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第129話 僕らしくない(アウル視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*(アウル視点)









 美しい。


 以前から、可憐な容姿なのに元気いっぱいの乙女だと思っていたのだが。


 今日は一段と美しさに磨きがかかっているように見えた。僕の見間違いじゃないと思いたい!!


 マリーナ……王女はとても美しく着飾って、本日の茶会に来訪してくださった。


 僕は半人半神だけど、位が高かろうが人間の血筋を引く子どもでしかない。貴族の屋敷に住んでても、農夫の子どもなのだ。どう足掻いたところで、王女と言う高貴な身分の相手と釣り合うわけがない。


 だけど、でも。



(……愛おしいんだ)



 この屋敷で時折拝見する、あの横顔や後ろ姿。


 可憐のようでいて、実は元気いっぱいの笑顔を見るだけで……心が高鳴った。


 それを再認識したのは、最近だ。


 リーシャに会いに来訪された時。兄君の横で元気に笑っていられる横顔を見た瞬間、胸が苦しくなったんだ。この想いは、完全に消去出来るものではないのだと。


 だから、リーシャに頼み込んで……今日の計画を実行したんだ。


 とは言え、マリーナ王女があのように愛らしく着飾ってこられるのが予想外過ぎたが!!



『ほほほ。良かったではないか、アウル』



 豊穣の女神であり、我が母上でいらっしゃるウルクル神。


 父上の横で、その母上はとても気品あふれる微笑みを浮かべて、僕を見下ろしていらした。



「良かった、とは?」


『そちが魔法鳥を飛ばしたからじゃろう? それに応えてくれたのではないか?』


「えぇえ……」



 適当なことをおっしゃっているようではないが、本当なのか嘘なのかも僕にはわからない。


 だが、実際のところ魔法鳥には王族らしい丁寧な文言で返事が届いただけだ。僕の気持ちが届いたかどうかはわからない。


 勝手に舞い上がって、勢いで告白してはいけないんだ。



「大丈夫だよー、アウル」



 母上の横で、もっとにこにこされていた父上は頷いてくださった。



「父上?」


「君の高望みじゃなくても、王女様は来てくださったんだ。君の招待に応えてくださったんだろう? 行って来なよ。ここには君を応援してくれる人は多いからー」


「……父上」



 母上と本当の意味で婚姻を結ぶまで、長い時間をかけられたと聞いてはいた。


 だからこそ、その言葉を無視出来ない。息子の僕が生まれるために、おふたりは並々ならぬ苦労をなされたのだ。その苦労を僕は決して笑わない。


 父上は普段のんびりした口調でも、その想いは真剣に語ってくださる。


 僕は、臆病な自分を奮い立たせなくてはいけないんだ!


 身分関係なく、結ばれた方はすぐ目の前にいたじゃないか!!



「僕、行ってきます!!」


『「いってらっしゃい」』



 弱い僕は、僕らしくない。


 マリーナ王女の元気な横顔の隣に立てないんだ!!


 いつも通りの僕でいよう。


 走って、僕は彼女の前に向かったんだ。

次回は水曜日〜

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