第181話 ちょっと大きくなって
あたしには節目ができたの。
セシル兄と婚約して二年くらい経った今だからこそ!
『呼び方』と『言い方』を変えたくて……けど、どうしても難しかった!!
セシル兄が、ずっともっとカッコよくなっていくんだもん!! 小父様の血を濃く受け継いでいるせいよ!!
「……あ、『私』は変えられても」
「まだ甘いわね。私もめっちゃ時間かかったけど」
「男の子って、大きくなるの早いんだね……」
「ミラクルも、鍛えたら……凄いのわかったわ」
サリー姉と、今日は孤児院でのお菓子教室が終わってからのお茶会だけど。
広場で、大きくなった子どもたちに稽古をつけているセシル兄とミラクルがまぶしく見えてしまう。
ミラクルはマックス様とおば様の血をちょうど良く受け継いだ感じ。
セシル兄は髪型こそ違っても……小父様そっくり。ううん、もっとかっこいいの!! 十一歳だけど、すらっと背が高くて……私なんかで、横に立っていいのかわかんないくらい。
「かっこいいなあ……」
将来の旦那様の約束はもらっているし、実はこの間……最初のキスのやり直しはしたの。うっとりするくらい素敵で、もう大変!! 私、って言い方がぽろっと剥がれるくらいにドキドキが止まらない!!
幼馴染みだった時には、頼りになるお兄ちゃんくらいにしか見えなかったのに……十歳になったあたしは、彼をうまく名前呼び出来ないくらい情けないの!!
かっこいいから、直視出来ない。……うちのお父様もかっこいいけど、恋してるかどうかでこうも違うのね!? お父様には恋しちゃダメだけど。
「まだ成人してないお嬢さん? 私が先に成人しちゃうんだから……ミラクル、に群がる虫払い助けて!」
「……そだね」
サリー姉が一番年上だから、あと二年くらいで成人しちゃう。ミラクルはそこが悔しいってしょっちゅう言ってるし、モテるから女の子からのアピールが殺到している。
今も、孤児院の職員見習いにいる子とかに声かけられているが!?
「……僕、婚約者いるので」
と、言い切ったら……女の子たちが倒れるのもいつものこと。すっごく、ラブラブいいなあ! セシル兄もモテるけど、私以外興味ないって、癇癪持ちの子とかに言い切ったおかげで……群がることないから!!
とっても幸せ者だけど……時々、苛立ちの仕方が小父様に似てきたから、ハラハラしちゃう時もあるの。怖いんじゃなくて、色っぽくてかっこいいから!!
だから、つい呼び捨て出来ないの!!




