プロローグ 世界は、夜明けを失った
世界から「朝」が消えたのは、
誰かが怒ったからでも、
神が裁いたからでもなかった。
それは、
人類が“夜に慣れすぎた”からだ。
最初は、ほんの違和感だった。
日の出が、少し遅くなる。
曇りが続く。
人々は言った。
「気候変動だろう」
「よくあることだ」
だが、
ある日を境に――
太陽は昇らなくなった。
時計は朝を示す。
だが空は、
夜のままだった。
政府は発表した。
「太陽活動の異常により、
可視光が地表に届いていない」
科学者は言い換えた。
「理由は分からないが、
いずれ戻る」
だが、
戻らなかった。
一週間。
一ヶ月。
一年。
人々は、
夜の中で生きることに慣れた。
街はネオンに覆われ、
昼という概念は
“歴史”になった。
ただ一つだけ。
世界のどこかで、
ごく短い瞬間、朝が戻る場所があると
噂されていた。
それは
「サンライズ・ポイント」と呼ばれた。
真偽は不明。
行った者は、戻らない。
それでも。
夜明けを見たという証言だけは、
確かに残っていた。
そして、
その夜明けを――
人為的に奪い返す計画が、
極秘裏に始動していた。
コードネーム。
《サンライズ》




