第64話 見守る(シェトラス視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(シェトラス視点)
いやはや、お嬢様は少し変わられましたな。
私がライスバーガーのバンズを焼きながら、ちらっとお顔を見たが……とても笑顔でいらっしゃった。
苦手なピーマンを、奥様直伝の焼肉のソースで炒めただけでも……つまみ食いをしたいほどの表情に。そのような表情を見たのは、いつぶりだろうか?
坊っちゃまがお生まれになられてからは、気落ちが目立っていたのを……今ではまるで違う表情をされている。ミアちゃんが、契約精霊として覚醒され……お嬢様にも異能が神より与えられた。
その日から、お嬢様が少しずつ変わられたのだ。良い意味で、日常に花が咲くような素晴らしいものへと。
昔、奥様がまだ『チャロナちゃん』だった頃。旦那様や私達に美味しいパンなどを振る舞ってくださった……あの頃の笑顔と同じだ。
お嬢様は、髪色以外は旦那様によく似たお顔立ちではあるけれど。
『かき揚げも出来たでやんすよー』
レイバルス公も、精霊同士で婚姻だけでなく、お子を授かるとは思わなかったが……父親らしく、振る舞うことも出来ていた。本来、契約者であるマックス様のお側にいなければならないが……今は平和であるから大丈夫だそうで。
マックス様も、冒険者を引退なされ……エイマーと結婚して子を成されたのだが……食い意地は相変わらずですからな。変わらぬ部分もあるのは、悪いことではないけれど。
「では、冷めてきたので……挟んでみますか」
「はーい」
『みゅ』
しかし、今はお嬢様を優先せねば。
奥様と同じようで、少し違う異能をお持ちでも……異世界の前世の記憶をお持ちではないのだ。だから、少しばかりでも奥様から伝授してくださった料理の作り方を、ご息女であるお嬢様にもお伝えせねば。
この料理にも、神からのアナウンスは降りて来られるだろうが……私には一切聞こえてこないので見守るだけだ。
「挟み方は普通のハンバーガーと同じですが、力を入れてバンズを掴んではいけません。そう……そうです」
まだまだお小さいのに、一生懸命に料理をされるお嬢様の姿には……やはり、奥様の姿が重なった。お顔立ちは少し違えど、そこはよく似ていらっしゃったのだった。
「シェトラス、これでいーい?」
「はい。大丈夫ですよ」
出来上がった、焼肉とかき揚げのライスバーガー。
あとはこれを紙で軽く包もうとした時に……お嬢様の瞳から、光が消えたように見えたのだ。
(……奥様と同じですな)
少しずつ、レベルアップしたことで状態も似たことになっているのだろう。だが、すぐに光が戻り……お嬢様もすごく笑顔になられたのだった。
次回は日曜日〜




