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第107話 幼い誓い(セシル視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*(セシル視点)









 リーシャは、本当に可愛くなった。


 それと、少しばかり綺麗になった気もしたんだ。孤児院の子どもたちのために作った揚げパンサンドって言うんだけど……公爵夫人の提案したものとは言え、食べ盛りな子どもたちには喜んでもらえるパン。


 それの中身を挟んで、渡してやっている時の笑顔が……俺の一個だけ下なのに、なんだか大人びているように見えて。



(絶対に、誰にも渡したくない)



 そんなドス黒い感情が俺の中で生まれ出した。まだ子どもなのは俺も同じなのに、好きな子が綺麗になっていくのを喜ばしく思えないだなんて……俺って、こんなにも独占欲が酷かったと我ながら呆れそうになった。


 父さんに言ったら、殴られるか苦笑いされそうだけど。



「あら、セシル? どうしたの?」



 自分に呆れていると、年上の幼馴染みのサリーがこっちに来た。目はなんか楽しそうでいるけれど、まさか……?



「……別に」


「ふふ。リーシャが可愛くて可愛くて仕方がないんじゃないかしら??」


「……わかってた?」


「バレバレ。あなた、男の目をしてたわ」



 君もミラクルにはそんな対象で見られてるの……気づいているかどうか。俺がわざわざ言うべきじゃないから、ミラクルのことを考えて黙っておいた。



「……臆病なんだよ、俺は」



 あの金髪の人への懐きようから、リーシャへの想いを自覚して。


 リーシャが泣きながら追いかけてくれたから期待して。


 今はどんな風に想ってもらえているかわかんないけど……この初恋は実らせたいんだ。絶対。


 だから、子どもだからって身勝手な理由だけで縛りつけたくもない。矛盾した感情が渦巻いているだけの、臆病者なんだ……。



「あら? 身分差を気にしていた時代は終わっているんだから、堂々とすればいいのよ。うちのお母様たちのようになるのは、幼馴染みとして見たくないわ」


「……そうだけど」



 うちもだけど、サリー姉のとこもかつては『強固派』のせいで命を狙われかけていたらしい。公爵方のお陰で、その存在は壊滅に至ったそうだが……それでも時代に埋もれていくわけでもない。


 まだまだ気にしてしまう人間がいるのは、どうしたって仕様がないんだ。


 けど、父さんの言うとおり、俺はアルフガーノ伯爵の嫡男に変わりない! リーシャを迎え入れる家柄には申し分ないんだ。


 だが、リーシャの気持ちをしっかり知った上で娶りたい。……受けてくれるかな、リーシャ。


 俺がもっともっと、男らしく強くなったら。


 その思いを強く胸に誓い、俺とサリー姉は話を切り上げて配膳に戻ったのだった。

次回は水曜日〜

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