第71話 シーター登場(シュライゼン視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(シュライゼン視点)
全く、我が妹は俺に容赦ないんだぞ。
と言っても、九年前は違った。
チャロナがカイルの助けでセルディアスに戻り、王族として……王女として地位を取り戻すのにそこそこ時間をかけた。
先日、久しくいらしたらしい創世神方のおかげで……あの時に、母上も復活することが出来た。
その奇跡を生み出した、最高の王女で錬金術を扱えるパン職人。
同盟国や友好国からは婚姻の申し込みが殺到したが、チャロナにはカイルがいた。正確には、母上が復活した後に……まあ、お互いの気持ちを確認し合って結ばれたんだけど。
それに王女の地位としてよりも、カイルの側にいることを選んで……城にはあまり帰って来なかった。
もちろん俺は、兄として妹との交流は頻繁にしたとも!
それが今ではカイル並みに、扱い方が容赦ないんだぞ! なんで、マックスとかは良くて俺はダメなんだい!? 自分の子どもにも、姪っ子にもダメダメ言われるんだけど……俺はもうすぐ国王になるのに。なんで残念男子扱いだなんてされなきゃいけないんだい!?
いじいじしててもいけないんで、今はロティが変換したシーターに、俺とレイで薄く伸ばしたバターを挟む工程に集中するんだぞ。
「お母様お母様! これなーに!?」
そして、我が姪であるリーシャは。実は異世界の技術をもとにロティへ組み込まれた魔導具を見て、はしゃいでいるんだぞ。
まだこの子に、チャロナもだけどマックスが異世界からの転生者である真実は告げていない。分別つく年頃ではあっても受け入れるかはわからないからね。俺とカイルで決めたんだ。
ただ、最近とは言え神がこの子と契約精霊のミアに異能を与えたのは、驚き以上の感情を得たが。
「ふふ。シーターって言うの」
コックスーツに着替えているチャロナは、下の踏み台のような箇所を足で踏んだりして台にかかっている布の部分を動かしたんだぞ。
それにも、リーシャは物珍しそうにはしゃいでいた。
「動いたわ!」
「ここに、お兄さんが包んだ生地を乗せて」
目盛りを調整して、生地が真ん中に吸い込まれると……すぐ横から平たく伸びた生地が出てきた。俺も最初知った時は驚いたんだぞ!
「すごーい!」
「ただ伸ばすんじゃなくて、畳んでまた伸ばしてを繰り返すの。ある程度整ったら、麺棒で整えて……今度はゆっくり冷やすのよ」
「……やること多い」
「美味しいものには、場合によっては手間がとても大事なのよ」
「材料以外にも?」
「そうよ」
そう。この工程をしっかりしないと……焼き加減がサクサクふわふわにならない。俺は城で似たようにアーネストの爺と頑張ったんだが、上手く出来なかったんだぞ!
と言っても、冷やす時間はリーシャも出来るようになった時間短縮でぱぱっと出来てしまうんだけどね。
「……また伸ばすの?」
「うすーく伸ばして、切りたい大きさにしなきゃいけないしね。全部をコロネにするには多いから、明日用のサンドイッチをクロワッサンにしましょうか?」
「わーい!」
「うぐぐ……」
俺はまだ自分だけでクロワッサンを作れないから……羨ましいんだぞ!!
俺ももっともっと修行しなくちゃ! って言ったら、シャルに怒られるからほどほどにしないといけない……。
次回は日曜日〜




