チャプター3
チャプター3
僕は、これからどうしようと考えながら、先程と同じ公園のベンチに腰掛けた。
相変わらず、ジュリアの姿は見えない。
しばらくすると、スマホに着信があった。
誰だろうと思っていると、病院からだった。
そういえば救急隊員に、連絡先を教えていたんだ。
電話で看護師らしき人が、容体のこと、必要な物、などを僕に伝えてくる。
なんで、僕に? 普通なら身内にする話だよね。
「とにかく着替えと歯ブラシ、コップ、タオルを持ってきてください。急ぎませんけど保険証もお願いします」
電話口で早口にまくし立てられて、僕は思わず”はい”と言ってしまった。
仕方なく、ドンキに向かい、1番地味な部屋着とコップ、歯ブラシ、タオル、これは大きいのと小さいのの2種と買い物かごに入れた。
レジに向かったところで、気が付いた。”ちょっと待って、お金は?”
僕はズボンのポケット、シャツの胸ポケットをまさぐってみる。
当然、何もはいってなかった。
あるのはスマホだけ。
うん? スマホ? あーある、払えるよ。
僕はレジへの列を外れて、スマホを操作する。
あった、e-payのアプリだ。残高は3265円。
かごの中身の値札をチェックする。
なんとか足りそうだ。
今度はレジの横の表示を確認する。
あった。e-payのロゴが見える。
もう一度、レジに並び直し、会計を済ませた。
病院は目黒の総合病院だった。
ここからなら、歩けないこともなかったので、歩いて向かうことにした。
この状況で、お金を使う事は、なるべく避けないと。
スマホをいじってみたが、連絡先は空白で、自宅などの情報も空白だった。
他のアプリは入っているようだが、すべてが使えるかは分からない。
これ全部調べるのは時間がかかる、今は病院に急ごう。
ホテル街の円山町を突っ切って、道玄坂上から、旧山手通りを歩き、中目黒から川沿いを歩いていくと病院が見えてきた。
しかし、このルート、僕には全く不似合いの道だった。
円山町では、1人でホテルに入って行く人が多くいた。旧山手通りはおしゃれなお店が多くて、僕は始終下を向いて歩いていた。
唯一、前を向いて歩けたのは、目黒川沿いの道だけだった。
ここも春先は、花見の人たちで賑わうだろうから、僕にはとても歩けそうにない。
病院に着くと、老婆の名前を知らないことに気が付いた。
受付でしどろもどろになりながら、交通事故で運ばれた高齢の女性に荷物を届けにきたことを説明した。
これだけで30分くらいかかっただろうか。
僕の後ろに列が出来てしまって、焦ってしまったことも災いしたんだ。
僕の後ろの女性が、じれてしまって、僕に変わって説明し始めた。
「この人が言いたいのは、この病院の看護師から頼まれた交通事故にあった人に着替えを届けに来た。。ただ名前が分からない。居合わせただけだから。ってことだよ」
受付の人が納得したようにうなずいて、調べ始めた。
女性が僕の肩をバシッと叩いた。
「あんたも、ドンキで地味な部屋着を買ったとか、ジュリアって猫の事はどうでもいいんだよ。要点だけ言いな」
僕は’はい”と蚊の泣くような声で小さくうなずいた。
そんな事はわかってるよ、でもね出来ないんだ。素晴らしいよね要点をきちんと押さえて、手短に話せる人。
僕にはとても出来ない芸当だよ。
受付の人が面会カードを差し出してきた。
「これに記入して、5階に上がってください。そこのナースステーションに行って下さい」
僕はここでまた、ため息を漏らしてしまった。
ナースステーションでも説明をしなければいけないのか。困った。
