弔いかた
腕を組んで考え込んでしまったヒコイチを気にするふうもなく、チョウスケは答えがなかった自分の問に、深く頷く。
「そうか、そうかい。なるほどねえ。それならば、しかたないことだ」
納得したようなチョウスケのそれに、われに返ったヒコイチが顔をあげる。
「そんなに頷くようじゃ、あれか? その、旦那が面倒みてた女が『 化けて出る 』ってはなしか?」
そんなとこだろうと見当をつけ、つまみの小鉢に箸をのばした。
「化けて・・・うん、まあ、そういうことなんだろうなあ・・・」
チョウスケが空になった猪口をもてあそぶように考え込むのを、菜の花のにがみを味わいながら、ヒコイチは笑った。
「墓までつくってやって化けて出られるなんざ、こっちが浮かばれねえ話だな」
「まあそうかもしれねえが。―― ・・・旦那様も、よくねえと、おれは思ったんだけどな」
さっきまで、あれほど庇い続けていた旦那に眉をよせるのを、「そりゃ、奥方もいねえんじゃあ女を囲うのもしかたねえ」と、今度はヒコイチが庇う。
「―― いや、そういうことじゃなくて、弔いかたが、な・・・」
ゆっくりと箸をとりあげたチョウスケは、自分の前の小鉢を、行儀悪くかきまわすように言葉をにごす。