第87話 羨ましい(マリーナ視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(マリーナ視点)
従姉妹が羨ましい。
そう思ったのは、父上や兄上とご一緒にローザリオンの叔父上のお屋敷に行った時のこと。
従姉妹のリーシャ。叔母上と同じ髪色で、だんだん叔父上のような美しい顔立ちになっていく少女。
彼女は、つい先日『異能』をあの小さな身体に宿すこととなった。
もともと、叔母上の契約精霊の子を、自身の契約精霊としているだけでも特別であったのに。
叔母上と同じ、パン作りを媒介にする錬金術師となったのだ。
(……すごく、美味しかったんだである!)
ふんわりと。
香ばしくて。
甘くて。
ほんのりしょっぱくて。
けど……全てが調和していて。
すごく……すごく美味しかったのだ!!
私も作ってみたいけど……私はダメなのだ。
父上のように、台所に立つと食材のほとんどをダメにしてしまう。薬剤は得意なのに、料理はダメなのだ。
だから、美味しい食べものにはいつも感謝をして食べている。自分には出来ないことを、他の誰かが頑張っているのを馬鹿にしないために。羨ましいために。
リーシャはもともと色々出来る子だから、私とは違う。
それが、もっともっとたくさん出来るようになったのは……本当に羨ましいのだ!!
兄上も同じように出来ないけれど、何か出来ないか。
将来のセルディアスのために、もっともっと何か出来ないか。
勉学も苦手なので人一倍努力をしているのだが、その程度はどうとでもなる。
だが、薬剤以外で何か自分の手で生み出す事が出来ないのが……ひどく、はがゆく思えた。
「マリー! 喜べ!!」
落胆していると、いきなり兄上が扉を開けてやってこられた。着替えでないのが幸いしているが、幼なくとも淑女の部屋に堂々と入りすぎなのだ!?
「なんだね、兄上?」
「アーネストの爺が僕らに錬金術を教えてくれるんだって!!
「なんと!?」
あの偏屈エルフ爺が、私達に錬金術を?
叔母上の師でいらっしゃるが弟子を滅多に取らない彼が?
どう言う風の吹き回しだ? とにかく兄上と一緒に行くのである! 下手をすればパン作り以上の修行となろう!!
次回は土曜日〜