受付の人は僕の悩みを察知したのか、白紙の面会カードを裏返し、何かを書き始めて、僕に手渡してきた。
「それをナースステーションで見せれば大丈夫ですから」
そのカードには、経緯がきちんと書かれていた。
なんて、仕事のできる人なんだろう。
こんな人は受付なんかで終わって良い訳がない。
こういう人こそが、人の上に立つべきだろう。
僕は最大限の賛辞をこの人に送りたかったが、言えたのは”はい”という1言だけだった。
しかもすごく小さい声で。
後ろの女性に対しては会釈だけ、すませてしまった。
本当に人との接し方って難しい。
距離感の取り方ってどうやって覚えるのだろう。
メモのお陰で、ナースステーションでは戸惑うこともなく、病室に案内された。
病室の入り口には、4つのネームプレートがあったが、3つは空白で残り一つに”冴島透子”と書かれていた。
「冴島さん、面会の方がお見えですよ」
看護師さんが明るい声で、向こうを向いて寝ている女性に声をかけた。
女性がゆっくりとこちらを振り向く。
あの老婆だった。救急車に乗った時の痛ましい姿を思い出してしまった。
「ああ、あんたかい。ありがとうね。他に頼める人がいなかったんだよ」
僕はなんと返していいかわからず。曖昧にうなずいた。
「じゃあ、荷物一回預かりますね」
看護師さんは、僕が持っていた、着替えやコップやらが入った、ドンキの袋を奪い取るように持って部屋から出ていってしまった。
僕が1番苦手な、気まずい雰囲気が訪れた。
よく知らない人と二人っきりの空間なんて、1分でも耐えられない。
立ち去るにも、無言でってわけにも行かないだろう。
一声かける、このことだけでも、無理ゲーなのだ。
しばらく、いたたまれない沈黙が病室を覆った。
沈黙を破ったのは、老婆の方だった。
「あんた、名前はなんて言うんだい?」
「高端是清、です」
「ほう、いい名前だ。名前負けしてそうだけどな」
「それは、自分が1番よくわかってるんです」
僕は、消え入りそうな声で必死に言葉を発した。
「私は、ゆきこだ」
ゆきこ? なんのことを言われたのか全くわからず、間抜けな顔で老婆を見返した。
「とうこ、じゃなくてゆきこって読むんだ。よく間違われるよ。ここでも散々、とうこさんって呼ばれている」
そうか、透子と書いてゆきこって読むのか。
そういえば、どこかで透子と書いて、ゆきこと読むって人がいたような気がする。
「だから、あんたは私のことをゆきこさんって呼んでくれ。そうすれば周りの人もゆきこって呼んでくれるからね」
「わかりました。ゆきこさん」
「今日は、いろいろありがとうね」
「そっそんな、僕の方こそ、最初助けてもらったのに、急に逃げてしまって」
「そうだったね、何かを追いかけてるみたいだったけど。見つかったのかい?」
「いや、見つかりませんでした。松濤の公園で途方に暮れてたら、ものすごい音がしたから、行ってみたら、透子さんが倒れていて」
女性に対して下の名前で呼ぶなんて、何十年ぶりのことだったけど、透子さんに対してはあまり抵抗を感じなかった。
年齢が離れすぎているせいかもしれない。
「そうだったね」
その時、病室にスーツ姿の男性が2人入ってきた。
2人は上着のポケットから、身分証を出して開いた。
予想どおり、警察の人だった。
「松濤警察の安野だ」
「同じく、高村です」
2人は名前とは正反対で、安野さんは背も高く、シワ一つない高そうなスーツを着ている。
対して高野さんは、ずんぐりしていて、微妙にサイズの合っていないスーツにくたびれた革靴を履いている。
