第102話 詰まるくらい美味しいパン
つやつやふっくらなパン。
それに添えた緑色のちょっと苦いけど、甘いお茶。
絶対美味しいのがわかっているから、早く食べたい!! だけど、いつもの神様へのお祈りの前に思い出したの。
神様は……シア様なんじゃないかって。
シア様を見たけど、シア様は不思議そうに首を傾げただけだった。
「どうかした?」
「シア様は……神様ですよね?」
「そうね」
「お祈り……シア様にすることになるでしょうか?」
「ああ、それね? 少し違うわ。私は最高神ではあるけど……この世界での神は、じい様とばあ様よ」
「おじいさまとおばあさま?」
「そうよ。私は小さい姿だった時に、二人に連れてきてもらったの」
ねー? とシア様がお母様たちの方を見ると、お母様たちは苦笑いされたわ。
「たくさん召し上がっていただいたものね?」
「……そうだな」
「すごいわ!」
お母様のパンは、最高神様にも認められていたすごいパンなのね!? だから……特別美味しいんだわ。あたしもできるのかしら??
「だからいつも通りでいいわよ? チャロナ、食べていいかしら?」
「ええ、どうぞ」
「じゃ!」
シア様はお祈りする必要がないから、すぐにあんぱんをパクっと食べて。
すると、噛んだとこからぎゅーひがみょーんって伸びて! おもちじゃないのにおもちみたいに伸びたわ!? 伸びたとこをもきゅもきゅと食べ進めるのが可愛く見えた。
「ふふ。お気に召して?」
「美味しー! 本当にお餅みたい!? あんこも美味しいわ!!」
「あ、あたしも!!」
食べてみたら、食感はもっとおもちより柔らかいのに……もきゅもきゅがたまらない!! あんこと一緒に食べると……パンもあるのに、ダイフク食べている感じだわ。食べ応えすっごいあるけど、お茶と交互に食べるとどんどん食べれちゃう!!
「リーシャも気に入った?」
「美味……けほ」
ちょっとのどに詰まった感じになって、けほけほしちゃったけど。すぐにミアやシア様が背中をさすってくれたから大丈夫だったわ。
「急いじゃダメよ?」
『みゅ』
「……はい」
美味しいのは本当だけど、のどにモノを詰めて一大事になったら大変だもの。お茶をもう一度飲んでのどを潤したら……ほんのちょっと苦いけど、甘い味にほっと出来たわ。
「けど、本当に美味しいわ。フィーにも食べさせてあげたいけど……」
「フィーくんとはあれからどうなの?」
「時々水鏡越しに会う程度よ? あちらも姿が変わったから」
「そうなの」
「フィー……様?」
「私の旦那さんよ?」
「え!?」
旦那様がいらっしゃるようにはとても見えないわ!? かっこいいのかなあ? セシル兄よりもすごいのかな?
お会いしたいけど、簡単には会えないらしいから……我慢ね。
けど、あたしはここ最近セシル兄に会えていないから……そっちは我慢の限界よ!!?




