第178話 男同士の恋バナ(ミラクル視点)
セシル兄とふたりでお話。
幼馴染みだけど、お互いにひとつ共通点があるんだよね?
まだ子どもなのに、許嫁である婚約者がいるってこと。僕とサリーはちょっと歳離れているけれど……大人になったら気にならないって。父上たちにも言われているから気にしない。
だけど、セシル兄はちょっと下のリーシャに大変なことしちゃったんだって。
「……可愛いからって。スキルのせいだとしても…………最初のキスがああなったのは」
「げ、元気出して。セシル兄」
アルフガーノ家に代々継承されるユニークスキル。『魅了の美声』がどうやらセシル兄に継承されかけているようで……フィーおじ様は今めちゃくちゃ大変なんだって。
今日は今日で、セシル兄はお仕事から戻ってくる父上と会うまで……僕がお茶の相手をしているんだけど。
「……神からの謝罪はいただいたけど」
「…………起きたことは変えられない、し」
「リーシャはやり直ししても……が笑顔なのに!!」
「…………男としては、複雑だね」
僕とサリーはまだ……と言うか、僕が一番年下だから。父上が言うに、手やほっぺから練習……らしい。でも……婚約パーティーが終わったら、サリーは『恥ずかしいから!』とダメって言ってきた。
これはこれで可愛いんだけど……ちょっと、寂しいなぁ。
「けど……けど! リーシャはすっごく可愛い!! 俺、成人したら耐えれる!?」
「……耐えよう」
「………ミラクルに言われると、重く聞こえる」
「事実だから」
なので、鬱憤というか、心の嫌な負荷は剣技で晴らす。これは父上の訓練方法だけど、僕も魔法以外に体格はしっかり身につけたいから!
セシル兄には付き合ってもらうことにした。
「魔法で身体強化出来るなら、もっと面白くないか?」
「……いいね」
気弱だった僕が、セシル兄とこんな風に出来る日がくるだなんて。
リーシャの異能開花もだけど……もっとふたりに協力してあげたい。僕も、話し方はともかく。父上と母上のようにかっこいい大人になりたいもん!!
小一時間くらい稽古して、お風呂入って……綺麗にしたら、今度は戻ってきた父上からの訓練が始まって、またお風呂。
半日かけたせいで、本来の目的は夕方に実行されることになったんだけど。
「いーい? 失敗は何でもある。けど、次のリベンジで『上書き』が大事よ!! セシルはちゃんと約束したから合格!!」
「…………それで、いいんですか?」
「リーシャは喜んでいたんでしょう? なら、それでヨシ! 終わり!!」
「……えぇえ?」
「悩む必要、無し?」
だから、稽古でモタモタを落ち着かせようとしたのかな? 父上。