僕はなんとなく微笑ましく、2人を見ていた。
だけど、2人の話は微笑ましいものではなかった。
「冴島さんに当て逃げした車なんですが、現在見つかっていません」
高野さんの話は不思議だった。
なぜだろう、現場には防犯カメラがあったのに。ナンバーが読み取れなかったのだろうか。
僕が驚いた顔をしているのに、気がついたのか、安野さんが僕を向いて、高野さんの後を継いだ。
「現場付近の3台の防犯カメラは、きちんと作動していなかったんだ。で、君は高橋さんですね。第一発見者の。あなたに会えて良かったですよ。なにしろ今のところ目撃者はあなただけなんです」
確かに、夕方の松濤は静かで人通りも多くない。
「付近の家は豪邸が多いからな、物音もあまり聞こえないんだ」
安野さんは、困ったとばかりに頭を持っていたペンでかいている。
確かに、あの辺りは日本でも屈指の超高級住宅街だ。
敷地の入口から、玄関まで結構距離もあるだろう。外の音も聞こえづらいはずだ。
「高橋さんから、詳しく話を聞きたいと思っていたんです」
僕は覚えている範囲で、事故の説明をした。
ただ、僕が駆けつけた時には、車はいなくなっていたので、たいした説明は出来なかったと思う。
透子さんも、事故の説明をしていたが、透子さんもいきなりのことで、車のナンバーも運転手の顔もみていないそうだ。
透子さんが、分かったているのは、車の色が黒だったことと、バンではなくボンネットがある車だったことだけだ。
警察の2人は熱心にメモを取り、何度かうなずきあったりしていた。
ただ、内心はがっかりしたと思う、素人目の僕にも重要な話は何もなかったのだから。
安野さんと高村さんは、”ありがとうございます”と丁寧にお辞儀をして、出ていった。
出ていった2人を見くりながら、一つ気がついたことがあった。
2人に僕の方から声をかけるなんて、コミュニケーション能力に重大な欠陥を抱える僕には、採れてもできない。
それに僕自信で確かめたいことがあるのだ。
「透子さん、僕も行きますね。また明日来ます」
自分でも不思議なのだが、透子さんには普通に話せるし、気まずさも感じない。
透子さんは疲れたのか、目をつぶったまま、小さく頷いた。
僕は来た道を逆に辿って、松濤に向かった。
陽が落ちた円山町は艶めかしさが増しているようで、僕はむせ返りそうになりながら早足で事故現場に向かった。
僕が探しているのは、こすれた音のする場所だ。
確かに現場でこすれる音が聞こえた。
多分あれは、金属みたいに硬いものがなにかにこすれる音だろう。
可能性が高いのは、透子さんにぶつかった車が、焦って運転を謝り、壁に車をこすったことだ。
音がした方に向かって、壁をつぶさに眺めてみる。
しばらく壁をみていると、山手通りに出る道沿いの、四つ辻に黒い塗料がこびりついていた。
これだろう、見たところ、まだ時間が経ってないように見える。
周りを確認したところ、山手通りに出るところにコンビニがあった。
あそこなら防犯カメラがあるだろう。
僕はスマホで壁の写真とコンビニの写真を撮影した。
とりあえず、やることはやった。
問題はこの後どうするかだ。
僕は自分の昔の記憶がない、名前しかわからない。
だから、家に帰るということが出来ない。
それに、なんだか帰っちゃいけない気がする。
どうしようとコンビニの前で立ちすくんでしまった。
そうだ、こういう時のためのキスだ。
それはわかっている、この能力が発動されれば、困るこはないだろう。
でっ、でも、どうやってキス?
