初恋と再会!
(スースーする・・・)
こんな短くしてたっけ、と思いながら、スカートの裾をぎゅーっと引っ張りながらバス停で並ぶ。
今は高校生なのだからこれくらいいいのかもしれないが、どうも恥ずかしい。
バスに乗り込んで、駅に向かう。
移り変わる景色を見ながら、自分に一体何が起こっているのか考えてみた。
最後の記憶は、突然バスが加速して山道をバスごと落ちたということだ。
もしかして、事故が原因で昏睡状態になって夢をみているとか・・・それなら目覚めないとまずい。
自分の頬をつねってみるが、痛い上に隣に座るサラリーマンに怪訝な顔をされるだけで、現実は変わらない。
考えても仕方ないかとバスが降りる頃には、流れに身を任せることに決めていた。
最寄り駅に着くと、見たことある人物が手を振っている。
「すずー!おはよ」
親友の恵美だ。
現代の恵美は、今や2人の子持ちの主婦だ。
一昨日の電話では、毎日子育てて寝不足だとぐったした声をしていた。
しかし今目の前にいる恵美は、高校の制服を着てはつらつとした笑顔でこっちに手を振っている。
「恵美、おはよう」
そういえば高校時代は恵美と一緒に高校に向かっていた。恵美は駅の近くに住んでいるので、駅で待ち合わせていた。
「あのさ、変なこと聞くんだけど」
「うん、なに?」
「あの今日って何年の何月何日?」
「はぁ?」といいながらも「2011年の5月30日でしょ?」と笑いながら答えてくれた。
「そっか」
「どうしたの?」
「いや、別に」
恵美は何の違和感もないようだ。
やはり私だけこの時間帯にタイムスリップしたようになっているらしい。
「変なの」
そんな会話をしていると、電車が着て二人で乗り込んだ。
電車の中は、ガラガラだ。
東京の満員電車に辟易していたので、「快適だな」と思わず声が出た。
「どこがよ、こんな田舎の電車」
そういって、恵美は椅子に座った。
電車で座れるだけありがたいということをこの時の恵美は知らないのだ。
電車で20分ほど揺られて、高校の最寄り駅に着くと、さらに懐かしい景色が広がっていた。
「うわ~商店街だ」
思わず声を上げる。
恵美が怪訝な表情でこちらを見ている。
「あ、ごめん」
この商店街は活気があったし、優しい人たちが多かったので大好きだった。
しかし、数年後に近くにショッピングモールがでて、この商店街は無くなってしまうのだ。
ほとんど店でシャッターがしまった状態になっているのを見た時、かなり寂しい気持ちになったのを覚えている。
商店街を抜けて、少し歩くと我が母校が見える。
佐土原高校は、この地域では3番目くらいの偏差値の高校で、可もなく不可もなくという感じの高校だ。これといって特徴はないが、女子の制服が可愛いということで女子には少し人気があった。
久しぶりの母校に足を踏み入れる。
何も変わっていない。
タイムスリップしているのであれば、あの頃の高校に来ているのだから当然なのだが、懐かしい気持ちになる。
「じゃあ、また放課後ねん」と恵美は自分の教室へ行ってしまった。
昔の記憶を頼りに3-4の教室に入る。
「席どこだっけ・・・?」
さすがに席までは覚えていない。
「どこの席だっけ?」と聞いて、大丈夫か?という顔をされてしまった。
昨日まで普通に自分の席に座っていただろうから、かなり怪しくうつっただろう。
笑って誤魔化しながら、教えてもらった席に座った。
嬉しいことに窓際の席だ。
ふぅと息を吐いて、座った。
窓の外からはグラウンドが見え、その先には山とそのふもとの街が見える。
うちの高校は学年が上がるごとに上の階になる。
小高い場所に立っている上に、1階は職員室や音楽室などがあるので、高3になると4階からの眺めが見える。
都会の綺麗な街並みでも海が見えるわけでもなかったが、私は山々が四季の移り変わりで色を変えていくのを見るのが好きだった。
「この眺めをまた見えるなんてね」
ふとグランドに目をやると、男の子が1限目のチャイムがなりそうな時間に悠々と歩いている。
学ランの下のシャツに真っ赤なTシャツをきて、ズボンは腰まで下げている。
(あれは・・・)
私は隣の席を見た。
懐かしい風景が蘇ってくる。
かつて彼は隣の席に座っていた。
初恋の相手―。
胸が高鳴る。こんな気持ちになったのは何年ぶりだろう。
きっと今私の顔は赤くなっているし、鼓動も早い。
あと少しできっと彼がくる・・・そう思っていたが、彼は4限目のチャイムが鳴っても教室には入ってこなかった。




