第七話 秘密魔道具 第2号
取り合えずウィンドホークたちには、私のテント前まで来てもらった。
暗くなってきたから明かりを囲んで、私だけ椅子に座らせてもらう。
ちなみに明かりに関しては私のお手製だ。外に落っこちていた石を拾ってきて付与魔術で光るようにした。いや付与魔術ってマジで便利だわ。これはほんやくコンニャクの件が無かったとしても手に入れて良かったと思う。
「さて。それじゃあ順番に話を聞かせてもらおうかな」
四匹のウィンドホークたちには出発する前に名前を付けた。
それぞれ、
北を偵察するのが『ノース』。
南を偵察するのが『サウス』。
東を偵察するのが『イース』。
西を偵察するのが『ウエス』。
我ながら分かり易くていい名前だと思っている。
四姉妹みたいなもんだし、統一感があっていいでしょ。
そう。何故か指定した訳でもないのに全員が雌だったのは未だに疑問だ。無意識的にそう考えてるのかもしれないけど、原因は定かじゃない。今度そこら辺も実験してみるしかないね。
ちなみに最初に作ったのが東担当のイースだ。
イースが真面目な女性って感じの印象があったように、それぞれにもしっかり個性があった。ここに関してもびっくり。
可能性としてクローンみたいに全部同じ個性の個体が作られることも考えたから。性格にも統一性とか規則性は無いから、ランダム要素が強いんじゃないかと今のところは勝手に想像してる。
そして今回。人里を見つけてきたのは東西南の三匹で、北のノースは見つけられなかったらしい。
『東はここから五分ほど飛ぶと森があります。森を抜けると小さな村が。その先に街がありました。人間はざっと見ですが、千人以上はいたと思います。小規模の村に関してはぽつぽつと点在していたような感じですね』
「森があったんだ。うんうん、そこの街が中心都市っぽい感じなのかな? 情報収集ならそこが良さそうかも」
『マスター、イースだけじゃなくてウチの報告も聞いて! えっとね、南にも森があったよ。で、その先に大きな街とかがあって、暫く飛ぶと海があった!』
『じゃあ私も。西は小規模な集落が点在してる感じだったわ。大きな街ってほどの規模は残念ながら見つけられなかったわね。というかアイツ等、私を見て矢を撃ってきたのよ? まあ当たるはずもないけど、もう西はいやよ』
イースに続けてサウスとウエスも報告をくれる。
ウエスが攻撃を受けたってところはさすがに肝が冷えた。怪我は無いってことだから良かったけど、西側は危険かもしれない。万が一があっちゃいけないから、西の偵察は慎重にしなくちゃな。
機嫌が悪くなったウエスの頭を撫でて宥めつつ、聞いた情報をコピー用紙にざっくりと書いてまとめる。
「ふむふむ……ノースの方は人はいなかったんだよね。地形はどんな感じだった?」
『それがね~、あんまり遠くまでは行けなかったんだよ~。空を飛ぶモンスターが多くて危なかったんだよね~。取り合えずここからでも分かる山があるってことしか分かんなかった~』
「なるほど。山の方は危険、と。ノースが無事に帰って来てくれて良かったよ。次からは北と西の偵察は考えないとね。せめてやるなら安全策を講じないと……」
そうして、それぞれの話を聞き終わったので報告会は解散とした。
それから四匹を作ったばかりの森に案内する。
反応はおおむね好評だった。自分が使う木を選んだり、さっそく木の上に巣を作ろうとしてたり。
ただウエスだけは『普通に家が欲しい』などと贅沢を言っていた。
他の三匹はそんなこと無いらしいけど……しょうがない。
魔力に余裕が出来たときに鳥小屋を作る約束をして、一旦このまま我慢してもらうことになった。
テントに帰って来ると、さっき四匹から聞いた情報を改めて精査する。
「まさか四方を森に囲まれてるとは思わなかったなあ。というか森に中心になんでこんな開けた場所があるんだか。しかも馬鹿みたいに広いし……まあいいや。それより調査の候補地は、やっぱり東か南かな。あとはどっちにするかだけど――」
ケルビムの上司から与えられた知識がある。
その中には邪神の残滓によって汚染されてるらしい地域の情報もあった。
「海側にも幾つかあるし、やっぱり南から攻めた方がいいか。それとも逆に東に行ってそっち側の情報を確定させた方がいいか。うーん、決定打が無いな」
今必要なものはなんだろう?
周辺に関する情報は当然として、他に何がある?
あって困らないのはダンジョンの保有魔力だよね。補充する手段は色々あるけど、これは別に東でも南でもどっちでもいい。というか判断がつかない。
他だと、衣食住はわりと揃ってるんだよなあ。
そこら辺はダンジョンマスターの力が便利すぎて本当にありがたい。
うーん…………
「……どちらにしようかな~♪」
結果、運に任せることにした。
「言う通り~♪――東か。じゃあこっちで決定」
さて方向が決まったところで、まだまだ問題は山積みだ。
最優先は移動方法である。
今いる平原を抜けて、さらに森を抜けるまでは絶対に一日じゃ済まないのは明白だ。私には夜通し森を歩き続けるような趣味は無い。
だからこの長大な距離をなんとか早く踏破する術が必要なのだ。
「ここは秘密魔道具の出番かな?」
やはり困ったときは秘密魔道具で解決しないとね!