自慢じゃないけど、女性の半径1m以内に、意図的に入ったことはない。
自分から女性に近づいて、1m以内に入り込んで、相手を見てキスをする。
無為無理無理無入、絶対無理だよ。
考えただけも、変な汗が流れてくる。
手汗もすごいよ。
そうだ、外国人なら、キスに抵抗ないはず。
外国人の女性に親切にして、俺にキスして貰えばいけるんじゃないだろうか。
それも無理無理無理ぃ。どうやって外国人に親切にするんだ? 第一、外国人に話しかけるのが無理だよ。
考えろ、俺。考えろ。
自分の頭をゴンゴンと拳で叩いて、無理やり、頭を回転させる。
コンビニを利用している人たちが、僕のことを遠巻きにして見ている。
だけど、そんなのに構ってられない。
考えつかないと今日は野宿になるし、これからも野宿生活だよ。
切羽詰まって、その場にしゃがみ込みそうになった時に、ジュリアがあらわれた。
「おお! ジュリア。助けてくれよ」
僕の気持ち悪い1人言に、横を通り過ぎたカップルがぎょっとした顔で僕を見てきた。
そんな目線は慣れっこなので、気にもならない。
とにかく、今はジュリアだ。
ジュリアは、またスタスタをあるき出した、山手通りを中野方面に向かっている。
尻尾を立ててフリフリと優雅にゆったりと歩いている。
こっちは余裕がなくて、キリキリしているっていうのに、ジュリアは余裕のある歩き方だ。
なんとなく、ジュリアにイライラ品しながら、後をついていく、坂を下って井の頭通りを越えたところで、薬局の前でジュリアが立ち止まった。
ジュリアを捕まえようと、自動ドアの前にかがむと、ジュリアはジャンプして頭を超えて、塀を越えて、どこかの家の敷地に入ってしまった。
僕は驚いて、尻もちを着くと、自動ドアが開いて、カウンターの中で新聞を呼んでいる、中年の男性店員と目があった。
僕は思わず、頭を下げて小さく挨拶した。
お店の人は、座り込んだ僕を病気か何かと勘違いしたらしく、慌てて僕のところにやってきた。
よっぽど慌てていたのだろう、新聞を手に持ったままだ。
「大丈夫かい」
その人は、僕の前でしゃがみこんで、僕のことを心配してくれている。
こうやって心配してもらうのは、今日2回目だ。
今回はさっきのような不義理をしちゃいけないって思って、逃げずにその場でゆっくりと立ちがった。
ところが、運の悪いことに、立ちくらみを起こして、その場にまたしゃがみこんでしまった。
男の店員は、僕の肩を揺すって、意識があるか確認してくる。
「大丈夫です、立ちくらみみたいで、昼から何も食べて無くて」
男性店員はホッとしたようだ。
「そうか、なら良かった。血糖値が下がったのかもな」
男性は立ち上がって、お店の奥に入っていった。
僕も邪魔しては悪いと思って、壁につかまりながら、立ちがる。
僕は立ちくらみが収まるのを待っていると、男性店員がゼリー飲料を持って来た。
「ほら、これを食べなさい。そこに座るところあるから、そこに座って」
男性店員は、店内にあるソファを指さした。
男性店員の胸には柏木健児と名札ついていた。
薬局の名前も柏木薬局だった。
柏木さんは店主なのだろう。
ここで僕は、この人にキスをする事を想像した。
僕が立ちくらみで倒れそうになる。
”大丈夫かい”
柏木さんが、僕の肩を掴んで倒れないように押さえる。
僕はわざとらしく、柏木さんの胸に顔を埋める。
「ちょっとまだ、よくないみたい」
少しかすれた、甘えた声で上目遣いに柏木さんを覗き込む。
柏木さんと僕の目線があい、二人の間に甘い空気が流れる。
そして、僕は 目を閉じて、そっと柏木さんの唇を奪う。
だっめだー、絶対無理。
想像しただけで、背中を汗が流れていく、手汗もすごい事になっている。
柏木さんは僕の様子に、体調が悪いと勘違して、心配そうに僕を眺めている。
確かに息が上がって体調が悪いのように見えるかもしれないが、僕が柏木さんにキスすることを想像して、気分が悪くなったなんてとても言えない。
