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ONE MORE TIME  作者: 月丘 翠
高校生編
6/18

変わったことと変わらないこと

京都らしい町並みが続いている。

たくさんの可愛らしい小物や京都の美味しそうな銘菓などが店先に並んでいて、見ているだけでテンションが上がって来る。

外側がウサギ模様のちりめん生地で作られた小物入れが、目に入った。

手に取ってみると、ますます可愛らしい。

とはいえ、金額を見ると・・・


「2500円・・・」


32歳の自分なら迷わず購入していたが、今は女子高生。

財布の中をのぞき見て、そっと棚に戻した。

高校生は不便だ。


ふと隣にいるはずの大吾を見ると、いなくなっている。

小物入れに夢中になっている間に、別の場所に移動したらしい。

「ったく・・・」

グループの子たちに、大吾を探すと伝えて離れた。


「・・・何してるの?」

大吾はやべという顔をしてこっちを見ている。

細い路地裏の階段で腰かけてタバコに火を点けようとして、ライターに手をかけている。


「・・・頭から水かけられたくなかったら、ライターをしまってくれる?」


黙って鞄にライターとタバコを片付けると、シャキッと立ち上がった。

「・・・行くよ」


今の大吾との歳の差は15歳。

危なっかしい大吾を見ると、つい口出しをしてしまって、まるで親と子供のようになってしまう。

昔はどちらかというと、何でも突っ走ってしまいがちなすずを大吾がいさめることが多かった。

読んだ本に感化されバックパッカーになって、ガンジス川に飛び込みに行こうとした時は、いかに無謀で危険なことかこんこんと説教された。

「インドまで俺の手は届かないから、俺の手の届く範囲にいてくれ」と言われて、胸がトキめいたなんてこともあった。


でも今は―


すずの後ろを不服そうに歩いている。

仲良くなるどころじゃないなと思いながら、ため息をついた。


しばらく歩くと、清水寺が見えてきた。

清水寺は1,200年以上もの昔に建てられた由緒正しい寺だ。

清水寺には様々な歴史上価値のある建物や仏像があるが、その中でも一番有名なのは清水の舞台だろう。高さ約13メートルの木造舞台で、様々なドラマやアニメなどで使われている。そして女子たちの目的地は地主神社だ。清水寺の境内の中にあり、縁結びの神様とされている。


「うわぁ・・」


清水の舞台に実際に上がると、くらくらするような高さだ。

端の方へ行くことすら憚られる。

そんなすずを横目に大吾は平気そうな顔で端まで行って、下をのぞき込んでいる。


「高いところ苦手なのか?」

大吾がニヤニヤしながら、手招きをしている。

「べ、別に苦手ってわけじゃ・・・」

少し近づいたところで、ぐっと腕を引かれて、舞台の端が近づく。

「わぁあああ」思わず声がでる。

そこで、パッシャッと携帯で写真を撮られる。


「仕返しだ」


ニヤっといたずらっぽく大吾が笑った。


「もう!」とすずが言っても気にする様子もなく、「怒るなよ」と言ってスタスタ歩いていく。

大吾はこういういたずらをすることが昔もあったなと懐かしくなった。


集合時間になり、バスへ乗り込んでいく。

「またいない・・・」

辺りを見回しても大吾がいない。

「仕方ないな」と探しに出ようとしたタイミングで大吾が走って戻ってきた。

「川嶋!時間を守れ」

担任にどやされながら、バスに乗り込んで座った。

駐車場の近くに喫煙所があったから、きっとタバコでも吸っていたのだろう。

全く困ったものだ。

あの頃も身体に悪いからとタバコをやめることを何度か提案したが、タバコだけは最後までやめさせられなかった。

2025年を生きる大吾もタバコを吸っているのだろうか。

またため息をついて、バスの外を眺めた。


たくさんの場所を巡って疲れたのか、ホテルに着くなりベッドで横になるとぐっすり寝てしまった。

晩御飯もどうやら置いていかれたようで、目覚めて時計を見ると3時を指している。

変な時間に起きてしまった。

他の女子を起こさないように、ホテルのカーテンを少し開けてみる。

この時間だとさすがに真っ暗だ。

もう一度寝ようかと思ったが、目がすっかり覚めてしまっている。

少しホテル内でも散歩するかと静かに廊下へ出た。

ホテルの中もさすがに静かだ。

ロビーに降りると、自販機で買ったコーヒーを開けた。


「ふぅ」


「・・・不良かよ」


突然声がして振り返ると、大吾が立っている。

「突然声かけられたらびっくりするじゃない」

大吾はすずの向かいのソファーにすわると、同じようにコーラを開けた。


「乾杯」

「・・・乾杯」


ごくりと飲むと冷たいコーヒーが喉を通る。

「晩飯食ってなかったんじゃねぇ?」

「あ、うん。寝ちゃってたから」

タイミングよくお腹の虫がないた。

「・・・これ」

大吾がビニール袋を差し出してきた。

何か食べ物が入っているようだ。

「腹の足しにはなるだろ。じゃあな」と袋を渡すとさっさと部屋へ帰って行った。


「おいしそ」

袋を開けると、お菓子が入っている。

お菓子を取り出して食べると、空腹なのもあいまってかなり美味しく感じる。

「あれ?」

袋の奥にお菓子以外にも何か入っているようだ。

そっと取り出すと、あのウサギ模様のちりめんで作られた小物入れだ。

「大吾・・・」

この入れを手のひらの中で大事に抱きしめる。


「やっぱり大吾は大吾だ」

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