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旦那様、愛人様のことはご自分で養ってくださいませね?  作者: 彩紋銅


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6 その後それから

◆◇◆


 その後、私とレイフ様は正式に離縁。

 夫婦としての生活が全くなく、白い結婚でもあったため、婚姻自体が無効とされた。

 つまりは、双方に離婚歴自体がつかなかったのだ。


 そして、ヘイデンと改めて婚約。


「ヘイデン・フォルミーカと申します。どうぞよろしく」


「ヘイデン? フォルミーカって……」


 伯爵じゃない?


 たしか、少し前に当主が亡くなり、跡取りもいないことから爵位や財産は凍結されたって噂をきいたんだけど……。

 跡取りがいないのは、当主が亡くなる前に相次いで家族や親戚が流行病で亡くなったからだとか。ちなみに当主もその流行病で亡くなったそう。

 最近まで、自称フォルミーカ伯爵の血筋の人たちが、権利を主張していたけど……。


「俺は当主が若い時に作った隠し子でね。メルヴィン様やエルドレッド殿下の協力で当主になったというわけだ。

 これなら君と結婚もできるし、レイフ殿へ支援してもまあ、文句はでないだろう」


 どうやら、その自称の方々を、メルヴィン様達が排除されたのでしょうね。


「そういえば、フォルミーカ伯爵といえば、レイフ様の母上の親戚だったかしら?」


 確か、レイフ様のお母様の曽祖母様と血縁があったような? つまり遠い親戚?


「そういうこと。では改めて。リネット、私と婚約して欲しい」


「……喜んで」


 そうして、今度こそ私は幸せな結婚をすることになるのだった。


 ◇


 その後、ロミー様はヘイデンを(あと私を)害した罪によって有罪となった。

 平民が貴族を害することは、どんな理由があったとしても許される事はない。

 その時には既に爵位を継いでいたヘイデンと、一応、レイフ様の妻である私を害してしまったので、ロミーの罪は免れなかった。


 レイフ様が色々と釈明したが認められず、被害者の我々が処罰を法に則るとお願いしたため、実刑三年となった。

 その後、レイフ様はロミー様とは完全に決別し、真面目にロクスタ伯爵家当主として仕事に注力するらしい。


 しかし、私との結婚が無効化されたことと、愛人が犯罪者になったことで社交界からは白い目で見られ、新しい相手が嫁いでくる可能性は低くなった。


 後継者は、親戚から養子をもらうことも視野に入れているらしい。


 彼にもいつか幸せがおとずれることを、願います……。



 ◆レイフ視点◆


 リネットとの離縁が成立して……いや、婚姻が無効になってから半年が経つ。

 彼女はヘイデン・フォルミーカ伯爵と新たに結婚して、店も繁盛していて順風満帆のようだ。


 うちの遠い親戚らしいフォルミーカ伯爵からの支援により、領地はなんとか復興した。

 そのため、両親から離縁について叱責されることはなかったが、社交界(世間)からオレは笑い物となった。


 資金援助をしてくれていた妻を蔑ろにし逃げられ、その再婚相手に同情で支援され、優先していた愛人は妻(とフォルミーカ伯爵)を襲って罪人となった。

 領地は復興したとはいえ、まだまだ余裕があるとはいえない。


 そんな男に嫁ぎたい女性はいない。


 仕事が一段落ついて、ひと息入れる。

 執事のバーニーがお茶の準備をしてくれる。


 ふとやることがなくなると、思考はリネットのことになる。

 オレは彼女のことを何も知らない。いや、知ろうとしなかった。


 婚約した時、オレは家の財政難で資金援助をしてもらうための婚約に反発していた。


 彼女は薄紅色の髪と灰色の瞳が印象的な、利発な人だった。


 自分で商会を立ち上げ、成功している彼女が眩しかった。貧乏貴族の後継ぎの自分が情けなかった。

 自分には商才はなく、王宮に務められるほどの才能もなかった。

 領地運営をすることしか、できない……。


 だから、彼女に嫉妬した。

 そんな自分を見透かされるのも、嘲笑われるのも、同情されるのも嫌だった。


 それで、理想の女性だったロミーに溺れ、現実から目を逸らした。


 でも彼女は結局、貴族の金が目当てだった。

 まあ、うちは財政難なのだが、彼女はそういった部分までは分からなかったようだ。

 そんな女に、オレは騙されたというわけだ。


 ロミーは実刑となり、三年は戻っては来られない。

 彼女と会う事はもうないだろう。

 もはや、愛人を囲っている余裕は、うちにはないのだから。


 そばに置いてあった新聞を手に取る。

 最近の流行りを特集する記事に、リネットとフォルミーカ伯爵のツーショットが載っていた。

 今期の新作ドレスとアクセサリーを紹介している。


 もし、オレが最初から彼女と心を通わせていたら、彼女と同じ道を歩んでいただろうか?