キスを想像したこと、その想像で気分が悪くなったこと、二重の意味で申し訳ない。
僕は深呼吸をして、気持ちを整える
柏木さんは、ゆうパックのような、分厚い封筒を持ってきた。
「これ使いな。この中には、簡単な食事と宿泊クーポンなんかが入ってるから」
僕は驚きながらこの封筒を受け取った。
エマージェンシーバックというもので、NPO法人が支援しているものだそうだ。
僕はありがたく受け取った。
こんないい人の唇を奪うことを考えた、自分が申し訳なかった。
5分前の自分をぶん殴ってやりたい。
僕は名前を伝え、登録かわりに顔写真を撮られた。
長居するのも悪いとも思い、柏木薬局を後にした、立ち去り間際に柏木薬局に深くお礼をした。
中のクーポンには、宿泊先は代々木にあるビジネスホテルのようだった。
警察に連絡を入れようと思い、今日会った、高村さんの携帯に電話した。
高村さんのほうが、口調も丁寧で話しやすそうだったからだ。
電話には出なかったので、事故を起こしたと思われる車の痕跡を見つけた事を留守電に残そうと思ったが、うまく伝えられる自信が無かったので、そのまま電話を切った。
僕は井ノ頭通りを渋谷の方に向かって歩き始めた。
もう今日はジュリアに会えない気がして、探すのを諦めていた。
なんとなくだが、ジュリアは僕を助けるときだけ、現れるような気がするのだ。
今は特に困っていない。泊まるところも確保できたし、明日もやることがある。
こんな時はジュリアは現れない気がするのだ。
ふと、僕はもう一つの考えが思い浮かんだ。
「そんなことないよ。あるわけない」
一人言を言って、首を横に降った。
近くを歩いていた人が、ぎょっとしたように僕を見つめ、距離を置こうとしている。
まあ、いつもの慣れっこの光景だ。
僕はホテルまでの歩みを早めた。
ホテルは予想以上に清潔で綺麗だった。
そして、スマホの充電も出来たのが嬉しかった。
着替えはなかったが、シャワーを浴びてベッドに腰掛けると、睡魔が襲ってきた。
いろいろ考えたかったけど、意識がまどろんできて、目をつぶってしまった。
気がついたら、窓から日が差している、ベッド脇のデジタル時計を見ると、7時30分だった。
8時間以上寝ていた事になる。
スマホを確認すると、着信があった。
松濤警察の高野さんだろう。
顔を洗って、簡単に身支度をして、かけ直した。
今回はすぐに電話に出てくれた、声が完全に寝ていた声だった。
申し訳ないと思いながら、昨日、事故を起こした車の痕跡を見つけた事を伝えた。
しどろもどろになりながら、なんとか伝えられた。
高野さんも最後は、イライラした口調になりながら、10時に事故現場で待ち合わせすることになった。
なんで、人に説明するのって、難しんだろう。
テキパキ指示したり、手短に話せる人には尊敬しかない。
約束の時間まで少し時間があったので、備え付けのティーバッグでお茶を淹れた。
イスに座って、昨日事を思い出して見る。
ザマンさんにもらった僕のスキルは、キスをするとその人を思い通りに操れるということ。
これは試そうとしたが、僕には使いこなせそうにない。
ということは、無用の長物以外、何者でもない。
これ以外には、眼鏡が要らなくなったこと、お腹が引っ込んだこと、背が伸びたこと、以上だ。
そして、僕には最近の記憶が無い、名前は覚えている。
だけど、家族のことや住んでいた場所、電車で轢かれる前に何をしていたのか、記憶が無い。
無理に思い出そうとすると、頭が割れそうな頭痛が襲ってくる。
これが怖くて、昔の事を思いだそうとはしたくない。
ただ、僕が事故にあったあの場所は知っている気がする、見たことがあるからだ。
僕の前世はなんだったのだろうか。自宅警備員をしている時になにかがあったのだろう。
なんで、土砂降りの中を傘も差さずに歩いていたのか。
不思議が山盛りになっている。あまり良いことではないだろう。
今は、考えるのが怖くて、ホテルを出る準備を始めた。