分けた骨。片羽の蝶々
夏。
「来たぞ〜」「元気でしたか?」私たちは小さな墓石に話しかける。
キホの墓だ、本当は家族と一緒の墓に入れてあげたかったけど、カネタによると「んー、嫌!」とキホが言っていたらしいから、私が出せる範囲で小さいけど墓を霊園の隅っこに建てた。
「カネタ、次の派遣先決まったぞ」「ナナは転職が決まりましたよ」
私たちは、初めの印象が最悪だったけどこの夏まで共に生活して、キホとどう別れるか2人で考えた結果がコレだった。
私は転職、カネタは次の派遣先が決まったらこの関係を解消しようと。
「墓にはさ、半分入れて残りはさ私とアンタでペンダントにして持っておけば喧嘩しなくて済むでしょ」
墓のデザインのパンフレットにペンダントのデザインのパンフレット、ダイニングテーブルはしばらくそれで埋まっていた。
2人で手を合わせて、お供え物も片付けて。
霊園から出ようとしたその瞬間、聞き覚えのある声に呼び止められた気がして振り返った。
「……キホ」
私が呟いて、カネタも振り返る。
幻覚かもしれないが、そこには元気になったキホが笑っていた。
私は元気になれて良かったと零したその時初めて泣けた気がした。
でも、ケジメはケジメ。
私は逃げ水のような陽炎のような元気になった彼女へ「じゃーな!そっちで待ってろよ」と泣き笑いしながら手を振ると彼女は頷いたような気がした。
私たちはそれを見て、霊園を後にした。
蝉時雨の中をカネタと私は喋りながら歩いて帰る、2人の胸元には片羽の蝶々のペンダントが煌めいていた。