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ONE MORE TIME  作者: 月丘 翠
大学生編
25/29

嫉妬心


「だからお願いしたのに・・・」


すずは天を仰いだ。

「悪かったよ」

大吾は少し落ち込んだ声で小さく頭を下げた。


「予定空けてねってお願いしてたよね?だってすっごく楽しみにしてたんだよ?遊園地」

「すまない。実験がまだ終わらなくて・・・」

大吾が申し訳なさそうにぺこっと頭を下げた。


「まぁ大吾の性格的に実験に手を抜くなんて出来ないもんねぇ・・・」


もったいぶったように、じとっと大吾の顔を見ると、すずはニカっと笑った。


「まかない1回分で手を打とう」

ホッとした様子で大吾は息を吐いた。


「了解」

「今回だけだからね?」

「おぅ」

大吾は手を挙げると「じゃあ俺授業があるから」と去っていった。

去っていく大吾の背中を見ながらため息をついた。


「・・・残念だな」

近くのベンチに座って、遊園地のチケットを見つめた。

「それ、どうしたの?」

振り返ると、成瀬が不思議そうな顔で立っている。


「あ~・・・遊園地のチケットです」

「遊園地行くんだ、いいじゃん」

「今週末行く予定だったんですけど、一緒に行く相手に予定ができちゃって行けなくなっちゃいました」

「それは残念だね」

そう言いながら、成瀬は隣に座った。


「あげますよ、先輩に」

「え!いいの?」


成瀬は驚きながらチケットを受け取った。


「一人でいくのも寂しいですし」

「じゃあ、俺と行こう」

「え?」

成瀬はにこっと笑うと、1枚を差し出される。

受け取るのを躊躇うと、「俺とは嫌?」と聞いてくる。

そんなこと言われて断るなんて出来るはずもない。

すずが受け取るのを満足気に見て「またサークルで」と歩き出した。


「え、あの!先輩!」


成瀬に声をかけるが、立ち止まることなく、ひらひらと手を振って歩いて去っていった。

「どうしよう・・・」

すずはさっきより深いため息をついた。


「すず、なんか悩んでる?」

アルバイト中に恵美が声をかけてきた。

「うん、まぁ・・・」

「どうしたのよ?」

大吾は相変わらず笑顔ではないものの、テキパキと料理を運んでいる。

「それが・・・」


すずが成瀬と遊園地に行く話をすると「えぇ!」と恵美が声をあげた。

「すいません!」と驚いてこちらを見るお客さんに謝ると「もう」と恵美をたしなめた。

恵美は小さく「ごめん」と言って、すぐにお客さんに呼ばれてその場を離れた。

そこからは忙しくなって恵美と話すことなく、閉店時間となってしまった。

仕事終わりに恵美に少しだけお茶しようと誘われて、アルバイトが終わると駅前のカフェに向かった。


「ふーん、そういう流れでね」

「そう」

恵美はカフェラテをふぅふぅと息を吹きかけ、「やるなぁ、成瀬先輩」と言って一口飲んだ。

「一応断ろうと思って、メッセージ送ったんだよ。周りに変に誤解されても困るだろうし、私じゃなくて他のお友達誘ってくださいって」

「そしたら?」


「誤解されても困らないって」


「負けないねぇ~、さすが先輩。でもその断り方ならそう言われるよね。自分が誤解されたら嫌なんだって言わなきゃ」

「確かに・・・でもなんか言いづらいっていうか」

「でもイヤなんでしょ?大吾に誤解されるの」

「・・・うん」

「じゃあちゃんと断るしかないんじゃない?」

「そうだよね」

「大丈夫。ちゃんと話せばわかってくれるよ」

「うん。そうだよね」

すずは今度直接断るぞと心に決めて、ぐっとコーヒーを飲んだ。


翌日になって、大学の講義を終えると、サークルの集まりへ向かった。

そこには成瀬がいるはずだ。こっそり話す機会もあるだろう。

そこで断れれば万事OKだ。

サークルへ向かう途中に大吾が歩いているのが見えた。


「大吾・・」と声をかけようとして、すずは立ち止まった。

大吾の隣には背が低めの可愛らしい女の子が立っている。

あれはカメラサークルの女の子だ。

女の子が嬉しそうに身振り、手振りを使いながら話をしていて、それを大吾がうんうん頷きながら聞いている。

大吾がふっと微笑んでいる。


すずはくるりと向きを変えると、その日は少し迷って家に帰ろうと駅に向かった。

それからも大吾が他の女の子と楽しそうにしている姿が浮かんで、サークルから足が遠のくようになった。

大吾からはサークルに来ないのかと連絡がきたが、体調がよくないと一言返すだけで終わった。

こんなことで嫉妬するなんて、32にもなって何をしてるのかと思うが、気持ちは収まらない。

そうこうしていると、もう明日は遊園地に行く日だ。


「どうしよ」


部屋のベッドで横になりながら携帯を見つめた。

すると、メッセージ通知が届いた。

開いてみると、成瀬からだった。

明日の集合時間と場所が書いてある。

体調不良だと断ることもできるだろう。

でも大吾にそこまでして義理立てする必要はあるのだろうか。

どうしたものかと返事に迷っていると、さらに成瀬からメッセージが来た。


“明日思いっきり遊んで、憂鬱な気持ちを吹き飛ばそう。絶対後悔させないからさ”


すずは、少し躊躇いつつ“楽しみにしてます”とメッセージを返した。


翌日は目覚めてカーテンを開けると、天気はすこぶるよい。

白のTシャツにジーパンに着替えると、玄関に向かった。

「こんな朝早くから今日は大吾くんとどこに行くの?」

母は欠伸をしながら、そう尋ねてきた。

「・・・大吾じゃないよ」

「え?」

「何でもない。いってきます」

すずは家を出ると、最寄り駅へ向かった。

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