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⑶『言葉の山積』
⑶『言葉の山積』
㈠
言葉の山積によって、得をするのは小説家である。この山積がある限りにおいて、小説家は小説家で居ることが出来るだろう。言葉とは、ややもすると危ういもので、掌から、零れ落ちて行くような、危険極まりないものだ。
㈡
であるからして、脳内に、何度も何度も、反芻させるように、言葉のマグマを持っておかねば、ならないのである。言葉の山積ほど、重要なことはないのであって、溢れ出る言葉たちを、脳から手へと移動させて、執筆する。
㈢
執筆で得をする小説家は、ただ、単なる言葉ではなく、加速度を増して、小説に似つかわしい言葉へと、少し変容させて、執筆するのだ。言葉の山積、俺は、この山積が続く限り、小説家で居られるだろうと、予感している。