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サンライズ・コード ――夜明けを奪還せよ  作者: 波浪


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第二章 サンライズ計画

通信から、三日後。


ユウは指定された場所に立っていた。


都市第七層・旧地下鉄跡。

使われなくなって久しい、

夜よりも暗い場所だ。


「……完全に罠だな」


独り言は、

壁に吸い込まれて消えた。


それでも、

足は止まらなかった。


理由は単純だ。


――あの光が、

頭から離れなかった。


地下ホームの奥。


一つだけ、

灯りが点いている。


人影。


そして、

銃口。


「動かないで」


澄んだ声だった。


若い。

だが、

迷いがない。


ユウは、

ゆっくり両手を上げる。


「歓迎の仕方にしては

物騒だな」


「生きて帰れるだけ

親切だと思って」


灯りの下に現れたのは、

黒いコートを着た少女だった。


年は、

ユウと同じくらい。


短く切った銀色の髪。

左目に、

細い光学ライン。


人工視覚――

強化人間。


「あなたが、

ユウ・カミヤ」


断定だった。


「……そうだけど」


少女は銃を下ろさない。


「私は

ミオ」


一拍、

間を置いてから続ける。


「《サンライズ計画》

実行部隊所属」


その言葉で、

空気が変わった。


「実行部隊?」


「ええ」


「あなたは“鍵”。

私は“刃”」


冗談めかして言うが、

目は笑っていない。


「……で、

その計画とやらは?」


ミオは、

少しだけ考えた後、

言った。


「世界を、

朝に戻す」


あまりに、

簡単な言い方だった。


地下施設は、

想像以上に広かった。


旧政府の研究区画。

夜明け消失以前に作られ、

そのまま封鎖された場所。


「ここが

《サンライズ計画》の中枢」


巨大なスクリーンが、

闇を切り裂く。


そこに映し出されたのは――

太陽の内部構造。


ユウは、

息を呑んだ。


「……太陽は、

消えていない」


ミオが、

頷く。


「正確には、

“隠されている”」


夜明け消失。


それは、

自然現象ではなかった。


人類は、

太陽の可視領域に

巨大な干渉フィールドを被せた。


理由は――

エネルギー。


太陽光は、

人類にとって

最大の資源だった。


だが同時に、

制御不能でもあった。


「夜にした方が、

管理しやすかった」


ミオの声は、

淡々としている。


「電力。

労働時間。

監視社会」


「夜は、

都合が良かった」


ユウは、

拳を握った。


「……じゃあ、

世界は

“選んで”

夜にしたのか」


「そう」


否定は、

なかった。


《サンライズ計画》。


それは、

干渉フィールドを破壊し、

太陽光を地表へ

取り戻す作戦。


だが。


「成功確率は?」


ユウが問う。


ミオは、

一瞬だけ目を伏せた。


「三割」


「低すぎるだろ」


「だから

“鍵”が必要」


彼女は、

ユウを見る。


「あなたが掘り起こした

旧世界データ」


「朝の記録」


「そこに、

フィールド構造の原型が

含まれていた」


ユウの背筋が、

冷たくなる。


「……知らなかった」


「でしょうね」


ミオは、

少しだけ笑った。


「でも、

あなたがいなければ

私たちは

何もできない」


沈黙。


遠くで、

機械音が響く。


「もし成功したら?」


ユウは、

静かに聞いた。


「世界は、

朝を取り戻す」


「失敗したら?」


「……」


ミオは、

答えなかった。


代わりに、

こう言った。


「朝が戻れば、

夜に救われていた人は

居場所を失う」


闇で生き延びた者たち。

夜の経済。

夜の秩序。


「だから、

敵は多い」


その時。


警報。


赤い光が、

施設を染める。


「来た」


ミオが、

銃を構える。


「誰が?」


「夜を守る者たち」


彼女は、

振り返らずに言った。


「ユウ」


「なに?」


「あなた、

もう戻れない」


銃声が、

地下に響く。


「でも」


ミオは、

一瞬だけ振り向く。


「夜明けを

見たいなら――

前に進むしかない」


ユウは、

息を吸った。


そして。


夜しか知らない少年は、

初めて――

朝へ向かって走り出した。

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