感じ。
だから当然、他にもちょっとだけ道具を作ってきてある。
そうしてトロル鳥を回収した後、再び出発した。
森を抜けるまでに他に五回ぐらいトロル鳥の襲撃を受けたけど、全てウィンドホーク四姉妹が瞬殺してくれたから特に問題無し。
森を抜けたところで地面に降りて休憩を挟み、少ししてからまた出発した。
ダンジョンを出発してから、かれこれ一時間ぐらい経った頃。
『見えてきましたよご主人様。あそこです!』
進行方向に大きな街が見えてきた。
ここに来るまでに幾つか村っぽいのはあったけど、あれはレベルが違う。ちゃんとした都市だ。中央には大きな城っぽいのがあるし、案外あそこには王様なんかがいたりするのかも。
たぶん入り口らしき門の前に人の列が出来ている。
私はその列の最後尾に降りて、そのまま列に並んだ。
「あの~」
「ひっ――な、なんでしょう」
「この列って街への入場待ちの列で合ってます?」
「そ、その通りです」
「そうですか。ありがとうございます」
どうやら間違ってなかったようだ。
前に並んでいたのは中年ぐらいの男の人。私と話し終えるとすぐに視線を逸らして前に向き直ってしまった。
……ちょっと配慮が足りなかったかな?
ウィンドホークみたいな強そうなモンスターを引き連れて声をかけられたら怖いわな。おじさんには悪い事をした。多分、今は私と話すのは難しいかもだから、またご縁があったらお詫びをしよう。
おっと、そうだそうだ。
「さすがに全員を連れて入ると邪魔になるかもだから、イースだけ連れて行くね。ノース、ウエス、サウスは外で待っててもらえる?」
『承知しました』
『え~、私も街に行ってみたいんだけど~』
『おっけー! また後でね!』
『分かったわ。でも次は私を連れて行って。ほら行くわよ、ノース』
飛び去って行く三匹を見送った後は、大人しく列に並んで順番を待つ。
待ち時間の間に、街に入ったあとのことを考える。
とりあえず地理に関する情報は最優先で欲しい。地図が手に入ると完璧だ。お役所みたいなところがあればそこに行けばいいし、無かったら……まあ何かしらあるでしょ。本屋とか図書館でもいいし。
というか無事に街に入れればいいんだけど。
もし入るのにお金が必要とかだったらまずい。あと身分証とかパスポートも無いから不法入国者扱いされたら詰む。
そうなったら全速力で逃げよう。
それでもっと小さな村か、もしくは南の方面から攻める方にシフトすればいい。
そうしているうちに、ついに私の順番が回って来た。
「お待たせいたしました。この冒険者の街『ガレンシア』へはどのような御用で?」
「ちょっと観光をしに来ました。街を色々見て回りたいと思ってます」
さすがに素直に情報取集なんて言わない。言葉のイメージがあんまり良くないから。
あと普通に疑問なんだけど、門番さんたちの対応がやけに丁寧な気がする。前のおじさんとかには「いいだろう。通ってよし」とか砕けた感じで話してたのに。なんで私だけ敬語?
「なるほど。そちらの魔獣はあなたの従魔でしょうか? 登録証を付けていないようですが」
「ああ、ごめんなさい。私ここら辺に来たのが最近で、この土地のルールにあんまり詳しくないんです。もしかしてこの子を街に入れるのマズイですか?」
「いえっ、そんなことはありません! でしたら街にある冒険者ギルドで従魔登録をすれば問題ありません。ただ念のために我々兵士が同行させていただきます」
「あ、じゃあお願いします」
そんな感じでちょっと問題はあったものの、無事に街に入ることが出来た。
特にお金とかパスポートも必要なかったのは驚いたけど助かった。
その代わりなのか、謎の装置を触って検査を受けたけど。なんでもその人の犯罪歴を調べる道具らしい。
仕組みはさっぱりだけど、犯罪歴の有無によって赤と緑に光るんだとか。私はもちろん無いので緑に光った。
さすがは魔法がある世界。秘密道具っていう発想が無くても、それに近い物を作って使っているらしい。
これは街の中にも色々あるかもしれない。
ちょっとテンション上がってきたかも……!
そうして門で対応してくれた門番さんに、そのまま街の中を案内されていた。
「……ところで、なのですが」
「はい?」
「キヨミズ様は、高名な冒険者か魔法使いなのでしょうか?」
前を歩いていた門番さんから妙な質問が飛んできた。
「えっと、別にどっちでも無いです。強いていうなら学生、もしくは無職です。ちなみにどうしてそう思ったのか聞いても?」
「そうだったのですか。いえ、街の外に空から降り立った者がいると聞いて。そんなことが出来るのは、およそそうした方々だと思ったのです。これは失礼しました」
「いえいえ。それより、空を飛ぶのってそんなに珍しいですか?」
「そうですね。魔法で飛ぶにしろ従魔の力を借りるにしろ。それだけの技量、魔獣を従えるだけの力があるということですから。並大抵の人間には空を飛ぶなど不可能ですよ」
「そうだったんだ……」
ケルコプターだって思ったよりも簡単に作れたからこれは想定外。魔法がある世界だからと油断していた。
それで門番さんの対応が丁寧だったのか。
こっちだとそれだけで芸能人というか、凄い人扱いされる訳ね。
てことは前に並んでたおじさんが怖がってたのは、イース達だけじゃなくてそれもあったのかも。いやマジで悪いことしちゃったな。
「――と、着きました。ここが冒険者ギルドです」
そこは二階建ての大きな建物だった。
ここで従魔登録っていうのをしておけば、イースも大手を振って街を歩けるいや飛べるようになる。
ここに来るまで、結構視線感じたんだよねぇ。ちょっと視線疲れするぐらいに。てことは後で他の三匹も連れてこないといけないな。
そうして建物の入り口をくぐった瞬間。
「なんでだよっ!!」
中からそう甲高い声が聞こえてきた。
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