第173話 やり直し決定
「……したのか?」
「……やり直し、は言いました」
「…………なら、今回は仕方がない」
と言うことで、セシル兄はあたしとキスしたことは事実だけど。最初のキスにはしないことになって。
犠牲者は、あたしの口以外……フィーガスおじ様のお膝が痺れただけで終わったみたい?
「リーシャ? お母さんと、ちょっとだけ話そうか?」
「はぁい?」
ニッコニコの笑顔のお母様だけど、いいことでもあったのかな??
セシル兄とはこれでお別れだから……ちょっとだけって、ほっぺにチューしたら真っ赤になって倒れちゃった?? 挨拶のキスくらいだけど……さっき口にしたからダメだったのかな??
「ふふふ。リーシャは私と違って、セシルくんに積極的ね?」
あたしの部屋に来てからも、お母様はニッコニコだったの。
「ダメなの?」
「ううん。お母さんは引っ込みがちだったし……お父様には、好きになってもらえると思ってなかったの。自分が王女なのを知ってたとしても……多分自信なかったわ」
お母様は戦争孤児扱いで、お城から離れていた頃があったそう。もっとあたしが大きくなったら、詳しく話してもらえるらしいけど……ディオスがあたしくらいになってからかしら? 戦争の全部を知るのはまだ怖いから。
「でも、今は大好きなんだよね?」
「もちろんよ? そりゃ……人前でキスやハグは恥ずかしいけど」
「恥ずかしがり屋さん?」
「ふふふ。それでも、愛してくれてるのはよーくわかるわ。ね? セシルくんとのキスは覚えているの?」
「んーん。ふわふわだったから、あんまり」
「残念ね? でも、律儀にやり直しを提案……ギルさんのひ孫、流石ね」
「いつかなあ?」
「焦らないでいいわよ。婚約はきちんとしたんだし、ゆっくりね?」
「はーい」
そこからは、次はどんなパンを作ろうかってお話しをたくさんして。
次の日には、たまたま来てたミラクルと『アイスコロネ』を作ることになったの。お互いの婚約者に、好きなアイスのコロネパンを作るんだ!!
「サリー、姉はチョコチップアイス」
「セシル兄はチョコアイスにクッキーを砕いたの!」
それぞれの幼馴染みが婚約するのは、貴族抜きに多いらしいけど……大好きになっているから、いいもんね?
『みゅ! パイナップルのアイスも出来たでしゅ!!』
ミアは甘いけど、酸っぱいのがいいんだって。ジュースにはいいけど、コロネパンに合うかなあ?? お母さんの方のロティはジャム好きだから似たのかも。
『キウイもいい感じでやんすね』
違った。お父さんのレイバルスも居たわ。間くらいのところって感じ。
「出来たら、ままごと鞄に入れて!!」
既に用意してもらってた、馬車に乗ってからここでミラクルと別れたのー。




