化けやすい
「―― なんつうか、おれなんかと違って、とにかく真剣なんだよ。ああ、そういうとこはヒコさんのほうがわかるんじゃねえのかい?惚れた相手には、本当によくしてやるんだよ。たとえ相手が病にかかったとしても、決して見捨てたりなんかしない。最後まで、できることはしてやって、手をつくして、最後を看取ってやってるんだ。これまでにそうして墓までつくってやった女が二人ばかしいて、墓参りにも行きなさる」
「へえ。よく、おかみさんが黙ってんな」
おかみさんはいねえよ、とチョウスケが眉をあげた。
「ずいぶんと若ころ、どこだかの元華族だかから嫁さんをもらったんだが、ほんの五、六年で、病でいっちまったんだよ」
「そりゃついてねえ。で?それからずっと、独り身か?」
「ああ。だからな、シロウトの女には、手をださねえんだ」
なるほどな、と自分で注いだ酒をなめ、ヒコイチは自分に『フシギ』な話を売ってくれ、という男の顔を思い出す。
その『おぼっちゃま』に、前に教えてもらったことが口にでた。
「―― おれが知ってる、フシギにくわしいやつの話だと、シロウトの女よりも、クロウトの女のほうが、フシギに遭いやすいっていうぜ」
これに、チョウスケが、ひえええ、とおかしな声をあげる。
「『遭いやすい』ってことは、やっぱあれかい?逆にいやぁ、化けやすいってことかい?」
「・・・それは、・・・」
――― ふしぎをみるからといって、己がその『フシギ』になるものか?
それならば、自分は、まちがいなく、死んだら化けるだろう。