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無題弐
急げ 花が枯れる前に
瞬間のこと 貴女が私を見た時
唇は雨の清きに打たれる桜の真珠
それが言う――私が言う前に
クレバスと裂ける貴女の細指
それが持つ――私ではない物を
肉と肌、私を狂わせる柔なる楽園
それが在る――私の在る奥底に
華よ 貴女の顔が私を絞め殺す
無き日々の面影を再び灯す
華よ 貴女の顔が臓腑を抉っている
鼻骨 眼球 唇 肌血管 白い すべすべとした 柔らかい肉 歩行
存在の霧に濡れる性――言葉!
私の心臓に手をかける、貴女の指先が、私を引き裂きながら!
見てはならない
死んでしまわぬためにだ 花よ
殺すかもしれない ただ生きていて欲しいから
どうして私を見るのですか
花よ 貴女に摘まれたい
花よ 貴女がずっと小さいならば
欲しい、と私は言うだろう 恥知らずにも
悪霊のように後を付けていたい
神のようにするためだ 貴女の心臓を閉じ込めておくためだ――私の手の中に
無恥な空想 何もない恋心の外に在って
それは何という傲慢だろう