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猫とのご縁、おつなぎします。~『あわせ屋』ミケさんと猫社の管理人~  作者: 香散見 羽弥@コミカライズ版『夜の聖女』7/17配信開始!


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42.めぐり逢い


 その様子を商店街の路地裏(ろじうら)から見つめる影が二つ。


 ミケとアメだ。



「皆いい笑顔になったわね」

「……そうだな」



 猫社に訪れた人々が、こうして笑顔で集まっている。

 ミケはその光景を見る日が来るとは思っていなかった。



 だってミケにとってあわせ屋の仕事は感謝されるようなものではなかったから。


 報われない魂の為に動く。

 それがあわせ屋のありようで、迷い猫を帰すのはその付属業務みたいなものだと思っていた。



 けれど……。



「アイツにとってのあわせ屋は違ったんだろうな」



 ミケの視線の先には笑顔に囲まれて微笑む紡生の姿があった。


 陽だまりにあるのがよく似合う、その顔をまぶしそうに見つめる。



「――アイツにとってのあわせ屋はきっと人を、誰かを笑顔にするための場所なんだ」



 勇気づけ、気持ちを繋いで、言葉を届ける。

 それが紡生にとってのあわせ屋なのだ。




「誰かを笑顔にしたいと願う人は多いわ。でも実際に行動で示せる子は本当に少ない。長く生きてきたあたしでもぱっと思いつくのは紡生ちゃんと、後はあの人かしら」

「……そう言えば、あの人もそういう人だったな」



 ミケは懐かしそうに目を細めた。



「アイツとあの人は奇妙(きみょう)な共通点があるよな。あの人が言っていた言葉をアイツも言っているのを聞いたことがある」




『一つ一つは小さなことでも巡り巡って大きな幸運になるかもしれない。だからやれることがあるのならやってあげたい』



 アズキの想いを黒永に伝えに行くときに言っていた言葉が(よみがえ)る。


 ミケがその言葉を聞いたのは二度目だった。



「あの人もアイツもバカだ。だが……嫌いじゃない」



 ミケはふっと笑った。

 アメもそんなミケに微笑みを向ける。



「ねえミケ。なんであの人と紡生ちゃんはそんなに似ているんだと思う?」

「あ?」

「それはね、魂の形が同じだからよ」



 ミケは思わずアメを凝視(ぎょうし)した。



「それは……まさか」

「うふふ。猫社はね、()()()の縁を繋ぐ場所。んであたしはそこの神の使い。そしてあなたは仕事で失った徳を取り戻した。だからつなげてあげられる縁があったの。()()()()、お分かり?」



 アメは意味ありげに笑うだけで、その縁が誰とつながっているのかの断定はしなかった。

 けれどミケには十分伝わった。


 再び、顔を上げる。

 猫社からは参拝者(さんぱいしゃ)と別れた紡生たちがこちらへ向かってきていた。



 パチリ。



 視線が合うと紡生は途端に嬉しそうな笑みを浮かべて手を振った。



「おーい、ミケさん。アメちゃん~! お酒とお菓子いただきました! みんなでいただきましょ~!」



 両手にお礼の品を抱え大きく手を振る紡生を、ミケはまぶしそうに眺めた。



「あれ。ミケさん、どうかしました?」



 ぼうっと見つめられた紡生は、ミケの顔を覗き込むように首を傾げた。


 温かい光をたたえた、芯の強い目がミケを見つめる。

 その光景が過去の記憶と重なった。






 ああ、そうだったのか。





 ミケはずっと待っていた。


 自分の罪と向き合い、神のもとで徳を積んでいるのもすべてはそのためで……。

 けれどどれほどの時が過ぎてもあの人の生まれ変わりが現れることはなかった。


 だから彼女は自分に会いたいと思っていなかったのだと諦めていた。



 それでも――




「――ずっと近くにいたのか」



 会いにきてくれたのだ。

 会いたいと思ってくれていたのだ。


 ミケはようやく気がついた。そして柔らかく微笑む。



「……おかえり」

「え?」

「いや。何でもない。言ってみたくなっただけだ」

「ふーん? 変なミケさん。まあいいや。早く行きましょ! 今日は宴会ですよ!」



 紡生はワクワクとしながら屋敷へと歩いていく。


 その途中、ふと思いついたように振り返った。




「ただいま!」





 ミケの琥珀色(こはくいろ)に映った紡生は満面の笑みを浮かべていた。



 紡生はなんとなく言っただけかもしれない。なんの変哲もないあいさつだ。


 けれどミケにとっては何より欲しかった言葉だった。

 ミケはまぶしそうに目を細めてその光景を見つめた。




 ――ああ、本当に




「……よかった」

「え?」

「アンタがいてくれて、よかったよ」




 そのとき、ざあっと風が吹いた。

 二人の間を桜の花びらが舞い落ち、花弁が視界を埋める。



「強い風だったね! ……で、私が――何? ちょうど風で聞こえなくて」



 空に舞い上がった薄紅色を見つめていた紡生は首を傾げた。

 あまりにもキョトンとしていたので、思わず笑ってしまった。



「別に。聞こえなかったのならいい」

「えー? 気になるじゃん。教えてよー!」

「またいつかな。それよりほら、早く行くぞ」

「え?」

「え? じゃない。行くんだろ。あわせ屋に」



 紡生の隣へと足を進めたミケはすっと手を差し伸べた。

 出された手とミケの顔を交互に見ていた紡生は、やがてその手を取った。



「うん! 行こう!」



 今度はミケがキョトンとする番だった。



「……荷物をもつって意味だったんだが」

「え!? あ、そ、そうなの!? ご、ごめん」



 慌てて離れていこうとする紡生の手を握り返す。

 驚く紡生の腕を引き、歩き出した。



「ええ!? ちょ、ミケさん!?」

「ま、たまにはいいだろ。ほら。荷物も渡せ」

「なになに!? 今日のミケさんなんか変だよ?」

「うっせ。そういう気分なんだ」



 ミケと紡生は荷物を分け合い、並んで歩いていく。

 繋がった縁が切れてしまわないように。しっかりと手を繋いで。




ここまでお読みいただきありがとうございました!

以上で完結となります!


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