 そんな想いが浮かぶが、それはないとも思う。


 きっと、彼女は仕事を辞められないだろうから、夫婦の交流は月一とかそんな頻度になっていただろう。

 そんな生活でオレはどこかの誰かと軽い気持ちで浮気でもして、結局は別れていたような気がする。


 きっと最初から、彼女とオレの道は交わらないものだったのだろう。


 それなら、この結末が一番良かったのだ。


 新聞をたたんで、仕事に戻る。


 もう、オレは結婚は望めそうにないから、親戚の子供でも養子にして、後をお願いしようかとも思っている。


 それまでなんとか、ロクスタ伯爵家を存続させようと思うのだった。



 ◆ロミー視点◆


 ──三年が経ち、ようやくロミーは刑期を終えた。


 世界は様変わりしていた。

 レイフ様には、手紙で別れを告げられたので、迎えには来ていない。

 行く宛はない。

 実家に一度行ってみたが、既に別の建物が建っていた。ヘイデンの義父の工房も無くなっていた。

 どうやら、ヘイデンの義父の工房は、随分前に移転したらしい。

 アタシの家族の方の行方は分からなかった。


 仕方なく、出所前に教えてもらった救貧院に向かう。

 ここは、行く宛てのない人々の救済のために作られた施設で、アタシみたいな刑期を終えた人とかも、当面の生活と食事の面倒を見てくれて、仕事も紹介してくれる。

 そこで、しばらく生活し仕事を探す。


 一ヶ月後、なんとか住み込みで働ける仕事に採用された。

 そこは、買い取った衣服を中古で販売できるようにリメイクする工房で、多くの女性が働いていた。


 初めは手を針で刺しまくって、傷だらけになったアタシも一ヶ月もすれば、なんとか形になった。

 ふと、家族と生活していた時には、繕い物はアタシの仕事だったのを思い出す。


 結局、アタシはこういう場所で働くのが身の丈に合っていたのだろう。


 その後、しばらくして、この工房がリネットが展開する事業の一つだと知った。

 貴族や裕福な家庭から買い取った不要な衣類を修復し、作り直すことで、低価格で販売しているらしい。


 結局、アタシは彼女には敵わなかったわけだ。


 その後、その工房で働き続け、良い出会いがあってアタシはその人と結婚した。

 平民向けの手芸用品を売る店を、代々営んでいるらしい。


 私はリメイク工房を辞めて、彼の店を手伝うことになった。

 レイフ様といた時のような煌びやかな生活ではなかったが、不思議と不満はなかった。


 この日は、この国の王子が結婚するとかで、国中がお祝いムード一色だった。

 新聞で相手は、リネットのデザインしたドレスを着用すると紹介されていたから、彼女の店はますます成功しているようだ。

 もう、私は彼女と会話をすることさえ、出来ない相手なのだろうと思う。


 レイフ様は、その後は結婚せずに、親戚の子供を養子にしたと聞いた。

 それに関しては、特になんとも思わなかった。きっともう、彼と会うこともない。私にとって彼は、それくらいの相手だったようだ。


 あの頃のことは別に後悔はしていない。

 逆上して、事件を起こしたことについては反省はしているけれど……。


 だから謝ったりもしない。だって、いまさら謝られても向こうも迷惑だろう。


 だからお互いの存在なんて、忘れた方が良いのだ。


 その後、私は旦那との間に子供も恵まれ、ごく平凡な人生を送った。

 でも、これからという時に、アタシは病に倒れ、夫と子供を置いて逝くことになったのは、これまでのツケが回ってきたのかもしれない。


 夫と子供には、申し訳ないが、それでも、多分──悪くない人生だったのだと思う……。



『地獄耳のジャスティーナ』で、仮面舞踏会に参加するためのドレスを買いに行った仕立屋の女店主の昔話でした。

 時系列的には、ジャステーナの物語の一年くらい前のお話となります。


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― 新着の感想 ―
レイフもロミーもまぁ腐ってはいたけど、根っこまでは腐ってませんでしたね。最後は自分を振り返れたし。 でもレイフの両親はちゃんと息子を叱った方が良かったのでは。そんな教育方針だから直系が跡を継げなくな…
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