よけいなこと
だけどな、とチョウスケは長く息をついた。
「・・・その、焼いた骨といっしょに、―― 木を植えなさったんだ」
「木を?・・・庭に、・・・だよなあ?」
ぞわ、っと、ヒコイチの腕が一気にあわだつ。
真っ暗な庭。
その中で、三本の木を同じようにみやる、男の丸い背。
――― いやまて、嫁さんは、木を植えてくれとは言ってない
そう思い当たり、追い払うよう頭を振ったのに、チョウスケがこう言った。
「嫁さんが亡くなったときに、旦那様が、そこに一緒に木を植えようと思いなさったのよ」
「・・・よけいなことを・・・」
「なんだって?」
いやべつに、と自分の後ろ首をなで、この話を終わらすことにした。
「・・・じゃあ、その情の厚い旦那が、庭に、亡くなった女三人分の骨を埋めたから、なにかよくねえことが起こってるってことだな? ―― そういうのはあれよ。 まず坊主を呼んで、きちんと成仏してくれるよう念仏でおくってもらって、その一緒に植えた木にはお札でもはりつけて、 旦那はどこか別の場所に引っ越せばいいやな」
これで、もういやなことに煩わされねえだろう、と徳利に残った最後を、相手の猪口にこぼれるほど注ぐ。