長距離移動と聞いて思い浮かぶのは、主に二つある。
一つはどこにでも繋がるドア。
ただしあれは、ドアにマップを登録しておかないといけない欠点がある。ここは異界の惑星だ。当然正確な場所を記した地図なんてある訳ない。つまりこれは没。
てことはもう一つ、頭に付けて飛ぶ竹とんぼってことになるんだけど……
「あれって実際にやったら首に全体重かかるよね。間違いなくぽっくり、ていうかぽっきり逝きそう。ああでも反重力で飛ぶタイプもあったっけ。揚力を発生させるタイプよりもそっちの方が安全か? てすると必要なのは――」
仮に反重力タイプで作るとしよう。
反重力で浮くことに関しては付与魔術でなんとかしよう。けれど移動はどうするか。あの小さいプロペラで三百六十度、全方位をカバーできるイメージが出来ない。イメージが出来ないってことは付与魔術でも難しい。
やっぱり本物の完全再現は難しい……
ここは私なりの解釈も加えて作らなきゃダメだな。
「てすると浮くのと移動するのは完全に別物として考えるべきか。ん? それだと一つの中に二つの機能を押し込めることになる?……厳しいな。だったらいっそ各パーツごとに分けて付与を施してやれば――」
暫く考えて方針は立った。
ただし今日はもう魔力がスッカラカンだから作るのは明日だ。
おやすみなさい
「……いまいち」
結局、昨日と同じように羊にベッドになってもらって寝た。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
明けて翌日。
ウィンドホーク四姉妹は今日はお休みだ。
昨日はしっかり働いてもらったからね。それに飛行アイテムが完成したら一緒に来てもらうから、その間はのんびりしてもらおう。
ただ森の方に獲物を狩りに行きたいらしかったので、それは普通に許可した。鷹って肉食だったはずだからね。さすがに食べられるためだけにモンスターを作るのは気が引ける。羊をご飯として差し出す訳にもいかないし。
そんな訳で今ダンジョンにいるのは私と羊どもだけ。
「魔力も溜まったし。早速やっていきますかね!」
道具の製作を始める。
まあでもさほど難しいことをする訳じゃない。
パーツ分けしたそれぞれに、異なる効果を持つ付与を施していく。そしてそれを一つに組み上げて完成だ。
部品に関しては、スキルスクロールを使って手に入れた『土魔法』でなんとかした。
適当に作った金属の塊を土魔法を使って素手で成形する。工業高校生でもない私には加工技術なんて無いからね。粘土ぐらいに柔らかくして、素手で形を整えるぐらいしか出来ないのだ。
出来上がったのは、まあ不格好だけど辛うじて最低ラインってところ。
なるべく道具自体には負担がかからないようにするから、一先ずはこれでその場を凌ごう。
街にいったらこういうのを加工してくれるお店を探すのもいいかもしれない。
そうして出来上がった部品に付与を施す作業にうつる。
まずは頭に直接くっつける部分。ここには私の思念を読み取る付与をする。これがないと発揮する効果の切り替えが出来ないからね。
それから読み取った思念を各パーツに伝達する付与。
反重力を発生させる付与――と、ここで問題が発生。
ほんやくコンニャクの時と同じで付与が発動しなかった。
つまり付与魔術のレベル不足が原因だ。
結局これを成功させるのに『付与魔術Lv8』にまでする必要があった。思わぬところで三千も魔力を消費しちゃったよ。
まあでもそれ以降の付与がやりやすくなったからよしとしよう。
それから移動したい方向と逆に風を発生させる付与。自分にかかる風圧を防ぐ付与。それからプロペラを回転させる付与。頭に吸着させる付与などなど……全てのパーツへの付与を完成させる。
これらの付与を施したパーツを組み上げた結果。
出来上がったのは四枚羽のタケ◯プターだった。
二枚羽に出来なかったのは、私の力量不足。
もっと精進するか、上手い方法を考えるかしたい。
「さすがにこれをタケ◯プターって呼ぶのはダメだな。別物ってかパチモンだし。うーん……四枚羽飛行ユニット、あ。そういえばケルビムって羽四枚だったよね。よし! じゃあケルコプターにしよう!」
出来あがったばかりのケルコプターを持って外に出る。
さあ実験をしようじゃないか!
まずはケルコプターを頭に付けていくつかの付与を発動させる。
引っ張って簡単には頭から落ちないのを確認。
そしていよいよ、反重力の付与を使ってみる。
「お?……お。おぉ!」
ふわり、と。身体に感じていた重さが消えた気がした。
その場でちょっとジャンプしてみると、そのまま上に上がったきり地面に戻らない。私の身体は宙に浮きっぱなしになった。
いい感じ、いい感じ! じゃあ次は移動だ!
前に向かって進みたいと念じれば、背中側に吹き出す風が発生する。その反動で私の身体は前へと進んだ。草原の上を滑るように移動する。
最初は弱くから。そして徐々に風の威力を上げていく。
「あはは! なにこれ楽しい!!」
すると私は、まるでスケート選手のように地面の上を滑ることが出来るようになった。
「成功だね! これなら長距離の移動でも行けるでしょ! あとは壊れてもいいように幾つかスペアを作って。そうすると出発は、明日かな――うひょー、魔法最高! 秘密魔道具バンザイ!」
それから暫くの間、ケルコプターの調子を確かめる――という名目で遊びまくった。
途中からウィンドホーク四姉妹も帰ってきて一緒に飛んでみたり。めちゃめちゃ楽しかった。
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