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ONE MORE TIME  作者: 月丘 翠
大学生編
29/29

未来はー

目を薄ら開けると、光が眩しい。

白い天井が見えてきた。


身体を動かそうとすると全身が痛い。

声を出したいが、上手く声も出ないし、体も動かせない。


「あ・・・あ・・・」


誰かいる。

(あれは看護師さん…?)

看護師はこちらが見ていることに気づくと、驚いた顔で近寄ってきた。

「私の声、聞こえてますか?」

聞こえているがうまく返事が出来ない。

その後看護師は何かを言って、慌てて走って出て行った。


私は一体どうしてしまったのか。

独特な消毒液の匂いに、看護師・・・ここはきっと病院だろう。

あの後、倒れて運ばれたのかもしれない。

それにしても、全身が痛い。

倒れたくらいでこんなことになるのかなと考えているうちに、バタバタと足音がしてきた。

医師が身体を触ったり、声をかけてくる。

なんだかしんどくて答える気にならなかったので、「聞こえます?」という医師の問いにだけ、頷いた。

その後すぐになんだか眠くなってきて、目を閉じた。


次目を覚ますと、ずいぶん痛みも治まって、話せるようになっていた。

「気分はどうですか?」

看護師は笑顔で話しかけながら、布団を整えてくれる。

「ちょっと気持ち悪いです」

「そうですよね。お熱もまだありますね。もう少ししたら薬も効いてきますからね」

そういって点滴をつなぎ直すと去っていった。

だんだん意識がはっきりしてくると、状況が見えてくる。

腕を触ってみると包帯で巻かれているし、足は骨折しているようだ。

頭にも包帯が巻かれていて、頬にもガーゼが当てられている。

どう考えても風邪で倒れたわけではないらしい。

その後なぜ病院にいるのかはすぐにわかった。


「すず」

泣きながら両親と妹がやってきた。

その姿をみてすぐに未来、いや現在に帰ってきたのだとすずはすぐにわかった。


「助かって本当に良かったわ・・・」


母はすずの手を握って優しく撫でた。


「あの事故の中よく生き残れたもんだ。さすが俺の娘だ、本当によかった」

父の涙を初めて見た気がした。

どうやらバスの事故の後に戻ってきたらしい。

事故は相当悲惨なものだったようだ。

「姉ちゃん、リハビリとか私付き合うから安心してね」

すずはコクリと頷いた。

その後すぐ面会が終わりとなり、両親と妹はまた来るからと言って帰って行った。


大吾とはどうなったんだろう。

なんだか状況を理解するのに時間がかかって、大吾のことまで聞けなかった。

また今度来た時に話せばいいだろう。

そう思って、すずは少し寝ようと目を綴じようとした時、また誰かやってきた。

眠くて瞼が重い。

うっすら目を開くと、スーツ姿の男の人のようだ。

誰だろう・・・


「すず」


聞きなれた声、優しくて温かい―。


「大吾・・・?」

ぼんやりとした意識の中声をかけると、手をぎゅっと握ってくる。


「良かった。本当によかった」

手が何かで濡れている。

涙だろうか。

すずは目を開くと、スーツ姿の大吾が隣に座っていた。


「大吾」

「大丈夫か?って大丈夫じゃないよな」

「大吾、また会えてうれしいよ。もう会えないと思ってた」

「何言ってんだよ。俺らはずっと一緒にいるって約束したろ?」

大吾の左手の薬指には指輪がついている。

「指輪・・・」

「すずの結婚指輪は俺が預かってるから、安心しろ。退院したらまたつけてやる」

「私、大吾と結婚できたんだ・・・」

そういうと涙が溢れてくる。

「大丈夫か?事故のショックか?」

大吾は慌てている姿が何だか面白くて愛おしくて笑ってしまった。


2年後―

「すず、おかえり」

母親が嬉しそうに玄関までくると、すずのお腹を撫でた。

「大きくなったわねぇ」

「もう9ヶ月だからね」

「大吾くんもここまで送ってくれてありがとうね」

「いえいえ、去年の事故のことがあったので、絶対俺の車で送るって決めてたんで」

そういって愛おしそうに、すずのお腹を撫でた。

「生まれる前から親ばかになりそうだもんね」

「俺とすずの子だからな、かわいいに決まってるし」

「まぁまぁ。早く上がって上がって」

母に促されて、リビングに座ると、ニュースが流れている。

バス事故から1年で地元のニュースになっているようだ。

「もう1年なんだね」

「そうよ、本当にすずが助かって良かったわ」

「亡くなった人もいたんですよね」

「そうなのよ・・・」

亡くなった人の名前がニュースで流れている。

「え・・・」

思わず声を上げた。

亡くなった人の中に“成瀬太陽”と名前がある。

「すずは入院してたし、言ってなかったんだけど、同じバスに成瀬先輩が乗ってたんだよ」

「そうなんだ・・・」

「今度、お墓参りにいこうか」

「そうだね」

すずはそう答えて、大吾の手を握った。



「すずちゃん・・・」

成瀬はいつものようにサークルの集まりに向かうと、すずが端の方で何やら考え事をしているようだ。

「なにかあった?」

「それが旅行に行く約束を友達としてるんですけど、お金が足りなくて・・・アルバイトしなきゃいけなくて・・・」

「それならいいバイトがあるよ」

成瀬は微笑んだ。


(今度こそ、すずと―)

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