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ONE MORE TIME  作者: 月丘 翠
大学生編
26/29

未来の思い出と塗り替える過去


(この格好で良かったかな)


電車に揺られながら、ぼんやりと窓の外を見た。

白のカットソーにジーパンというラフな格好にしてみた。


大吾と付き合っているわけでもないのに、なんだか罪悪感を感じてしまう。

でも、大吾は―

後輩と楽しそうに歩いている姿を思い出すと、胸がキュッと痛くなる。

30超えて若い子に嫉妬とか恥ずかしい…


(なんのために過去まで戻ってきたのよ・・・)


私は大吾とやり直すために未来に来たのだ。

過去を変えるためにー


そう思うが、電車はすずの身体を待ち合わせの場所まで運んでいく。

ここまできたら仕方ない。

すずは立ち上がると、電車を乗り換え、しばらくすると最寄駅に着いた。

改札を出ると、成瀬が立っている。

成瀬はこちらに気づいたのか、こちらに手を挙げている。

そちらに向かおうとして、ぐっと手を引っ張られた。


「大吾・・・!?」


振り返ると、厳しい顔つきの大吾が立っていた。


「ど、どうしたの?実験は?」


大吾は何も言わずに近づいてくる成瀬を睨みつけている。


「おはよう、川嶋くん」

「おはようございます、成瀬先輩」


成瀬は余裕の笑みを浮かべている。

「今日は君が来れないから代わりに来たんだが、どうしたんだい?」

「用事が終わったので」

「ふーん、それにしてもよく集合時間がわかったね」

「それは・・・」

大吾が指差す方向を見ると、物陰に隠れた恵美が見える。

「恵美!?」

「恵美ちゃんもいたのか」

「お、おはようございまーす」

似合いもしないサングラスをかけた恵美が気まずそうにやってきた。


「折角だから、4人で行こうか。川嶋くんも来れたみたいだしね」


そういうと、すずの握った大吾の手を振りほどき、すずを引っ張って歩き出した。

すずが大吾に向かって振り返ると、鬼瓦のような顔をして後ろを恵美と共についてきていた。


この遊園地は夢の国と言われている。

実際夢のようなテーマパークで、通常であればすごく楽しい場所だ。

ただ我々は・・・

マイペースに楽し気に話す成瀬に、かなり不機嫌な大吾、気を使って笑うしかなく頬の筋肉がつりそうだ。


「恵美、ちょっとトイレ行こう」

すずは恵美を連れて、一旦その場を離れた。

二人が見えない場所までくると、恵美が「ごめん」と頭を下げた。

「これはどういうことなの?」

「すずが遊園地に行くのをためらっているのになかなか断らないもんだから、大吾から行動すれば断れるかなぁと思ったんだけど・・・そしたら、何時集合だ!とかってすごみだして・・・」

「しゃべったのね」

こくりと恵美は頷いた。

「まぁいいんだけど・・・。この空気どうしたものかな・・・」

「それに関してはお詫びにってわけじゃないけど、私に任せなさい」

恵美はそういうと、胸をぽんっと軽くたたいた。


トイレから戻ると、1つ、2つアトラクションに並んで乗ると、少しだけ雰囲気が柔らかくなってきた。

さすが夢の国だ。


「ねぇ、お腹空いたよね?」

恵美がそういわれて時計を見ると、13時を過ぎている。

「あそこの店空いてるかな?成瀬先輩、一緒に見に行きましょ」

「いや、どうみても混んでるように見えるけど」

「もっと近づいてみないとわからないですよ!私達で見てくるから、すずと川嶋はそこで待っててよ」

恵美はそう言いながら強引に成瀬を引っ張っていく。

ちらっと振り返って恵美はこっちを見てウィンクをする。

二人で行って来いということだろう。


「大吾、行こう」

「え?あ、いいのか?」と戸惑う大吾の手を引いてすずは走り出した。

少し離れた場所まで行くと、ベンチに座った。


「はぁはぁはぁ・・・」

「いいのか?二人のことほっといて」

「うん、大丈夫」

「そうか」

「今日、実験大丈夫だったの?」

「あぁ。昨日徹夜した」

「徹夜って身体大丈夫なの?」

「俺の身体は丈夫だからな。一晩くらい大したことはない」

「・・・良かった」

「え?」


「大吾と一緒に遊園地に来れて良かった。ずっと大吾と来たかったから」


大吾と遊園地に行く約束は、以前にもしたことがあった。

それはあの別れた原因となった喧嘩のきっかけだった。


あの日、久しぶりに会って遊園地に行って昔のように仲良く過ごしたいそう思ってすずがチケットを取ったのだ。

でもその日、大吾は約束の時間になっても来なかった。

たくさんの家族やカップル、大学生の友人グループなどがワイワイと楽しそうにゲートをくぐっていく。

1時間、2時間と時間は過ぎていく。

携帯の表示を見ても、何のメッセージも来ていない。

大吾に何かあったのかもしれない、そう思うと不安で仕方なかった。

あと10分したら来るかもしれないと待ち続けて、気づくと待ち合わせから5時間が経とうとしていた。

そこでやっと連絡がきた。


“今日は仕事でいけない。ごめん”


すずは怒りやら悲しみやらで感情がごちゃまぜになって、涙がでてきた。

夢のゲートがぼやけて見える。

「大吾のバカぁ・・・」


そんなこともあったなと未来のことなのに思い出みたいでフッと笑ってしまった。

隣で大吾が不思議そうな顔でこちらを見ている。

「大吾、思いっきり楽しもう」

すずは大吾に手を差し出した。

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